2010年2月27日土曜日

セーター縫製工場で火災、21名死亡(バングラデシュ)

ダッカの北30キロのGazipurにあるGarib & Garib Sweater Factoryで火災が発生、少なくとも21名が死亡した。出火原因は不明で、警察による捜査が行われている。

同国には4000の縫製工場があり、約200万人が雇用されている。輸出額は$10B(約1兆円)にのぼり、同国の主要産業の一つ。これら工場の多くが安全基準上問題があるといわれる。


2010年2月26日金曜日

インド最大の電力会社がバングラデシュに石炭火力発電所を建設

インド最大の電力会社である国営のNTPCは、バングラデシュで1320メガワットの発電所を建設すると述べた。バングラデシュ政府と50:50のジョイントベンチャーを組成する。建設費は50Bルピー(約$1.08B)となる。現在バングラデシュの法律では政府がジョイントベンチャーの51%を所有することが定められており、インド側の要求に応えるには法律の改正が必要になり、その点今後時間がかかることもありえる。

人口の47%しか電力グリッドへのアクセスがないバングラデシュでは、電力供給体制の整備が極めて重要であり、政府は今後7年間で$10B の外資を呼び込もうとしている。今回のディールもその一環である。

ダッカで雹(ひょう)の嵐

2月24日、ダッカは雹の嵐(hail storm)に見舞われた。以前のエントリーで「都市排水機能」の不足に言及する記事(Drainage problem in Dhaka is so massive that even a few hours of moderate rain cause serious water logging.)を紹介したが、今回の雹と短時間のスコールでも、写真を見る限り同様の"drainage problem"が発生しているようだ。

2010年2月24日水曜日

セミナー報告:「ソーシャルビジネスを考える―グラミン銀行と日本の地域事例から学ぶこと」

昨日行われた
「ソーシャルビジネスを考える―グラミン銀行と日本の地域の事例から学ぶこと」
というセミナーに参加して来たので、簡単にその報告をする。

第1部 途上国の貧困削減を目指すマイクロファイナンスとソーシャル・ビジネス
「マイクロファイナンスと貧困削減投資ファンド「カンボジア2」」
杉山章子氏(ミュージックセキュリティーズ)

冒頭で昨年12月に放送されたワールドビジネスサテライトでの特集
が紹介された。
同社が作ったマイクロファイナンスファンドに関するもので、カンボジアのサミックというマイクロファイナンス機関に日本の投資家300人から合計2400万円を投資したとのこと。
これは日本初MFIへの投資ファンドで、1口3万円から投資ができ、年利は2%。
放送の中では同ファンドに投資者がインタビューに答えていて、
「寄付ではなく投資であるから、戻って来たお金を再投資出来るため持続的」と指摘されていた。

同社では投資した資金の使途はMFIsに任せていて、定期的に日本からもチェックし、問題があれば対応する様にしているという。

杉山氏によれば、貧困を削減するために我々ができることはココロ、体、お金の提供である。
ココロだけでは何も変わらない、何も効果はない。
「体」というのは実際に現地に行ってボランティアをするであるとか、仕事を通じて貧困削減に関わるというものがあるが、誰もができるわけではない。
しかしお金については誰でも簡単にできて、且つ効果の上がる方法である。

利回り2%では収益性を求めるというよりも、よいことを継続的にするというモチベーションの高い人が集まる仕組みになっていると感じた。これを20%とは言わないまでも「投資商品」としてファイナンシャルリターンだけでも十分魅力的な商品にして売ることはできないものかと思う。

また、同じ放送で大和証券マイクロファイナンス債権も紹介されている。こちらは240億円の規模で利回り5.1%とされている。

続いて
「グラミン銀行と日本をつなぐ-立教グラミン・クリエイティブ・ラボの試み」
と言うタイトルで立教大学の見山謙一郎氏が講演された。

立教グラミン・クリエイティブ・ラボ(GRCL)の詳細はサイトに掲載されているので割愛するが、一言で言えばシンクタンク&インキュベーターであり、見山氏は主に企業との連携を担当されている。

