2010年2月24日水曜日

セミナー報告:「ソーシャルビジネスを考える―グラミン銀行と日本の地域事例から学ぶこと」

昨日行われた
「ソーシャルビジネスを考える―グラミン銀行と日本の地域の事例から学ぶこと」
というセミナーに参加して来たので、簡単にその報告をする。

第1部 途上国の貧困削減を目指すマイクロファイナンスとソーシャル・ビジネス
「マイクロファイナンスと貧困削減投資ファンド「カンボジア2」」
杉山章子氏(ミュージックセキュリティーズ)

冒頭で昨年12月に放送されたワールドビジネスサテライトでの特集
が紹介された。
同社が作ったマイクロファイナンスファンドに関するもので、カンボジアのサミックというマイクロファイナンス機関に日本の投資家300人から合計2400万円を投資したとのこと。
これは日本初MFIへの投資ファンドで、1口3万円から投資ができ、年利は2%。
放送の中では同ファンドに投資者がインタビューに答えていて、
「寄付ではなく投資であるから、戻って来たお金を再投資出来るため持続的」と指摘されていた。

同社では投資した資金の使途はMFIsに任せていて、定期的に日本からもチェックし、問題があれば対応する様にしているという。

杉山氏によれば、貧困を削減するために我々ができることはココロ、体、お金の提供である。
ココロだけでは何も変わらない、何も効果はない。
「体」というのは実際に現地に行ってボランティアをするであるとか、仕事を通じて貧困削減に関わるというものがあるが、誰もができるわけではない。
しかしお金については誰でも簡単にできて、且つ効果の上がる方法である。

利回り2%では収益性を求めるというよりも、よいことを継続的にするというモチベーションの高い人が集まる仕組みになっていると感じた。これを20%とは言わないまでも「投資商品」としてファイナンシャルリターンだけでも十分魅力的な商品にして売ることはできないものかと思う。

また、同じ放送で大和証券マイクロファイナンス債権も紹介されている。こちらは240億円の規模で利回り5.1%とされている。

続いて
「グラミン銀行と日本をつなぐ-立教グラミン・クリエイティブ・ラボの試み」
と言うタイトルで立教大学の見山謙一郎氏が講演された。

立教グラミン・クリエイティブ・ラボ(GRCL)の詳細はサイトに掲載されているので割愛するが、一言で言えばシンクタンク&インキュベーターであり、見山氏は主に企業との連携を担当されている。

理念は教育でSocialとEconomyをつなぐプラットフォームになることで、研究だけでなく実践を通じて新たなビジネスを作ることにある。

企業連携の取り組みについていくつかあげられていた中で興味深いポイントを紹介する。
まず、BOPでの事業は企業内の人材育成になる。先日紹介した日経の記事にもある通り、BOPに取り組むことによって、自社の製品やサービスがこんなところに役に立つ、ということが実感でき、自分たちの事業の価値を再認識することによって、企業の存在意義について社員の理解を深めることができるという効果が見込まれる。
次に、「ビジネスとして成立する」ということは「株主への説明責任を果たす」ことであると言う解釈がされていた。「ビジネスとして成立する」というのは直接的に経済的利益の概念に直結してしまいがち(少なくとも私の中ではそう)だが、ダノンやアディダスと言ったグラミンと共同で事業をしている企業は株主の承認を得て、グラミンとのアライアンスをしている。当然「説明責任」の中には経済的利益の概念も含まれるが、それだけではなく、長期的な企業の成長、社会的課題への取り組みの必要性などもう少し広い概念がカバーされる。

続いて、昨年ドイツで行われたGlobal Grameen Mtgの報告があった。
この会議はGrameenと提携している企業や国際機関が一堂に会するものだが、日米企業の参加はゼロだったとのこと。欧州企業は多く参加しており、ポスト資本主義ということに真剣に取り組んでいる姿勢が感じられる。

第2部 社会的課題を解決する事業では
「「100年の森」を育てる共有の森事業」としてトビムシの竹本吉輝氏が講演をされた。
同社の事業は日本の森を守るというもので、本フォーラムとは直接の関連性が薄いため詳細は省くが、同社ではSustainability=Community Commons and Communicationsと考えており、Communityを作り、その質を高めて行くことが持続的な発展に繋がるとのことで、BOPにおける事業を考える際にも重要な概念であると感じた。

最後に、
本セミナーの会場には学生、企業人など様々な参加者が集っていて、関心の高さを改めて感じた。そして、「知りたい、知ろう」モチベーション、メッセージから徐々にではあるが、「行動」に移すというフェーズに関心が移っている様に感じた。ミュージックセキュリティーズのマイクロファイナンスファンドも、立教大学の取り組みも実際の行動を伴うもので、そのような取り組みを通じて、また色々と見えてくることがあるのではないかという期待を抱くことができたセミナーであった。

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