2010年4月13日火曜日

バングラデシュのエネルギーセクターは今後5年間に120億ドル(約1兆2000億円)の投資が必要

インド-バングラデシュ商工会議所のAhmed会頭は、「バングラデシュはその増え続けるエネルギー需要を満たすため、2015年を目処に発電能力を8000MWへと倍加させる計画だ。つまり今後5年間のうちに発電設備へ$10Bの投資が必要。またバングラデシュは33億トンの石炭埋蔵量を持っており、石炭採掘セクターへ$2Bの投資を必要としている。現在は80%の電力が天然ガスベースだ。」とインド企業に投資を呼びかけている。

2年前にはインドのタタグループが、バングラデシュに石炭火力発電所建設に3億ドルの投資を申し出たが、当時は頓挫した。だが、同グループは今も興味を持ち続けている。

在バングラデシュのインド高官は、2011年にはインドへの輸出額は$1Bへとほぼ倍増するだろうと述べた。

Hasina首相のインド訪問(2010年1月)以来、両国間の経済活動に関する議論が活発化している。

S&Pに続きMoody'sもバングラデシュに初の格付けを付与

S&Pから1週間遅れで、Moody'sは4月12日、国家としてのバングラデッシュに対してBa3(フィリピン、ベトナムと同等。investment gradeから3ランク下の"Non Investment grades speculative")の格付けを付与した。同国財務省によれば国際債券市場で国債を販売する予定はないというが、今回の格付けによって、今後「投資家のレーダー」の監視範囲に同国の債券が入ってくることは間違いないだろう。

「バングラデシュは、その堅実な経済政策、財政政策によって対外的財務バランスも価格も安定しており、その状況は同様の発展段階の他国よりもすぐれている。直近数回の金融危機も、政治的危機も乗り越え、貿易の自由化推進によって過去十年にわたり平均6%の経済成長を持続させている。一方で、輸出が縫製済み衣料品に過多に依存している点は不安定要素。」(Moody'sのアナリスト)

1971年の独立以来、少なくとも5回の軍事クーデターを乗り越え、2年間の戒厳令下の軍政を2008年12月に終了した同国は、Awami LeagueのHasina首相をトップとする連立政権を成立させている。

2010年4月10日土曜日

「BOP」の定義「1人当たり年収3000ドル以下」の意味

BOPと言えば、「年収3,000ドル以下、市場規模5兆ドル」というフレーズが今や定番だが、これら3,000ドル、5兆ドルとは具体的に実感を伴う価値として何を意味するのか。原典に遡って改めてその根拠を追った。

この定義は、World Bank GroupのInternational Finance Corporation(IFC、国際金融公社。先にMFIへの投資者としても紹介) とWorld Resource Institueが共同作成した「THE NEXT 4 BILLION:Market Size and Business Strategy at the Base of the Pyramid」(2007)の中で明らかにされている。基本的考え方、メソドロジーは、Branko Milanovic (2005) "Worlds Apart: Measuring International and Global Inequality"によっている。

1.「年収3,000ドル」

 ベースとなる年収データは、世界110カ国(全世界には203カ国あり)の各国政府の手によって行われた「家計(世帯)収入・支出調査(national household survey)」である。(国レベルの合計値であるGDP、GNP、GNIではないことに注意) 
 Milanovic (2005) によれば、家計調査をベースとする利点は、各国内での収入分布も明らかにできることだ。GDPベースでは、一国内における収入分布は明らかにできない。なお、国によって調査対象が世帯年収の場合と世帯消費支出の場合があり、それらは分別されずに合計されていることがデータの限界として挙げられている(以後一括して世帯別年収と称する)。

 この報告書における考え方は、ある世帯年収をその世帯人数で除したものが「3,000ドル」以下の場合、その世帯構成員は全員BOP層に分類する、というものだ。ここでいう世帯人数は、大人も子供も含んだその世帯の総人数である。例えば家族4人で世帯年収が1万2千ドルの家庭があった場合、4人の中に経済力のない子供が含まれていても、その4人は全員BOP3000ゾーン(一人当たり年収3000-2501ドル)に上限ぎりぎりで帰属する。家族4人で世帯年収2,000ドルならば、その4人は上限ぎりぎりでBOP500ゾーンに入る。Milanovic (2005) によれば、他にadult equivalentという手法もあり、世帯主を1.0人、二人目以降の大人を0.8人、子供を0.5人などと勘定する方法もあるが、その人数換算比率の妥当性が国ごとに異なるため、それは用いずに単純にper capita(頭数1つ=1.0人)ベースで算出した、と書かれている。また、BOP3000以下のゾーンでは直接税(所得税など)の大きさは無視できるほどに小さい、と想定されている。