理念は教育でSocialとEconomyをつなぐプラットフォームになることで、研究だけでなく実践を通じて新たなビジネスを作ることにある。

企業連携の取り組みについていくつかあげられていた中で興味深いポイントを紹介する。
まず、BOPでの事業は企業内の人材育成になる。先日紹介した日経の記事にもある通り、BOPに取り組むことによって、自社の製品やサービスがこんなところに役に立つ、ということが実感でき、自分たちの事業の価値を再認識することによって、企業の存在意義について社員の理解を深めることができるという効果が見込まれる。
次に、「ビジネスとして成立する」ということは「株主への説明責任を果たす」ことであると言う解釈がされていた。「ビジネスとして成立する」というのは直接的に経済的利益の概念に直結してしまいがち(少なくとも私の中ではそう)だが、ダノンやアディダスと言ったグラミンと共同で事業をしている企業は株主の承認を得て、グラミンとのアライアンスをしている。当然「説明責任」の中には経済的利益の概念も含まれるが、それだけではなく、長期的な企業の成長、社会的課題への取り組みの必要性などもう少し広い概念がカバーされる。

続いて、昨年ドイツで行われたGlobal Grameen Mtgの報告があった。
この会議はGrameenと提携している企業や国際機関が一堂に会するものだが、日米企業の参加はゼロだったとのこと。欧州企業は多く参加しており、ポスト資本主義ということに真剣に取り組んでいる姿勢が感じられる。

第2部 社会的課題を解決する事業では
「「100年の森」を育てる共有の森事業」としてトビムシの竹本吉輝氏が講演をされた。
同社の事業は日本の森を守るというもので、本フォーラムとは直接の関連性が薄いため詳細は省くが、同社ではSustainability=Community Commons and Communicationsと考えており、Communityを作り、その質を高めて行くことが持続的な発展に繋がるとのことで、BOPにおける事業を考える際にも重要な概念であると感じた。

最後に、
本セミナーの会場には学生、企業人など様々な参加者が集っていて、関心の高さを改めて感じた。そして、「知りたい、知ろう」モチベーション、メッセージから徐々にではあるが、「行動」に移すというフェーズに関心が移っている様に感じた。ミュージックセキュリティーズのマイクロファイナンスファンドも、立教大学の取り組みも実際の行動を伴うもので、そのような取り組みを通じて、また色々と見えてくることがあるのではないかという期待を抱くことができたセミナーであった。

グラミンフォンの株価が1日で8%近く下落

2009年11月に上場を果たしたグラミンフォン(Telenorが62%所有)だが、当局が同社株式の信用買いを禁じ、スポット取引のみに限定したことが急落の引き金になった。

同社の株式は、ダッカ市場の主要株式指数であるDSE General (DGEN) Index銘柄全体の時価総額の15%を占める。よって同社株の大幅下落により、指数自体も2.39%下落した(この下げ幅は過去10年間で最大)。

ダッカ市場の株式は、本年1月以来短期的利益を狙う個人投資家の資金流入が続き、30%近く上昇しており、急激な調整がいつ起きてもおかしくない状況が続いていた。

2010年2月22日月曜日

日本企業とBOP:日経新聞の記事から

もう一つ本日の日経新聞から。

「途上国の実情肌で知る、リコーや大手商社、幹部社員を派遣BOP研修」と言う記事から。

以前筆者もインタビューをさせて頂いた、ISLによる研修が取り上げられている。変革型リーダー育成プログラムというプログラムの一貫でバングラデシュへのツアーを、企業幹部向けに実施している。

日本企業の事例が乏しいBOP関連の話題だが、ここでは研修に参加したリコーが取り上げられており、「CSR」という文脈ではなく、「新規事業」のトピックとしてBOPが語られている点が興味深い。

記事によるとBOP勉強会を月1~2回実施しており、BOPでどのようなビジネスをリコーとして出来るのかを検討していると言う。そこでは社員が積極的にディスカッションや事業提案をしており、今後新規事業として検討される方向であるとのこと。BOP研修は人生観をも変える可能性を持つと言う。

BOPでの事業を考える上で、経済性はもちろんだが社会性についても考える必要が出てくる。それがそこ(日本等のnot BOP世界)で働く人々の今までの「仕事観」に+αとなり、企業の新たな活力となっていくことを感じさせる記事であった。

マイクロファイナンスの課題:日経新聞の記事から

本日(2月22日)の日経新聞でBOPに関するものが複数あったので共有する。

「金利の高さ、多重債務者、新たな課題に。」と言う記事から

「担保を取らないマイクロファイナンス会社の貸出金利は、法外な利息の無認可の高利貸よりは低いものの銀行よりも高く、年率20〜40%とされる。」

とあるが、本フォーラムの以前の記事「マイクロファイナンスの金利に関して:flat rate と declining balance ベースの金利」にある通り、金利と一言で言ってもflatとdecliningの二つの計算方法が存在する。flatであれば年利20-40%の金利は法外に高いが、decliningだとそうはならないために注意が必要である。

