2009年6月20日土曜日

政府と民間の役割 (BRAC創設者アベド博士×加藤秀樹氏) video

http://www.youtube.com/watch?v=3vswosYHa40&feature=PlayList&p=CF67175872F788B0&index=3

GrameenDanone video clip

グラミン・ダノンによるヨーグルト生産販売の模様。工場建設による雇用の創出、グラミンレディーによる訪問販売で新たな収入創出、ヨーグルトによる栄養状態の改善、そしてダノンにとっては利益と革新的製品技術・生産技術(安く作りやすく、高栄養価の成分開発)

2009年6月18日木曜日

Value added services for developing worlds

最近、発展途上国での携帯電話向けの付加価値サービスが注目されている。
http://telecoms.msgfocus.com/q/14oWJfwkyZcBwH/wv
http://www.telecoms.com/12084/asia-pacific-subs-to-grow-by-25-per-cent-in-four-years

付加価値サービスとは、例えば日本国内ではimodeを代表とする、データ通信で位置情報やコンテンツ配信etc.のサービスを提供するもの。英語ではValue Added Serviceと表現され、VASと訳される。

VASの普及は、発展途上国といってもBOPの上、経済ピラミッドの中間層がその主な対象となっているようだが、例えばフィリピンでは決済サービスが広く普及する等、BOPもしくはそこに近い人々へ提供出来るサービスも出て来ている。
これまでICTのBOPへの貢献は携帯電話の普及が主だったが、今後はインターネットの普及と合わせ、携帯でのVAS普及も徐々に増加してくるのであろう。将来的にはインターネット、VASの普及も研究対象として重要な位置を占める事になりそうだ。

「動く→動かす」設立記念シンポジウム

開催日時: 2009年6月17日(水) 18:00~20:00
開催場所: JICA地球ひろば
http://gcapj.blog56.fc2.com/blog-entry-60.html

主旨、及び内容
貧困のない世界の実現を目指すネットワーク日本(GCAP Japan)が「動く→動かす」と名称を変更し、その設立記念シンポジウムが行われた。団体の活動主旨は、世界各国の市民社会と連携しながら、貧困・開発に関連する分野に取り組む日本の市民社会組織が共同して政策提言を行い、また、パブリック・キャンペーンにより世論を喚起することで、MDGsの達成、世界の貧困の解消に向けた取り組みを日本から作り出す事、である(GCAP JapanのHPより)

シンポジウムでは世界のGCAPからのビデオメッセージ上映、動く→動かすへの期待についての発言の他、「私たちには何ができるか」というテーマでパネルディスカッションが行われた。
パネルディスカッションでは本NGO団体の中心活動であるMDGs達成の為の政策アドボカシー(政策提言)やパブリック・モビライゼーション(社会に働きかけ貧困解決の世論を喚起する)の他、企業とのパートナーシップについても触れられた。

所感
シンポジウムでは政策提言や世論喚起が団体の活動主旨である事もあり、我々のテーマである営利企業の活動(事業活動を通じてBOPでの貧困改善を行う)についての注目度はまだまだ低いと感じた。
パネルディスカッションでNGOと企業とのパートナーシップについて若干触れられはしたが、深い議論にまでは至らなかった(時間が短かったせいかもしれない)。
営利企業は貧困の解決というよりも搾取する存在だと認識されている場合も多いであろう。営利企業の貧困改善への貢献についての注目度を上げていく為には、企業に対してだけではなく、市民社会、NGO等、広い対象に向かって発信してく必要があると感じた。

2009年6月16日火曜日

DoCoMo brand to debut in India

TTSL(Tata Teleservices Limited)はインドのモバイルオペレーターで、タタグループが出資している。日本のNTT DoCoMoが今年26%を出資し事業面/技術面で協力するとしていた。
今月に入りTATA DOCOMOという新ブランドを発表、GSMのサービスを展開する。

http://www.telecoms.com/12043/docomo-brand-to-debut-in-india
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/090610_01.html

通信の分野では、例えばバングラのGrameen PhoneにノルウェーのTelenorが出資、旧Sheba TelecomをエジプトOrascomが買収し、事業に参画している。

技術やノウハウを持つ国際的なオペレーターが入る事により、その国の通信の発展に寄与しているケースがある。その為にはStuart Hartが「未来を作る資本主義」で述べているように「土着化」してその国、コミュニティーに暮らす人々に合ったサービスを提供する必要がある。今回のインドのケースでは単純に考えると、
  • NTT DoCoMo → 技術面での貢献
  • TTSL → 土着化面での貢献
が望ましいシナジーとなるのであろう。

