2011年4月20日水曜日

日本能率協会BOPビジネス報告書「開発途上国低所得層(BOP)におけるビジネスの実現と成功条件について」

昨年12月のエントリーで東南アジアのフィールドサーベイについてエントリーして以来、数か月遠ざかってしまった。この間作成に従事していた報告書が、ようやく日本能率協会から3月24日に発表された。(報告書は下記のURLでダウンロード可能です↓)

この報告書は、一昨年のアフリカ昨年末の東南アジアでのフィールド調査、ならびに日本能率協会主催の「BOPビジネス懇談会」メンバー企業(味の素、ヤクルト、ヤマハ発動機、三洋電機、住友化学、テルモ、東芝)の知見を豊富に反映しながら、理論的な構造化を試みた。

執筆に当たって特に留意したのは、1)企業戦略の観点からなぜBOP層でのビジネスに取り組む意義があるのか、2)ゼロからの参画である場合、どのようなプロセスで意思決定していったらよいのか、ということである。

すでに世の中には多数のBOP関連書籍が発刊されており、BOPビジネスを各市場ごとに概観するものや実地調査の方法論などが紹介されている。そのような中、本報告書が光を当てたのは、実務的知見もさることながら、専門領域の企業戦略の視点である。企業戦略においてはいかなるビジネスであれ、そこにどのような「戦略的意図」があるのか、が戦略策定の出発点となる。その下で経営資源は最適配分され、自社の持続的競争優位の実現が目指される。

この「BOPで営利事業を進める際の戦略的意図」という論点の重要な理論的背景になるのがPorter & Kramer (2011) "Creating Shared Value: how to reinvent capitalism -- and unleash a wave of innovation and growth" で、経済的価値と社会的価値の同時実現をゴールとする考え方である。これについては、その重要性に鑑み、両著者のこれまでの一連の著作を振り返りながら、その理論的進展と、今後の戦略理論に与える潜在的インパクトを含め、近日中に触れることにする。

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