また、
「特定の利用者に複数の会社が同時に融資する“多重債務者”の発生も表面化し始めた。マイクロファイナンス会社同士の貸し出し競争が背景にあるとみられるが、利用者の大半は金融商品に関する知識が不足している」
とあるように、多重債務者の問題を指摘している。

昨年バングラデシュを訪問した際にもマイクロファイナンス期間に顧客獲得競争について質問したが、その際の記事にもある通り、マイクロファイナンス機関同士で同じ借り手に貸さないように協定を結んでいるということがバングラデシュではあった。また、まだまだ市場のカバー率が十分でないためにマイクロファイナンス機関同士での顧客の取り合いのようなことは発生していないとの回答を得た。

現状バングラデシュのマイクロファイナンスはシステム上できちんと顧客管理が出来ている訳ではないようなので、多重債務者の問題が起こってしまうのも理解出来るところはある。(もちろんインドとバングラデシュでマイクロファイナンスのシステムは全く同じではないだろうが、大きくは変わらないという前提)

ほとんどを紙ベースで処理している現在のマイクロファイナンスのオペレーションは、規模が大きくなってくれば多重債務者の様な問題も発生してくることは想像出来るが、それを回避するためのシステム投資はコスト的に難しいのもまた事実であろう。

なお、同じ記事のトピックはインドにおけるマイクロファイナンスの拡大であるが、その背景としてインド政府のマイクロファイナンスを促進するための税制緩和、と外資参入促進策といった後押しがあることも付け足しておく。

参考
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/india2.cfm?i=20070216cq005cr

2010年2月17日水曜日

BOPにおける事業開発の検討ステップと確認項目(社会価値と経済価値へのダブルコミットメントを前提として)

 BOPにおける市場需要調査やビジネス提案が活発に行われるようになっている。通常の事業開発との相違は、企業における投資意思決定(主にビジネスの視点)だけでなく、BOPにおける社会的価値増大(主に開発の視点)との両立をいかにデザインするか、という部分であろう。その場合、どのような項目を調査し、確認しながら事業モデルを構築すべきなのか。純粋に実務的観点からその調査ステップと確認項目の概要を述べてみたい。一つの試案としてここに記録し、今後Wikiのように都度ブラッシュアップしていく。

1.地理的市場の選定と当該域内におけるBOPの特定。
 BOPの特定はPPPベースの一人当たり収入が3000ドル以下であるかどうか。次に当該BOP層の総購買力(つまりほぼ市場規模)とその成長性の推定(BOP人口×単位期間あたり可処分所得per capita。こちらはPPPベースでなくてよい。以下同じ)。また非公式経済(自給自足)の内容把握と貨幣換算の規模も推定しておく。ここで、B2C事業も想定して、当該BOP層の1世帯あたりの平均可処分所得(PPPでなく名目ベースでよい)と消費内訳(光熱費、通信費、食費、医療費、交通費等、現地の特性に即した分類で)を算出・調査しておくことが重要(→製品・サービスの価格決定時の重要指標)。BOP2.0も視野に、現地での労働賃金水準も確認。基本的マクロ経済指標の変動率の推定、P・E・S・T分析は与件として当然行なっておく。

2.重点セクターの選定
 セクター間優先順位付けの基準は、どの主体が市場調査をするかによって異なるだろう。企業が主語であれば、自社の経営資源の賦存状況でセクター選定は大きく左右される。セクターが選定されたら、当該BOP市場における当該セクター市場規模(年間売上高ベース)とその成長性の推定(規模推定の根拠には、BOP人口の単位期間あたり消費内訳データが使える。)を行う。

3.現状調査
 当該セクターにおける製品・サービスの現状調査とunmet needsの把握。BOP顧客に対する市場ニーズ調査、現地NGOに対する社会性を帯びた市場ニーズの調査。販路としての活用可能性の確認。既存進出企業(現地企業含む)の製品・サービス調査(機能、品質、価格、売上高、コスト構造、販路、総じてビジネスモデル)。十分な期間の現地調査が必要。エンドユーザーニーズの把握とともに、その解消にいくらまでならお金を出すつもりがあるか、実際出せるのか、も確認調査する。