2009年6月15日月曜日

"BRAC" HBSケース

John Quelch, Nathalie LaiderによるBRACのケース

BRACの概要(歴史、方針、プログラム)についてまとめて国際展開、人権保護活動への参加など活動領域はどんどん広がるもののそれを支える組織能力が課題になっていると言うケース。

コンテンツとして面白いのが「BRAC's Competition - Grameen Bank」というところ。
BRACもGrameenもバングラデシュのNGOであり世界的に有名である。特にMicro financeというところだけ見れば同じ事業をしているので、自然と興味はNGO同士の競合というところに向けられる。本ケースは非常にBRACよりに書かれていると感じるがその違いについて以下の様に説明している。

Grameen believes that credit is a fundamental right of the people and that market forces will take care of the rest.
つまりグラミンは貧困層の人はお金を借りることが出来れば市場に参加することが出来、そうすれば問題は自ずと解決する。financial capitalの欠落が貧困層の最も大きなハードルであり、それをクリアすれば良い。という考え方。

一方BRACは
BRAC believes that, in Bangladesh right now, poor people cannot compete in the market.
として、お金を借りることが出来ても貧困はなくならないとしている。そのためにBRACはMicrofinanceだけの提供にとどまらず、教育や医療などのサービスも直接、自然と手がけていると言う。

また、BRACの成功要因はその優れたマネジメントにあるとしているが現在の課題は人材の育成であるという。組織の拡大をしながらカルチャーを維持するのが難しいというのは民間企業でもよくある話だがNGOならではと感じたのは、不足しているシニアの優秀な人材を世界銀行などにとられてしまって採用が困難であったり、social businessを始めるにあたり民間企業から人材を登用しようとすると人件費が遥かに高くかかってしまい、組織の反発を買ってしまうなどしているという点だ。

アメリカのNPOなどは民間と変わらない給料で優秀な人材を採用していると聞くが、開発国のNGOというのはやはり民間よりも悪い条件でしか人を雇えないのだろうか。しかしBRACほどの成功をおさめているのであれば、それなりの給料も払えるのではないか?払っていないから利益が出ているのか?

今後の確認ポイントがまた増えた。

NGO & Private sector partnership BRACの事例

昨年9月にFASIDで行われたセミナーにおけるBRACのプレゼンテーションより。

BRACのAnnual reportは2007年までしか出ていないが、上記のプレゼンは2008年3月と情報が新しい。1990年には同社の事業予算(Annual expenditure)の7割は政府や国際機関からの寄付で成り立っていたが、2007年には2割まで減少している。その間事業予算の額は$20millionから$485millionと急増しているにも関わらず、8割はBRAC自身が生み出す資金で運営しておりその要因としてBRAC Enterpriseという同社のsocial businessが大きな役割を果たしていると言う。

BRAC Enterpriseは営利追求組織(profit seeking organization)と非営利社会的組織(non-profit social organization)の中間に位置し、profitとsocial objectiveの”double bottom line”がコンセプトとなっている。優先順位はprofitではなくsocial objectiveにある。

いくつか民間企業との協業もしており、その際の成功要因としてお互いを知る、目的を明確にするなど色々とあるが、
A meaningful engagement can happen only when the society and markets puts a premium on 'non-financial' parameters that make an organization 'socially responsible'
としており、社会がプレミアムを払ってもらえるような活動をして初めて持続性も生まれるとのこと。

プレミアムというのは私の理解では「価格の上乗せ」であるが、BRACというブランド、social enterpriseの事業活動にプレミアムを払うということはもっと安いものがあっても消費者はプラミアムを払って少し高い社会に良いことをしている方の企業のものを買うということを言っているのだろうか。だとするとcharityをして企業イメージをあげるというのとあまり変わらない様に思えて来る。。。。

2009年6月13日土曜日

日本企業とBoP

新興国のボリュームゾーンを狙うために」という記事より。

 日本企業の海外進出は富裕層を狙ったものから徐々にピラミッドを降りてきて「ボリュームゾーン」に入っていく例が増えていると言う。さらにBoPへの進出について下記の様に述べている。

「数年前から中国・インドなどの中間層市場が世界で注目されてきた時も日本企業はプレミアム戦略をとり続けた。しかし、最近、やっと中間層市場に本腰を入 れようという企業が出始めてきた。これと同じことがBOP市場にも起こりえる可能性があるのではないか。BOPのみをターゲットとするのは現実的ではない かも知れないが、その市場も含んで戦略を考えていくことは必要だろう。」