 通貨単位は"2002 international dollars"、すなわち、 「2002年時点の購買力平価(PPP)ベースでの米ドル換算値」である。PPPレートは、外国為替市場で売買される交換レートではなく、代表的な商品の組み合わせ(バスケット)をA国とB国でそれぞれ購入するのに必要な現地通貨量を等価として、貨幣交換価値を算出する。

 例えば、2005年時点のバングラデシュの通貨価値は、為替市場レート(年間平均)だと64.33タカ=1ドルであり、PPPベースだと22.64タカ=1ドルである(IBRDと世銀が発表した2005 International Comparison Programの統計データ)。つまりPPPベースでみると、バングラデシュで22.64タカで買えるものは、米国では1ドルすることを意味する。ところが市場レートで1ドルを得るには両替商で64.33タカ払わねばならない(スプレッドは無視)。つまりバングラデシュのほうが実質的に同じものが3分の1近くの値段で売られていることになる。逆に米国人が市場レートで1ドルをタカに換え、米国からバングラデシュへ行けば、同じものを3倍近くたくさん購入できることになる。

 ここで改めて年収3,000ドル(2002年PPPベース)の意味を確認する。これは、その個人が2002年の米国に行って3,000ドル分の買い物ができる収入額、ということだ。

 ちなみに「2002年PPPベースの3,000ドルは2005年PPPでは3,260ドル」(同報告書)で、2005年のPPPベースの円ドルレートは129.55円=1ドル(同統計データ)だから、 BOP3000(2002年PPP)とは、2005年の日本で42万2,333円の買い物ができる1人当たり年収を意味する。4人家族なら168万9,322円1日当たり1,157円となる。ここが、いわゆる中間層(ボリュームゾーン$3,000-20,000)とBOPを分ける便宜上の域値となる。ちなみに、BOP500は1日当たり193円、BOP1500は1日当たり579円。


2.「市場規模5兆ドル」

 上記110カ国で、BOP3000以下に帰属する人口の1人当たり年収の総合計である。

 よく登場する業界セグメントごとの市場規模比率は、調査項目が揃う36カ国の中で、世帯ごとに調査された消費支出項目(Food, Housing, Energy, Water, Health, ICT, Transportation, Others)をBOP3000以下の世帯で集計した結果である。この比率を110カ国ベースの総合計に乗じると、BOP全体での市場セグメントごとの「年間市場規模」となる。

 つまり、市場規模もセグメント比率も、あくまでBOP層の家計における消費支出がベースとなった市場規模であり比率、ということになる。例えば政府による社会インフラ支出などは含まれていない。「BOP層世帯の購買力(消費支出)合計が5兆ドル(2002PPP)」というのが厳密な表現。これを為替市場レートで換算すれば、実際の市場規模は約3分の1程度となろう。
 
 

ロヒンギャ難民(バングラデシュ)の現状

仏教国のミャンマーから、バングラデシュ南西部へロヒンギャ族(イスラム系)が移住し、難民キャンプに暮らしている。数十年にわたって流入し滞在する難民数は数万とも二十万ともいわれる。現在も流入が続く。

国連高等難民弁務官製作のビデオ:



国境なき医師団による説明:

日本の国会議員による視察(注):

注:本フォーラムは特定の政治的指向性を持っておりません。

インドのMFI上場でまき起こる論争:「貧困から利益を得る」ことの是非

SKS Microfinanceがインドのマイクロファイナンス機関として初の上場を果たす。$250-350Mの調達が予定されている。出資者に名を連ねるのは、創業者Vikram Akula氏(6%)、Sequoia Capital India(24%弱)、Sandstone Capital Llc(12%)、Kismet Capital Advisors Llc (17%)、SKS Trust for the Benefit of Women Entrepreneurs(15%)である。SKSは1998年創立で、2005年に営利のノンバンク金融会社(for-profit non-banking financial company-NBFC)として登録された.