4.ビジネスモデルの策定
 新製品・サービスをベースにビジネスモデル(ファイナンシャルモデル、オペレーションモデル、戦略モデル)を組成する。 特に、ファイナンシャルモデルの構築には必要に応じてMFIsを、オペレーションモデルの構築には、必要に応じてチャネルとしての現地NGOsを組み込んでおく。同時にマーケティングミックス(4Ps)の構築。十分な原価推定と採算性分析を行う。推定はその後間違いなく狂うが、修正対象となるベースモデルを作る必要がある。
 この段階で、同時にBOP2.0の可能性(現地顧客層の生産者・販売者としての参画可能性)を追求する。もしも2.0がNGであれば、BOP1.0にとどまるため、「貧困市場からの搾取」という非難を回避するだけの社会性が製品・サービスそのものにあるか否かを確認。なければ廃案。

5.当該ビジネスモデル(及びそこで販売される製品・サービス含む)に対する4As (Awareness, Availability, Affordability, Acceptability)のチェック。Jamie Anderson/Costas Markidesが示した4Asの考え方(Strategic Innovation at the Base of the Pyramid, MIT Sloan Management Review)。

6.当該提案ビジネスモデルの社会的パフォーマンス(貧困の削減度やHDIを応用して推定)・経済的パフォーマンス(NPVベース)の推定・評価。さらに、Ted London (2009) Making Better Investments at the Base of the Pyramidのモデルをベースに、当該事業が売り手、買い手、地域コミュニティーに対し、経済・人的能力開発・社会的関係性の3側面で各々いかなる影響を与えるか、効果アセスメントを行う。

7.複数提案間での優先順位づけ(後述。社会的価値・経済的価値フロンティアにおける位置づけと意思決定主体の属性とのマッチング)

最低限、上記のようなステップと項目で進んでいく必要があるように思われる。もちろん、こうした推定に基づく事業モデル構築は、不確実性ゆえにほぼ間違いなく、進行に従って現実と乖離していく。しかしながら、事業開始段階における初期資本投資と経営資源配分を可能な限り合理的に決定するためには、こうした事前意図的計画が必須となる。それに加えて、不確実性に柔軟に対処する「創発戦略」が必要になることは、戦略理論群がかねてから複合的に示唆するとおりである。この検討ステップは、今後継続的に精緻化を試みていこう。

BOPにおける事業を題材としたケース教材

昨今、世界のビジネススクールではBOPにおける事業活動を題材にしたケース教材が作成され、MBAならびにエグゼクティブ教育に活用されている。(MBA教育では、伝統的に企業の具体的事業活動を記述した「ケース」を題材として討論する、「ケースメソッド」という学習法が主に採られている。慶應ビジネススクールもしかり。)

既に手元にあるBOP関連のケース教材をリストアップしておく(下記のケース1~8は、現在慶應ビジネススクールおよび日本ケースセンターで翻訳プロセスに入っている)。他に気がつけば随時挙げることにする。

1. "Deposita- Whether to dominate the value chain or not" Richard Ivey School of Business, The University of Western Ontario, Case#:908M72 (南アフリカ、フィナンシャル・サービス)

2. "Farmacias Similares: Private and public health care for the base of the pyramid in Mexico" Harvard Business School, Case#:9-307-092 (メキシコ、ヘルスケアサービス)

3. "Microsoft's Unlimited Potential (A)" Harvard Business School, Case#: 9-508-072 (世界、ITサービスその他)

4. "ApproTEC Kenya" Harvard Business School, Case#: 9-503-007 (ケニア、適正技術に基づく汲み上げポンプその他)

5. "Cementing the bottom of the pyramid: a new direction at CEMEX?" Darden Business Publishing, University of Virginia, Case #: UV0665 (メキシコ、セメント・住宅用建材)

6. "UNITUS(A): Microfinance 2.0 - Reinventing an industry" Stanford Business School, Case#: SI-87A (BOP、マイクロファイナンス)

7. "BRAC" Harvard Business School, Case #: 9-504-012 (バングラデシュ、NGO)

8. "The BRAC and Aarong Commercial Brands" Harvard Business School, Case#: 9-504-013 (バングラデシュ、NGOによる消費財製造販売)