 たしかに日本企業のBoPでの事例はほとんどない。あってもCSR的なものばかり。なぜ日本企業はBoPに行けないのか。さらっと「現実的ではない」と言うのはどのような前提を持っているのか。

総務省 「ICT先進事業国際展開プロジェクト」

本プロジェクトは総務省が平成21年度より実施されるもので、ICT(Information and Communication Technology)重点3分野 1)デジタル放送、2)次世代IPネットワーク、3)ワイヤレス の国際展開活動の加速と、日本のICT産業の競争力強化/成長力強化を目的としたもの。

以下の3つの事業が対象となっており、うち1つが途上国向けで、その社会・経済ニーズに対応したモデルを構築するとしており、例えば地方と都市を結ぶ遠隔教育や遠隔医療等が想定されている。
  1. ICT重点3分野途上国向けモデル事業(ユビキタス・アライアンス・プロジェクト)
  2. ICT先進実証実験事業
  3. ICT利活用ルール整備促進事業(サイバー特区)
募集は今年1月~3月にかけて行われ、4月に実施テーマが発表された。
選定されたテーマにはインドネシア、ベトナム、タイ等で通信のインフラ整備に加え、遠隔教育、遠隔医療、携帯での決済等のアプリケーション等が含まれている。

これまでのような単なるODAに終わるのではなく、我々がこのフォーラムで目指しているような営利企業が参画する事で社会価値を継続的に増大し続ける仕組みに繋がる事を期待したい。


募集の総務省URL
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2009/090116_3.html
結果発表の総務省URL
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin01_000011.html

2009年6月12日金曜日

未来への提言 グラミン銀行総裁 ムハマド・ユヌス 〜世界を救うソーシャル・ビジネス〜

NHK「未来への提言」と言う番組の中の一話。
2006年のノーベル平和賞受賞者、グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌスの特集。

 内容は本ブログでも紹介している「貧困のない世界を創る」とほとんど変わらないが、実際のバングラデシュの農村の状況やグラミンダノンのヨーグルト工場などが映像で紹介されており、活字で読むよりも臨場感がある。やはりTVの表現力はすごい。

 サブプライムローンに端を発する世界同時不況、金融危機を行き過ぎた利潤追求の結果だと非難し、社会的価値を追求する「ソーシャルビジネス」による新しい資本主義の形があるのではないかと、ユヌス氏は語る。
 経済学で定義される人間、企業は自分のことしか考えない、利益だけを追い求める存在だが、実際はそうではない。我々は人のためになることをしたいと思 い、人助けをすることに喜びを感じる。今までの資本主義は我々の半分しか反映をしておらず、ソーシャルビジネスが残りの半分である。

 グラミン銀行を中心として、グラミンダノン、眼科病院、グラミンシャクティなどの紹介がされている。いずれも社会問題の解決を目指すソーシャルビジネスであり、グラミンダノンは子供の栄養失調、眼科病院は白内障の治療、グラミンシャクティはソーラーパネルによる電気の普及をその事業目的としている。
  ソーシャルビジネスとは利益最大化を目的とするのではなく社会問題の解決を目的としており、出資金は利益が出れば回収出来るが配当はされない仕組み。グラ ミンダノンはソーシャルビジネスとして運営されており、CEOが株主に報告するのは売上や利益ではなく、ヨーグルトの販売によって救うことが出来た栄養失 調の子供の数だと言う。

 大企業との協業の話題が多いグラミングループだが、VolksWargen、addidasとも協業を模索しているとのこと。大企業と組むメリットは彼らの技術・ノウハウを活用して少ない投資で大きな効果を上げるため

 さらに道路を造ったり、橋を造ったりすることも計画しているらしくその活動範囲は政府と重複する。その点については次の様に述べている。政府は民意に支えられた存在であり何かを実行するには合意形成が必要で、そのために動きが遅くなっている。よって個人の決断ですぐに実行に移れる我々が事業としてやっている。双方にとって有意義な競争であり、政府がやるべき範囲だから我々は手をこまねいているというわけにはいかないとのこと。
 ちなみに橋のビジネスモデルは企業や団体からは交通料を徴収し、貧しい住民は無料で通れる様にするという計画のようだ。上記の眼科病院も裕福な人は手術費が1回25ドル、貧しい人は無料というテーブルになっている。日本では政府でやっているような公助、互助の仕組みをグラミンが代わってやるというイメージだ。