今回の上場は、バングラデシュ、メキシコ、南米などの主たるMFI、そしてMFIに投資しているPEsから大いに注目されている。昨今、MFIに積極出資しているのは、シンガポール政府系投資会社Temasek、香港の投資銀行のオルタナティブ投資部門であるCLSA Capital Partners、世銀グループの国際金融公社(International Financial Corp)、プライベートイクイティのSandstone Capital(インド半島の投資機会。在米国)、シリコンバレーベースの世界的VCのインド支社Sequoia Capital IndiaMFIを支援する世界的NGOであるUnitus、英国のPEであるMatrixなどである。

●肯定的論点

1.MF市場の急速な成長と、既存資金源(寄付や銀行融資)の枯渇から、MFIが資本市場へ向かうのは自然の成り行きである。「年成長率が75%という中で、適正な自己資本比率15%を保つには既存の資金源だけでは困難だ。」「従って、MFIsはPE、資本(株式)市場、その他の融資機関へと移行しなければならなかった。今回のIPOは祝福されるべきものだ。」(Vijay Mahajan氏, MFI業界のロビー団体であるMFI NetworkのPresident

2.今回のIPOは、MFIsの名声・評判を向上させる。「今回のIPOでMFIへの注目度は劇的に高まり、MFIの生態系全体に対する信頼も高まるだろう。」(Sequoia Capital Indiaのmanaging director、Sumir Chadha氏)

3.インドの財務相は、2010年初旬、NBFCsに銀行業免許を与えることも可能、と表明。同国におけるMFIの役割がますます重要になることを示唆した。


●否定的論点

1.他のMFIやNGOの中には、資本市場にアクセスしたり、プライベートイクイティからの出資を受け企業価値が押し上げられることを好ましく思っていないものもある。
2.「マイクロファイナンスの役割は貧困の解消にある。しかるに、このIPOから恩恵を受けるのは一体誰なのか?」「MF事業拡張や情報システム投資の資金を得るためにIPOするのは分かる。 だが、MFのユーザーがいまだ貧困を脱していない一方で、株主の間に億万長者を生じさせるのは果たして正しいことなのか」(インドとネパールでマイクロファイナンスを手掛ける英国のNPO、Shivia Microfinanceのexecutive director、Olivia Donnelly氏)
3.「PEの流入により、MFIの企業価値は簿価の5.9倍にまで膨れており、これは世界平均の3倍に達する。」「メキシコのCompartamosなど、すでに上場しているMFIsは既存銀行株をしのぐリターンを上げている。だが、それらMFIの企業価値は不安定に高く、現在の成長率や現在から将来に至る収益期待によっては正当化できないレベル」(要はバブル)と指摘されている。JPMorgan および世銀のConsultative Group to Assist the Poor (CGAP) による報告書

<コメント>
「BOP」において事業の経済性と社会性の両立をいかに図るかという論点からは、今回のIPOに関する議論を避けて通ることはできない。十分に考察する必要がある事象だ。

インドの対外関係閣外相, バングラデシュと一層の経済協力関係強化を表明

Tharoor閣外相は報道陣に対し「インドはバングラデシュの経済発展と同国の人々の繁栄に強くコミットしている」と述べた。「ハシナ首相のインド訪問以来、両国の関係は一段階ランクアップし、両国の相互尊重の下に現在の協力関係がある。」そして、両国間の越境接続性、道路・鉄道網、安全保障その他のプロジェクトでの協力関係に言及した。

2010年4月9日金曜日

インド最大の国営電力会社NTPCがバングラデシュに石炭火力発電所を計画

既報の計画が動きだした。計画中の発電所はバングラデシュ政府と合弁で設立する。このほど1週間以内にフィージビリティスタディのための技術陣を派遣するとNTPCが発表した。想定発電能力は500-1000MW。

現在バングラデシュの発電能力は5000MWで、その83%がガス火力発電である。バングラデシュ政府は石炭火力の比率を上げる希望を持っている。


2010年4月7日水曜日

Bangladesh国債に初の格付け by S&P

4月6日発表されたS&Pの格付けによると、同国の長期国債はBB-、短期国債はBとされた。これは南アジアではインド国債(BBB-)に次ぐ高さの格付けとなる。Muhith財務相は、「これによってわが国の対外的イメージは大幅に改善され、より多くの投資を海外から呼び込む助けとなるだろう」と述べた。
http://in.reuters.com/article/southAsiaNews/idINIndia-47480820100406

<付言>
ちなみに日本の長期国債の格付けはAAで、格付け見通しは「安定的」でなく「ネガティブ」。米国債はAAA。

<Standard&Poor's格付け一覧>

AAA —Extremely strong capacity to meet financial commitments. Highest Rating.
AA —Very strong capacity to meet financial commitments.
A —Strong capacity to meet financial commitments, but somewhat susceptible to adverse economic conditions and changes in circumstances.
BBB —Adequate capacity to meet financial commitments, but more subject to adverse economic conditions.
BBB- —Considered lowest investment grade by market participants.
BB+ —Considered highest speculative grade by market participants.
BB —Less vulnerable in the near-term but faces major ongoing uncertainties to adverse business, financial and economic conditions.
B —More vulnerable to adverse business, financial and economic conditions but currently has the capacity to meet financial commitments.
CCC —Currently vulnerable and dependent on favorable business, financial and economic conditions to meet financial commitments.
CC —Currently highly vulnerable.
C —Currently highly vulnerable obligations and other defined circumstances.
D —Payment default on financial commitments.

