2011年6月28日火曜日

Academy of International Business 国際経営学会 その1

6月24-28日まで、名古屋で国際経営学会(AIB)の年次総会が開かれた。AIBは世界最大の国際経営に関する学会。参加者数(900名)も過去最大となった。香港中文大の牧野教授がコンファレンスチェアを務めた。そのオープニングパネルの一つとして、CornellのHart教授、Ohio StateのBarney教授(岡田のOSU時代の指導教授)、Texas A&MのHitt教授という顔ぶれが"Strategy & Sustainability(戦略と持続性)"というテーマで講演とパネル討論を行った。

SUNDAY, JUNE 26 - 11:15-12:45

Session 1.2.P - PlenaryTime: 11:15-12:45
Track: 14 - Special SessionRoom: Large Hall (2nd Floor)

Strategy and Sustainability

Chair: Paul W. Beamish, University of Western Ontario


Toward Sustainable Global Enterprise

Stuart Hart, Cornell University

Lessons from the Field: Applying Strategy and Entrepreneurship Theory in the Context of Abject Poverty

Jay Barney, Ohio State University

Sustainability Strategies and Sustainable Competitive Advantage

Michael A. Hitt, Texas A&M University


昨今の私の関心事であり、本フォーラムの趣旨でもあるのは、「あくまで経営戦略理論の視点から包括的ビジネスを分析する」ということだ。その意味において、かたや包括的ビジネスを一つの研究領域として認知させたHart教授、かたや戦略理論の重鎮であるBarney(リソースベーストビューの理論家)とHitt教授(前Academy of Management会長、元Strategic Management Society会長)の鼎談は、まさに両者の出合う場であった。

3者のショートスピーチの主旨はそれぞれ下記の如くであった:

Hart:基本的に「未来を創る資本主義」におけるフレームワーク(縦軸が下:todayと上:tomorrow、横軸が左:internalと右:external。左下象限がPollution prevention, 右下がProduct stewardship, 左上がClean technology, 右上がBase of the pyramid)をベースに説明。企業は下半分でなく上半分に従事すべきである、と。

Barney:OSUが支援しMBA学生によって実地に行われている、ペルーとボリビアでの包括的ビジネス(スカーフの生産と輸出)立ち上げの現場体験を語る。それを通じて学んだKSFとして、1) local entrepreneurship, 2) the problem of dependence (援助依存)からの脱却、3) humility、4) patience、5) 創出されるあらゆる便益のコスト把握、6) moralityを挙げた。最後に、包括的ビジネスの研究は学術成果のためというよりも、戦略理論が貧困削減に役立つこと自体がモラルとして正しいからこそ行うべきだと締めくくった。

Hitt: 包括的ビジネスと新興国ビジネスにおける研究機会(research opportunities)について語った。

これらのみから、包括的ビジネスが戦略理論に与える影響を読み取ることは難しいが、いくつかのヒントは得られたので、今後紹介していこうと思う。