 所感としては多国籍企業の立場からグラミンとソーシャルビジネスをする目的がいま一つ分からなかった。利益を上げつつ、社会問題も解決するというのであれば良いが、利益が上がらない。出資したお金は5年〜10年で戻って来ると言うが、利息がつかずに戻ってきたのではそのお金の価値は目減りしてしまっている。
 良いことをしているのだから良い、と言うのであれば、寄付やCSRと変わらない。ダノンは自社の評判を良くするためにグラミンと組んだのか?自社の社員のモチベーションアップのためなのか?(⇒「ダノンの狙いは戦略的学習」参照)

 もしそうだとするならば、それはsustainableではないし(ダノンの本業の業績があやしくなればコスト削減の対象となり撤退)、scalableでもない(拡大すればするほど損が増える)。
 あやしい金融商品を買うよりもソーシャルビジネスに投資をした方が投資家にとってもリターンを期待できるという形にまで持っていくことができれば、社会問題の解決はより促進されるのではないだろうか。そのような仕組みを作ることは出来ないのだろうか。

2009年6月9日火曜日

"Busuness Models for Technology in the Developing World: The Role of Non-Governmental Organizations"

本文献は2006年のCalifornia Management Reviewに掲載されたもの(Spring 2006, Vol.48, No.3)。
著者はHenry Chesbrough, Shane Ahern, Megan Finn, Stephane Guerraz

今回読み直し、示唆に富んでいる事を改めて感じたのでここで紹介します。


本文献でのメッセージは以下2点にあると理解した。
  1. ビジネスモデル(バリューチェーン)構築の重要性
  2. 事業の立ち上げ期にNGOと提携する事の重要性
1点目、ビジネスモデル(バリューチェーン)構築の重要性は、そもそもBOP市場には製造、流通/販売、等を行える業者が十分存在しない、また資金を調達する資本市場も十分発達していない、という前提から始まっている。この様な状況では、どんなにその社会に適合する製品、サービスを創りだしても事業として成功出来ない。この考えは、Stuart L. Hartの「未来をつくる資本主義」で土着化と表現したもの、またJamie Anderson/Costas Markidesが示した4Asの考え方(Strategic Innovation at the Base of the Pyramid, MIT Sloan Management Review)と共通する。

2点目、事業の立ち上げ期にはNGOと連携する理由は、そもそもBOPでの事業立ち上げには長期間を要し(本文献では5年以上と表現)、営利企業がそれだけの期間待つ事は難しい、そこでNGOを活用しようというものである。またNGOは利益を税金として納めたり株主に配当する必要はなく、その分事業に携わる小規模な起業家にまわす事が出来るので、彼らの育成にもつながる、というもの。
この点は、本フォーラムでも議論している営利企業とNGOの分業モデルそのものである。但し本文献ではNGOが関わるのは初期のみ、その後は営利企業がNGOの担当分を引き取り単独で事業を行う、NGOは新しい別の事業の立ち上げに携わる、としている。営利企業が単独で事業を行うのは先進国と同じ、つまりそれなりのインフラ、環境が整っていればNGOは必要ない、という事であろうか。またその場合社会性と営利性の両立はNGOがいる場合と同じであろうか、もしくは変わるのか?
もう少し検討が必要そうである。

「ケニア・ミツバチで農村をチェンジ!」

下記の事例は、本フォーラムが議論の主たる対象としている多国籍企業によるBOP市場戦略とは異なるが、地元コミュニティとの共生(土着化)の参考になるビジネスモデルとして紹介する。

先週始まったNHK総合の新番組 CHANGE MAKERの第1回目 「ケニア・ミツバチで農村をチェンジ!」

放送日時: 6月4日(木) 午前0:10~午前0:40(30分)

内容:
世界で起こっているさまざまな問題に果敢に挑戦し、その解決策をビジネスとしても成功させようとする「チェンジメーカー」。ケニアの人口の大半である貧しい農家は、せまい不毛な土地で生活するのに必死。現金収入はほとんどない。ファルーク・ジワさんは、ミツバチを飼育し、ハチミツを販売する独自のシステムで貧困を解決しようと思いついた。伝統社会のしきたりなど、幾多の壁をのりこえて実現に至った感動の道のりを紹介する。