2010年4月6日火曜日

JETROの「BOPレポート」

下記でアフリカの「BOP」における事業機会について報告書が公開されている。

1.「BOPレポート」(2009年7月)総論ならびにケニアとザンビアの企業についてのレポート。

多角化を進めるインドのマイクロファイナンスファンド

Mr Sandeep Farias, managing director at Elevar Equity, a Bangalore-based investment management companyへのインタビュー記事。

マイクロファイナンス事業以外にも、マイクロ保険、マイクロ住宅ローン、ヘルスケア、携帯ペイメント、農村部サプライチェーンなどへ多角化。「貧困層の問題解決に資する案件であればそこへ投資する」上記の投資ファンドマネジメント会社以外にMF以外への多角化を図っているファンドマネジメント会社としては、Aavishkaar Venture Management Services, the India Financial Inclusion Fund (IFIF) , Lok Advisory Servicesが挙げられている。

クレジット事業に集中する事業ポートフォリオを改め、リスクを分散させる狙いがあると同記事は言う。





気候変動と戦う漁師(バングラデシュ)

国連大学編集のビデオ。バングラデシュの状況を3回シリーズで。

1回は「バングラデシュ 困難を越えて:荒海と戦う漁師」

同ページからの動画だけでなく、リンクも興味深い記事である。気候変動で荒れる海で苦労する漁師のお話。

http://ourworld.unu.edu/jp/resilient-bangladesh-fishermen-cope-with-rough-seas/


<感想>

国連社会経済開発計画が5人の漁師を選び、彼ら漁船の船底を金属で補強する活動をしたという。

5人! Of course, better than nothing.

世界銀行アフリカリジョンのプレゼン資料

公開されています。(日本語)

アフリカにおける金融・保険事業の問題点に関するデータなどが紹介されている。

バングラデシュへの海外直接投資(FDI)が約66%減少


中央銀行(BB)の発表によると、同国への海外直接投資(正味流入)は以下の通り:

現財務年度の最初の7カ月(2009年7月-2010年1月):$228M(対前年同期比65.56%減)
現財務年度の上半期(2009年7月-12月):$197M(対前年同期比67.33%減)

BBによれば、その原因は世界的なリセッションによるものと、同国特有のエネルギー事情の両方が考えられるという。現在も同国では、1日当たり849万立方メートルのガスと、1500メガワットの電力が不足している。


<解釈>
2009年7-12月期といえば、リーマンショックから1年後である。


上記のNYSEの値動きからもわかるように、2009年後半は明らかに企業業績の回復見通しが立っていた。この時期に、外国企業がバングラデシュへの投資規模を3分の1に減少させている。その理由として、BBの言うエネルギー問題とともに、より短期でキャッシュ(quick cash) の見込める事業へ投資先がシフトした可能性も考えられる。だとすれば、この現象(FDI急減)は同国への投資がより長期的スパンでリターンを考えねばならないことを示しているとも考えられる。

農家が銀行口座を開設しやすく(バングラデシュ)

同国の中央銀行(BB)は、農業に従事する人々(farmers)が銀行口座を開設する資格要件をすでに緩和している。すなわち、1)小切手checkbookの使用を選択せず、出金伝票withdrawal vouchersを選択する限り、開設希望を拒否しない、2)開設時の最少預金額を10タカ-約15円にする。3)口座維持手数料を一切徴収しない。

これにより、農家自身の入出金、現金管理がより安全・容易になるだけでなく、政府からの補助金支給にも便宜が図られる(政府の狙い)。

4月1日現在で、この条件緩和により新設された口座は640万を超えたという(3月の報道では360万であるから急増している)。同政府は、全土の農村世帯における1820万口座の開設(ほぼ全世帯をカバー)を目標としている。

<感想>
ビジネスを構想する上でも、特に貧困層の多い地方農村部世帯がほぼ無条件に銀行口座を開設できるということは、経営環境・経済インフラの改善と考えられるだろう。