2011年5月17日火曜日

「急拡大する『BOP』ビジネスへの参入に異議あり:日本企業は強みを生かせる『MOP』を目指せ」

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110506/219791/?P=1(無料会員登録で全編通読可能)

元花王会長の常盤さんのエッセーである。このエッセーをそのまま読むと、これはBOPとMOPを分断された市場ととらえ、MOP予備軍としてのBOPへも同時攻略が必要だという考え方が欠落しているようにも受け取れる。一見すると、日本企業のかつての成功モデルへの回帰を肯定しているように読める。
ところが、読み進むと、日本企業への認識がきわめて現実的で、なかば自虐的とすら言え、むしろ逆説的に日本企業の戦略不全に対する痛烈な批判になっているとも解釈できた。不思議なエッセーだ。

以下、同記事の要点。

日本企業の強みは歴史的に高性能・高品質なのにリーズナブルな価格」という点にあり、これはBOPで要求される低品質低価格には整合しない。むやみにBOPを攻めては果てしない価格・コスト競争に巻き込まれて疲弊するだけである。

韓国中国企業は意思決定スピードや経営資源の組み換えが早く、変化の早い新興国市場への適応能力が高い。また、市場ニーズを把握するための「市場感性」にも長けている。一方、日本企業は「とにかくスピードが遅」く、「現地への権限委譲が不十分なためか、本社で時間をかけて議論することになったり、的外れな決定が下されたりしがち」なため、「結果として、韓国勢などに先を越されてしま」う。 (筆者注:これではMOPでも全く勝てないと思われるが。)

その結果、「日本企業は確かに技術では優れていても、この市場感性とスピード感では韓国などに見劣りします。」「残念ながら、技術で勝っていても、市場で、ビジネスで負けてしまう」。

よって、日本企業はBOPに攻め入るべきではなく、新興国中間層および先進国市場に的を絞り、「日本らしさ」を追求すべきである。

以上が氏の主張。

サムスン電子のアフリカ戦略

http://www.nation.co.ke/business/news/Samsung+seeks+new+market+in+Africa/-/1006/1160442/-/ywacv3/-/index.html
(Daily Nation, May 17, 2011)

(CIO East Africa May 17, 2011)

同社がナイロビで独自開催したサムスンアフリカ地域フォーラム(Samsung Africa Regional Forum)で、サムスン電子のアフリカ事業のリーダー、Park氏が述べている。

1)アフリカでの急速な業容拡大

2010年、サムスン電子はアフリカ事業で$1.23Bの売上を達成、これは前年比31%増である。アフリカは、同社の世界売上全体($135.8B)の0.9%にあたる。アフリカにおける版図拡大は、2009年と2010年の比較において、製品販売国数は15から42へ、流通業者数は32から80へ、サービスセンター数は18から36へ倍増している。

Park氏によれば、同社の目標は2015年までにアフリカ市場での売り上げを$10B(約1兆円)レベルに引き上げ、中国に匹敵する市場に成長させる計画だという。そのためには、2011年の成長率を前年比倍の63%、雇用者数も5000名に引き上げる方針だという。


2)組立工場とR&Dセンターの増設

現在同社はスーダン、南ア、ナイジェリア、エチオピア、セネガルにKD工場を保有するが、KD工場をさらに増設するとともに、新たにナイロビにR&Dセンターを設立する。R&Dセンターは、アフリカにおける「ひんぱんな停電を始めとする厳しい環境」を前提とした製品開発を担う。同社はこれまで22のローカルR&Dセンターを全世界に設立してきているが、アフリカでは初めて。

3)現地人材の育成プログラム

同社はまた最近になってSamsung Electronics Engineering Academy (SEEA)という、アフリカの将来を担うエンジニア養成プログラムを設立しており、現地の4校が参加する(すでに南アでたちあがり、ケニアへ拡大中)。これにより2015年までに10,000名のエレクトロニクス分野のエンジニアをアフリカで養成する方針。

4)アフリカ向け製品の拡大
本フォーラムで、サムスン電子はすでに開発済みのアフリカ向け製品のプロトタイプを発表した。フルHDの3Dテレビで双方向通信可能なサムスンスマートTV,ギャラクシーTab 10.1と8.9などである。

他にアフリカで活発な動きを見せる企業にはNokia, Google, Bharti Airtel などがある。日本メーカーのアフリカ戦略はいかがか。MOP同様再び後塵を拝することになるのか。


2011年5月16日月曜日

週刊アフリカビジネス

アフリカ市場に関する情報は、もちろんJETROやJBICに当たると、調査プロジェクト単位の報告書が入手できるが、佐藤重臣氏による週刊アフリカビジネス(メールマガジン)は継続的に情報収集・発信・分析している(月額840円)。毎週個別業界や経営環境など多岐にわたる読みごたえあるレポートが送られてくる。
次のエントリーの「サムスン電子のアフリカ戦略」に関する記事も、週刊アフリカビジネスでクリップされていたものだ。

サムスン電子の地域専門家制度

既に昨年五月のエントリーで紹介されているが、少し詳しい内容(地域別育成人数など)がこちらに。

2011年5月9日月曜日

第16回日経アジア賞: フィリピンNGO ガワッド カリンガ

Gawad Kalingaは、貧困層向けに住宅建設を支援する。第16回日経アジア賞
活動資源(資金や資材)の提供元は「米シティグループや富士ゼロックス、比最大財閥アヤラ・グループといった内外の有力企業」および「一定の成功を収めたフィリピン人の海外就労者」。企業には「住宅や道路に企業名を命名させたりする。」

すでに同国内2000地区で20万件の住宅建設実績。目標は「2024年までに、貧困層向けに500万戸の住宅を建設する」こと、だという。

(日経新聞朝刊5月5日10面に記事)

国連の世界人口推計: 2100年にはアフリカの人口が35%を占める

日経新聞朝刊5月5日報道および補足

国連によれば、本年中に地球上の人口は70億人を突破する。地域別に見ると(下図)、アフリカの人口増加が顕著であり、2100年にはアフリカが全人口の35%、アジアが45%、ラテンアメリカとカリブ海諸国、ヨーロッパ、北米、オセアニア合計で20%。



海面上昇が今世紀末までに1.6m上昇する可能性

日経新聞2011年5月5日報道および補足

北極評議会(Arctic Council)の予測によれば、北極の氷の融解が予想以上に早く進んでおり、標記の海面上昇が予測されるという。

例えば本ブログの先のエントリーで触れたように、バングラデシュであれば、海水面の3ft(約1m)の上昇により、国土の約3分の1(居住者数3500万)が水面下にという指摘(http://bopstrategy.blogspot.com/2009/09/202531.html)や、同じく1mの上昇で海岸線の4分の1が氾濫し、国土の17%が失われる(http://bopstrategy.blogspot.com/2009/10/3117.html)など、複数の予測がなされている。