9. 「グラミンダノンフーズ」 慶應義塾大学ビジネススクール, Case#: 901017343 (バングラデシュ、ヨーグルト製造販売) forthcoming

UNICEFがバングラデシュの子ども2000万人超にはしか予防ワクチン接種キャンペーン

2月14日から2週間で一斉に実施する予定という。5万人のヘルスワーカー、60万人のボランティアとNGOスタッフがすでに接種を開始している。

こうしたワクチン接種により、世界のはしかによる死亡は2001年の73万人から2008年の16万人にまで減少している。だが、継続的な接種活動を行わないと、2013年には50万人超の死亡者が出かねない、とWHOは警告する。

気候変動対策資金の供与に世銀が介在することをめぐりコンフリクトが発生

英国政府がバングラデシュへ供与する予定の£60 million(約85億円)を、英国国際開発局(DfID: Department for International Development)は世銀を通じて流すことを主張している。一方バングラデシュ側は、世銀を経由すると、好ましくない紐が付いたり制約条件が課される可能性があり、好ましくない。資金は国連を経由して受け取りたいと主張している。それに加え、バングラデシュ政府は、今回の£60 millionが真水の額でなく、すでにDfIDが提供してくれている他のプロジェクトへの資金が流出するのではないかと危惧している。

日本市場にとって、バングラデシュが中国に次ぐ第二の衣料品供給源の有力候補に

バングラデシュから日本市場への既製衣料品輸出が2009年中葉から急増している。2009年7-12月期の日本向け輸出額は $34.043 millionで、2008年同期の $19.415 millionから148%成長した。

日本の輸入衣料・アクセサリー総額は$26.5Bと言われ、その80%が中国からである。しかし、先のエントリーでも指摘したように、中国への依存度過多の状況から脱し、もう一つの安定した供給源を持っておきたい輸入者が増えている。その先鞭をつけたのがユニクロであるのは既報のとおりで、それがきっかけとなって他の輸入業者も同国へ急速に注目し始めた。

バングラデシュ衣料製造輸出者協会(BGMEA)会長のMurshedy氏のコメント:

「中国よりも製造コストが安い当地からの輸出は今後も安定的に成長するだろう。」
「バングラデシュの輸出業者が積極的に市場を開拓する一方、日本も我が国に注目している。」
「日本市場は他市場よりも品質への要求が高く、日本のビジネスパーソンは他国とは違った考え方をするので、我々もそれを理解しなくてはならない。」
「日本の輸入業者は、バングラデシュが何十年にもわたって欧州や北米市場へ衣料を供給してきた実績を見て、我が国の衣料業界の品質に納得したようだ」
「近々、バングラデシュ単独で、日本で衣料製品のフェアーを開催する計画だ。」
「今後5年間で、日本向け輸出額は$1B(900億円)に上る可能性がある。」

業界専門家によれば、日本にとって中国に続く衣料供給源の候補は他にVietnam, Indonesia, Myanmar, Indiaであるが、バングラデシュからの輸出急増は驚くべき水準、という。

IFC-BICF Business Confidence Survey:バングラデシュの投資意欲指数が上昇(1Q/2010)

世銀グループの International Finance Corporation (IFC)が同国内1440社を対象に行った調査。投資、雇用、収益性、全般的パフォーマンスを、2009年7-9月期、10-12月期、2010年1-3月期(見通し)の3期間について聞いた(ちなみにバングラデシュ企業の財務年度は7月-6月)。

それによれば、企業の投資水準は2009年10-12月期に改善し、2010年1‐3月期へ向けた景況感も引き続き改善が見込まれている。ICCB(バングラデシュ国際商工会議所)会頭のRahman氏は、世界的な経済混乱にもかかわらず、同国経済は着実に成長しており、2009年7-12月期の年換算成長率は5.9%、通年(2010年6月期)では目標である6%を十分達成可能だろう、と見通しを述べた。

2010年2月16日火曜日

トルコのGul大統領がバングラデシュを訪問、さらなる貿易と投資の拡大を希望

2月12日、トルコのGul大統領は180名の企業人・実業家からなる大訪問団とともにバングラデシュを訪問、現在$600Mの両国間交易額を$1Bに増大させることを希望した。

Gul大統領はトルコからバングラデシュの発電、輸送、ICT、道路等の社会資本領域への開発支援を提供したいと述べた。

一方バングラデシュRahman大統領は、繊維・衣料、造船、エネルギー、観光事業への投資を呼びかけた。Hasina首相は5.6kmに及ぶPadma 橋 (MawaーJanjira間)の建設やChittagongならびにMongla港湾施設の近代化について話し合った。

