2010年1月22日金曜日

Microfinance - Does it really work?

もしもマイクロファイナンスによる少額融資が既存の零細事業の維持やわずかな増収、日々のキャッシュショートを乗り切るための短期資金で終わってしまっては、貧困の悪化を食い止めることにはなっても、脱出はできないかもしれない。

では何が必要なのか。それはやはり「資本蓄積」である。 それにより、拡張性のある事業モデル(拡大再生産によって収穫逓増や規模の経済が成立するモデル)が成立し、所得増加がより構造的かつ大規模に図られる。ここに企業の役割もあると考えられる。BRACが様々な包括的活動で貧困層の人々の「人間開発」に注力したり、各種の事業を起こすのも、資本蓄積のための活動に他ならない。 マイクロファイナンスを資本蓄積プロセスの中でいかに役立てるかを考える必要があるだろう。



このニュース映像(インドのジャーナリストが創業したノンフィクション専門プロダクションbroken pot creative制作)は、マイクロファイナンスの問題を以下のように指摘する。

1.すべてのMFIが効率的に運営されているわけではない。監査も十分になされていないケースがある。
2.利息が高い(高いものでは28%)。無論local money lendersはその5倍をチャージするので、それよりは安いが、それでも高率である。(あるMFIが説明する利息の内訳:商業銀行からの調達金利13%、融資活動のコスト7-8%、MFI自身の利益分が残り)
3.生活の支援にはなるが、貧困からの脱出には調達資金を何に投資し、リターンを得るかというスキルと能力、支援体制が必要で、MFそのものだけでは不十分
4.インド政府が認めているSelf Help Groupを組めば、複数の住民が共同で一つの口座を商業銀行で開き、最高8000ドルまで融資も受けられる。利息は10%だが、政府からの金利補助が7%あって実質3%である。

そしてこのビデオの最後に、気になるコメントがある。「マイクロファイナンスを利用する人々も、もしも工場勤務の機会があれば、喜んでそれを選ぶ。それなりの職と給与を提供することは、MFによる貧困脱出の有力な代替手段である。」

この考えは、まさに以前のエントリーで指摘した問題意識そのものである。

つまり、マイクロファイナンスが貧困の解消に役立つためには、その融資がfuelするビジネスそのものの中身が経済的価値を生み出す力の強い、拡大再生産を可能にする事業であることが望ましい。無論ビデオでMFIの創設者が言うように、MFで雑貨店の仕入れ量をふやしたり、飼育する牛の頭数を増やしたりすることはできるかもしれない。しかし、そうした零細事業を飛躍的に大きくするには、より大規模な資金と技術、経営能力が必要になる。

一つの方法はMFの一つ上のレイヤーの金額、1万ドル単位の投資を可能にする資金調達チャネルを実現し、村民自身が起業家としてより大きな規模の事業経営を目指すことである。しかしこの場合も、相当に高度な事業運営能力・スキル・適切な教育水準が必要とされる。たとえば、現在バングラデシュでは日本の人的援助を受けながら農業の大規模農園化プロジェクトが進行中という。こうした大規模化ノウハウが現地に根付けば、このレベルの投資が成功する可能性がある。NGOや国際援助機関、そして企業が事業設計を支援する機会がここにあり、様々な取り組みがすでになされている。

いま一つの方法は、農村部への大量生産工場設置とそこから生まれる製品の販売チャネル構築をワンセットで行うことだ。この場合、工場設置という大規模投資は多国籍企業や地元企業が行い、企業側に不足している販売チャネルはMFによって小口仕入れをする販売員を募って育成する。雇用は工場勤務と販売員双方で生まれる。グラミンダノンはこれに近い。 
 
上記モデルの前段階として、他国で生産された生活改善製品の貸出業(たとえばソーラーランタンなど)をMFベースの個人事業家に委託することができるだろう。事業規模の拡大に応じて生産工場を現地に設置する、ということになる。

また、単純な生産工場建設による利益と貧困解消の両立も、引き続き有力なcontenderのひとつとして検討対象にしていく。

なお、下記のサイトにはマイクロファイナンスに関する動画が一堂に集められている。

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