所感:
アフリカの農家は自給自足で精一杯で、灌漑設備も無く、農業は天候の影響をダイレクトに、強く受ける。従って収入は不安定でこの様な安定して収入を得られるビジネスは喜んで受け入れられたに違いない。
この事業のビジネスモデルのポイントは以下にあると考える。

  1. ミツバチの巣箱はタダで供給しない。ローンで販売する。これにより、蜜を集める事業を行う起業家は自分の仕事に責任を持って取り組む。
  2. 蜜は必ず全て買い取る。その為起業家の収入は安定する。
  3. 巣箱のローン支払は、蜜を買い取る時にその代金の25%を差し引くとしている。毎月いくら支払う、という仕組みではなく蜜が集められて収入が得られる時に支払うという仕組みになっており、無理な返済とはならない。

ちなみにこの事業でも、最初に積極的に参加したのは女性だったとの事(男性は最初そんなものでお金は稼げないと否定した)。マイクロファイナンスもそうだがBOPのキーの一つは女性にいかに参画してもらうかということか。
番組の最後にこの事業を行っているある女性の起業家が取材されていた。この女性は何と自分で巣箱を作っていた。コストも安く、生産性も高いらしい。こういう人がたくさん出てくる仕組みが出来ると貧困の改善は加速するのであろう。

業界特性とBOP戦略

 重要な条件変数として、業界特性がある。食品(グラミンダノン、ネスレ、デュポンのSOLAE社)、FMCG(HLL、SC Johnson)、電機(フィリップス、HP)、情報サービス(グラミンテレコム、同フォン、ブラックネット)と見るだけでも、製品開発費用、インフラ設置費用、MES:最小最適生産規模(すなわち必要初期投資額)などの違いからくる固定費構造、および小口化の物理的可能性などにおいて、違いがみられる。

 BOP市場では微小需要を大量に累積することで売上・利益の成長を実現する必要があるため、特に「小口化とその効率的集約」をいかに効率よく低コストで行うかが問題となる。そこに上記の業界特性が当然に影響を与える。またその際に、ICT(情報通信技術)を効果的に活用できるかどうかが効率に影響する。

World Income Distribution Trends by UNDP

http://www.gapminder.org/downloads/flash-presentations/human-development-trends-2005/

9つの項目は、BOP市場における企業パフォーマンスの一部である「Human Development」の側面の評価尺度となるはず。

"Serving the World’s Poor, Profitably"

 C.K. Prahalad and Allen Hammondによって2002年にHarvard Business Reviewに掲載された論文。日本語は2003年1月号の Diamond Harvard Business Reviewに掲載されている。邦題は「多国籍企業の新たな成長戦略 第三世界は知られざる巨大市場」

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内容の要約
 BoPは多国籍企業が未開拓のまま放置している巨大市場であり、企業は自己の利益を追求しつつ貧困を削減することが出来る。BoPの消費者は購買力が無い、生活必需品しか売れない、低価格なものしか売れないため利益が出ない、などと一般的に言われているがそれらは誤解である。実際にはBoPは非効率と中間搾取に満ちた非公式・高コスト経済(BoPペナルティー)のために貧しく、適切なものを適切なプロセス、適切な価格で販売すれば、BoP全体として大きな利益を得られる。

 さらにその経験が企業にとっての強力な競争優位になる。BoP市場に参入することによって売上拡大のための新しい市場の獲得、オペレーション効率の向上、イノベーションの機会向上という3つの競争優位性を獲得出来る。ただし、そのためには創造的な思考、BoPに関する正しい理解、研究開発部門を現地に設置するなどの企業の構造改革などが必要である。

 多国籍企業には豊富な技術と才能があり、国際開発機関や政府が出来なかった市場主導と言う新しいパラダイムを示し、新しい基準を生み出すことが出来るとしている。
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 戦略論の見地からBoPの概念が初めて提唱されたのは1998年(ちなみにBottom of the Pyramidというフレーズ自体は1932年に当時のFranklin D. Rooseveltによってラジオ演説で使われている)。

<BOP戦略の原型となった論文>
Hart, S.L. (1997) "Beyond Greening: Strategies for a Sustainable World" Harvard Business Review, Jan-Feb.
Prahalad & Lieberthal (1998) "The End of Corporate Imperialism" Havard Business Review July-August.
Prahalad & Hart (1998) unpublished research report on BOP strategy  :「BOPにおける経済的利益を伴う貧困の解消」というコンセプトが初めて提示された。これをベースに書かれたのが、
C.K. Prahalad & Stuart L. Hart (2002) "The Fortune at the Bottom of the Pyramid," Strategy+Business, January 2002: 54-67.