両国首脳は、一昨年来の世界経済危機の最中でも両国間で営まれた交易額について、満足の意を表明した。

日本がバングラデシュに$433Mの円借款を供与:4つの開発プロジェクトへ

本日明らかになった。
この第31次円借款の条件は大変に寛容で、年利は0.01%、返済期間は40年間(10年間の返済猶予期間付きなので、実質50年以内に返済すればよい)。
4つのプロジェクトとは、

1)チッタゴン市での外環道路整備
2)Bheramaraでの複合サイクル発電所建設
3)バングラデシュ西部の農村部電化促進事業
4)同南西部農村開発事業

である。

2010年2月10日水曜日

マイクロファイナンスの金利をめぐる誤解:flat rate と declining balance ベースの混同

マイクロファイナンスの金利が20%だ、24%だと初めて聞くと、「すごく高いな」と感じる人が多いだろう。日本の消費者金融でも8~14%程度だからだ。ところが両者は金利の計算方法が異なり、直接比べてしまっては評価を誤る。

グラミン銀行のホームページで
Grameen Bank At A Glance」を読み返していたら、下記の文章が目に入った。

13.0 Low Interest Rates

Government of Bangladesh has fixed interest rate for government-run microcredit programmes at 11 per cent at flat rate. It amounts to about 22 per cent at declining basis. Grameen Bank's interest rate is lower than government rate.

There are four interest rates for loans from Grameen Bank : 20% for income generating loans, 8% for housing loans, 5% for student loans, and 0% (interest-free) loans for Struggling Members (beggars). All interests are simple interest, calculated on declining balance method. This means, if a borrower takes an income-generating loan of say, Tk 1,000, and pays back the entire amount within a year in weekly instalments, she'll pay a. total amount of Tk 1,100, i.e. Tk 1,000 as principal, plus Tk 100 as interest for the year, equivalent to 10% flat rate.」 

先のエントリーで紹介したインドのビデオでは、マイクロファイナンスに対する疑義の一つとして、最大28%に上る金利は闇金融に比べれば5分の1でリーズナブルだが、政府による財政支援での貸付金利は10%であり、MFは相当に高金利という指摘があった。このまま額面通り受け取ると、政府系金融の10%に比べ、MFは2倍以上の金利をチャージしている高利貸、という理解をしてしまいがちだが、それは誤りである。

上記のグラミン銀行の説明によれば、政府系金融(SHG)の「年利11%」とは「flat rate」であり、GBの「年利20%」は「declining balance、もしくはeffective APR ベース」の利子率で、それをflat rateに換算すると年利10%となる。実はflat rate ベースでは政府系金融の年利よりも低い、ということになる。

つまり、「declining balance ベース」の利子率20%とは、たとえば$1000を一年借りると、一年後の返済額が$1200になるのではなく、実際は$1100、つまりいわゆる「実質年利10%」ということになる。

むしろ日本の利息制限法による貸付金額別の20%(10万円未満)・18%(10-100万円未満)・15%(100万円以上)以下に余裕で収まるレートだ。ごく一般的な消費者金融でのキャッシングの実質年率最高レートは18%だから、それよりも断然低い。少なくともグラミン銀行の場合は。

2010年2月4日木曜日

政府の電子化と経済発展

(ダッカで行われたあるセミナーのセッションに「シンガポール ICT Day」というものがあり、そこでのプレゼンテーションにおけるやり取りが取材されたもの)

世界銀行がバングラデシュ政府に対し、Hasina首相が掲げる2021年までの全土デジタル化構想「Digital Bangladesh」の実現に際し、シンガポールをモデルに電子化を推進するように推奨している。シンガポールは、政府電子化とビジネスのやり易さでは常に世界でトップランクの国であり、現在約2000を超える行政サービスがオンラインで提供されている。

シンガポール国営のIDA International Pte Limited(政府電子化に特化した情報システム会社)の幹部は、「シンガポールは1960年代にはいまだ世界銀行からの融資を受ける国だった。だが現在では一人当たり国民所得が$34,000にまで到達した。」「ICTの活用は我が国に莫大な成功をもたらした。バングラデシュをはじめとする南アジア諸国は我々の経験を活用して成果を出せるだろう。」と語る。

