同紙同号では、世界各地の森林違法伐採の問題が取り上げられている(ウェブ上にはなし)。アマゾン流域、インドネシア、ロシア、コンゴ地域という、地球上の主要な材木生産国・地域(他にバルト三国地域、東アフリカなどがある)の事情が報告されている。
1.カメルーンの事例
カメルーンの事例では、「伐採は唯一の生きる手段」と副題が付けられ、同国政府が1994年の商業伐採を制限した後も続く違法伐採の実態とその理由を報じている。郊外の村には欧州系と中国系の製材会社が進出しているが、これら外資系企業は大きな騒音で伐採する上にわずかな補償金しか支払わず、近隣の村は外資からの恩恵を受けられていないことに不満を募らせているという(同紙記事)。それら村々の住人の一部が違法伐採に手を染める。
2.インドネシアの事例
この違法伐採と貧困のリンクは、インドネシアでも同様だ。同国は2008年のギネスブックで、世界で最も速いペースで森林が消失する国、とされた。パーム油の原料となるアブラヤシ、パルプ原料のアカシアが大小様々な規模で栽培されている。その栽培用地確保のための開墾で森林が失われるという。(開墾による森林消失) (以上、信濃毎日の記事をベースとした論評)
3.違法伐採の「違法性」とは
そもそも伐採の「違法性」は何によって生じるのか。いくつかのパターンがある。まず、伐採そのものに関しては、1)環境保護や治水目的で伐採が禁じられた地域での無許可伐採、2)不当な(賄賂など)手段による伐採許可(ライセンス)の取得、3)伐採禁止種の伐採、4)伐採制限量を超えた伐採。また、伐採以降の加工と流通においては、5)違法な製品化と輸出(脱税)、6)税関における申告不正(脱税)など、である。違法材を輸出入しない、という二国間協定を迂回するため、その種の協定を結んでいない第三国にいったん輸出してから目的国に輸出しなおしたり、違法材を輸入してそれを合法材として輸出するといった木材ロンダリングも存在する。
4.違法伐採が引き起こす諸問題
1) 腐敗や悪慣行の助長(伐採許可を得るための賄賂や、違法伐採で得た利益の横流しなど)• encouragement of corruption and bad practice
2) 政府の税収機会損失、社会インフラと国民の福祉の損失(現地資本での林業が育成されず、違法材による利益は海外へ流出してしまう)• major loss of revenue for governments, with knock-on effects for social infrastructure and human well-being in the countries
concerned
3) 森林の存在をベースに成立している集落から、長期持続的収入源と安全が失われる。• loss of long-term income and security for forest-based communities
4)森林機能の低下により、動植物の生態系が失われる• degradation and clearing of forests and consequent loss of habitat for plant and animal species
5)天災の増加:土地浸食、堆積物による河床上昇、地滑り、洪水、森林火災• increased vulnerability to natural disasters such as erosion, riversilting, landslides, flooding and forest fires
6)質・量、両面から長期的材木供給が困難に• loss of long-term supplies of timber, threatening both quality and quantity
7) 合法的に伐採する事業者に不当な競争的圧力をかけ(∵違法伐採材は低価格販売可能)、責任感と順法精神ある経営者を違法行為に駆り立ててしまう。
• undercutting of and unfair competition with responsible, well managed forestry, potentially leading otherwise committed managers from legal practices to illegal ones.
これらに加え、森林の消失自体はCO2を発生させ、またCO2の保持能力が減退することを意味する。
5.先進諸国での取り組み
EUでは、2003年からFLEGT(the EU Forest Law Enforcement Governance and Trade)によるアクションプランが実行に移された。2005年のG8以降、先進諸国でも違法伐採の問題は気候変動やMDGs達成との兼ね合いから政策課題として優先順位が高まってきており、日本でも2006年のグリーン購入法の中で、違法伐採材を政府調達の中では使用しない政策がとられるようになっている。民間での使用は義務付けられていないが、奨励されている。(Goho Wood キャンペーン)。COC(Chain of Custody、いわば原産地と合法性のトレーサビリティ)確保が違法材撲滅のカギと言われているが、それを網羅的に保証することは技術的に極めて困難とされている。
6.BOPにおけるビジネスの文脈
この違法伐採問題は、現地の人々の所得を高めつつ、合法的(すなわち持続可能な林業および関連産業という形での)ビジネスモデルで解決することが可能ではないだろうか。林業とくれば、日本には大変に高度なノウハウが存在するはずだ。すでに森林のCO2保持力を排出権取引に活用する試みは始まっているが、社会性と経済性を営利の本業で両立させるという本フォーラムの趣旨からは、実業世界でのビジネスモデルを考案してみたい。
<参考文献>
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