2009年6月6日土曜日

マイクロファイナンスの実態?

バングラデシュにおけるマイクロファイナンスの状況がまとめられている。

経済合理性を伴って貧困を削減出来る有効な施策として語られることが多いマイクロファイナンスだが、もちろん良いことばかりではなく問題もある。
金融は経済のおける血管のような重要な役割を持っており、そのツールを貧困層に使える様にカスタマイズした功績は果てしなく大きい。しかしながら貧困層が貧困から抜け出すためには心臓に当たるビジネスそのものの成功が欠かせないということを忘れてはならない。

--以下引用
 グラミン銀行の高い返済率の裏には、いくつかの巧妙な仕組みがあることが知られている。通常、最も強く批判されるのは、強引な連帯責任制度を敷いている ことである。グループメンバー5人のうち、まず最も貧しいメンバーに融資が行なわれ、それが返済されなければ、他のメンバーが借りられない。そのため、他 のメンバーが、先に借りたメンバーに返済のために、無け無しの家財を売り払わせたり、高利貸しから借り直させたりした、というようなエピソードがあちこち の村で語られている。

 あるいは、借り入れた資金を、自分で使わず、他の村人に、少しだけ利子を上乗せして又貸しするケースもよく耳にする。グラミン銀行を始め、実施機関の多 くが調査に抵抗を見せるので実体は掴みにくいが、組合のメンバーから他の村人への又貸しが相当の割合に上っていることは間違いない。

 これらのエピソードが示すのは、公的な金融機関が実質的に機能していないバングラデシュ農村においては、小口で短期の資金の需要が相当大きい一方、貧しい農民が有効な投資先を見つけるのは非常に困難という農村の現実である。
--引用ここまで

原文
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1055.html

また、バングラデシュのNGOという記事も同サイトにはあり、各国のNGOの役割・性格の違いが分かりやすくまとめられている。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1050.html

2009年6月1日月曜日

営利と社会性をめぐる企業観

未来を創る資本主義(p.49)からinspireされた世代モデル:

第1世代:社会的問題(環境・貧富の差)を悪化させる営利事業→南北問題、公害
第2世代:社会的問題を悪化させる営利事業+法的規制
第3世代:社会的問題を悪化させる営利事業+法的規制+慈善事業による贖罪・利益還元・評判効果(狭義のCSR)
第4世代:社会問題を悪化させない営利事業(例:本業における「環境保護」への配慮、「環境効率の向上によるリスク・コスト低減」)(広義のCSR)
第5世代:社会問題を改善する営利事業(本業を通じた社会問題解決、例:貧困の解消、「環境効果」の向上)

BOP戦略は、この第5世代を実践していくことと同義。第2世代以降のすべての企業モデルが現代において混在している。

さらに第5世代は既存事業の修正・カスタマイズによるBOP1.0と土着化を必須の要素とするBOP2.0とに分かれるが、後者の方が、より持続的成功の確率が高いとされる (www.bop-protocol.org)。

分業モデルについて

以下はあくまで仮説。
先に指摘されたマイクロクレジットとMNCsの分業モデルを、より一般化された仮説に近づけてみる。

BOPにおける事業には二つの側面があり、それは
A「大規模投資を必要とする技術開発、製品開発、設備投資、インフラ構築」と
B「コミュニティーをベースに繰り広げられるビジネス浸透・販売チャネル」
である。Bの部分は、HartのCapitalism at the Crossroadsでいうところの「土着化」が特に求められるフェーズである。)

Aの実行主体としては、大規模資本を柔軟かつ迅速に調達する上で有利な立場にいる「営利企業」が、
Bの実行主体としては、地域コミュニティと深く連動・浸透・共生している事業体(マイクロファイナンス銀行や地域の社会教育を担うNGO)が適している、

ということなのではないか。ただ、迷うのは、Aの主体が営利性を担当し、Bの主体が社会性を担当するという単純な構造でもないことだ。

たしかに、Aは営利主体が、Bは主に非営利主体が担当することにより、見た目として営利と非営利性(≒社会性)の両立が果たされやすいとは言えるだろう。しかし、Bの部分を営利組織がになってもなお、社会性と両立させることはできる。マイクロファイナンス自体は利益の上がる事業モデルである。
つまり単純な二分法でもないわけで、営利性と社会性の両立が成立する条件はさらに考察が必要。