Hasina首相の目標は、2021年までに全土の電子化を完遂し、経済発展、貧困削減へとつなげ、同国を中所得国(a middle-income nation)へと脱皮させることだ。その一環として、Hasina政権下では、すでにもっとも離村地域の学校へコンピュータを普及させ始めており、12学年まで(高校レベル)の教育無料化が進行中だ。

駐バングラデシュのシンガポール高等弁務官であるVerghese氏は、「公的セクターの効率向上を狙いとして進められる政府電子化は、透明性と統治の実を上げる意味で重要だ。そればかりか、ビジネスのインフラ全体を強化する働きもある」と指摘する。シンガポールには、「すべての商取引許可関連の手続きを一元的に受け付けるTradeNet system、訴訟手続きを電子化したLawNet、そして省庁横断的な事業開始許認可をワンストップショップできるBusiness Licensing Servicesがある。」

それに対しバングラデシュ政府科学情報通信技術相Mazumder氏は「シンガポールは徹底した電子化で腐敗を起きにくくすることに成功し、わが国もそれを見習いたい。今後12年間で全政府機関にITシステムを導入し、雇用の創出と腐敗の解消を企図している。」

http://in.reuters.com/article/technologyNews/idINIndia-45879020100203


<コメント>

構図としては、シンガポール国営の政府電子化サービスの会社が、バングラデシュ政府に売り込みをかけているといったところか。

バングラデシュが世銀から$100Mの融資を獲得(太陽光パネルと蛍光灯ランプの普及に)

バングラデシュ政府は、「クリーンエネルギー普及活動」に対して、世銀から$100Mの融資を受けることがわかった。政府は、向こう2年間で全土に100万基の太陽光発電パネルを設置し、2750万個の低電圧小型蛍光灯ランプ(CFL bulbs: compact fluorescent lamp bulbs)を普及させる計画を立てている。「これは政府にとって巨大プロジェクトであり、世銀のような開発パートナーからの財政的支援なしには実現が困難だ」と同国財務省スタッフは語る。

両製品の普及には政府のRural Electrification Board(地方電化委員会)と国営企業であるInfrastructure Development Company Limited (IDCOL)が当たる。

同国では、2004年以来、太陽光発電パネル数が毎年50%以上成長し続けている。


バングラデシュにおける太陽光関連ビジネスのポータル:

<コメント>
IDCOLは、政府からノンバンクとして、エネルギーインフラに関わる事業への長期融資を行うライセンスが与えられた会社である。IDCOL経由で低利子融資を受けて、プライベートセクターの事業会社が普及を図るということになるだろう。

2010年2月2日火曜日

縫製業界の賃金水準(2008)

2008年データではあるが、在バングラデシュ日本大使館のサイトから引用。

2008年6月(6月1日~30日)の当地英字新聞の経済関連報道を取りまとめたところ概要以下の通り。
(中略)
5. 産業
(1)縫製品
・ 米コンサルティング企業報告によると、バの縫製工場労働者の平均賃金はアジアの主要縫製国のなかで最安値。時給換算ではバが0.22ドルに対し中国は0.86ドルであり、バ賃金は中国の4分の1。なお、その他の国では、マレーシア1.18ドル、フィリピン1.07ドル、印0.51ドル、インドネシア0.44ドル、スリランカ0.43ドル、ベトナム0.38ドル、パキスタン0.37ドル、カンボジア0.33ドル。(6/1 NA)
(中略)
・ 約5分の1の縫製工場は未だ最低賃金(月1,662.5タカ)を従業員に支払っていないことが500社への調査により明らかになった。(6/30 NA)」

2010年2月1日月曜日

ダッカの路上生活者(pavement dwellers)

 実質2000万人口の首都ダッカに、2-5万人の路上生活者がいるという。この記事では、こうした生活者がさらされている過酷な状況が描かれている。昨年日吉キャンパスで観た「アリ地獄のような街」そのものである。夜間に親が寝ている間に乳児がさらわれて売買される、女性の人身売買、麻薬売買への関与、性的暴力の被害に会うなど。ダッカのスラムには曲がりなりにも雨風をしのぐシェルターはあるわけで、路上生活ではそれさえ存在しないのかもしれない。身寄りのない子供たちや母親へシェルターと職業訓練を提供するNGOの活動が紹介される。

スライドプレゼンテーション:

新聞記事: