財団法人国際開発高等教育機構(FASID) Brown Bag Lunch Seminar 「日本の経済協力への一視点 バングラデシュを事例として」
講師: 井上正幸氏 財団法人日本国際教育支援協会理事長・前駐バングラデシュ日本国大使
日時: 2009年11月11日(水) 12:30~14:00
(セミナー紹介のURL
http://www.fasid.or.jp/chosa/forum/bbl/annai_195th.html)
以下、掲題のセミナーへの参加報告。
本フォーラムでは、
今年10月21日のエントリーにあるとおり、多国籍企業の経営資源の活用を通じ、BOP市場に根差した事業活動を拡張させ、利益と社会問題の解決を両立するにはどのような条件を満たすことが必要かを明らかにしようとしている。従って研究の対象は多国籍企業に焦点を当てるが、多国籍企業はその活動する国での政治、経済、文化等様々な要素の制約や影響を受ける為、それらを無視出来ない。井上氏の話では、我々も今年6月に訪れたバングラデシュについて多面的に説明された。私の印象に残った点について、以下要約する。
- 現在経済成長率は年約6%。産業は農業従事者が多いが、稼ぎ頭として縫製業、陶器、皮革製品、小規模船造船、ソフト産業等。
- また500万~600万人のバングラデシュ国民が外国に出稼ぎに出ており、その多くは湾岸諸国で働いており、また出稼ぎに出た人々の2世, 3世も誕生し海外への人脈も出来つつある。従ってバングラデシュでのビジネスを考える際、国内だけでなく海外ネットワークも考慮するべき。
- 経済協力では、持続可能性が重要、さらに単独の事業や地域の協力(「点」)に終わらせず、「点」から「線」、さらに「線」から「面」への広がりが必要。
- 援助では相手国政府のオーナーシップを重視するが、効率的な援助につながるよう資金提供の立場からコンサルテーションも行うべき。
- 民間企業の活動、特に教育訓練能力と雇用創出に期待している。雇用の創出は現状の人口増加(特に若者の増加)を考慮すると重要な事だと考える。
(コメント)
我々フォーラムメンバー間のこれまでの議論でも、雇用の創出(直接雇用/販売チャネルへの現地起業家の参画)と教育訓練は、営利企業が利益と社会問題の解決を両立する為の必要条件として挙げられている。
(個人的には、営利企業による被雇用者の教育や現在日本が留学生を受け入れている高等教育だけでなく、長期的に広い影響を与えるだろう初等教育を普及させる事が産業の発展、雇用機会の創出や獲得、さらに貧困の改善につながる根本的な対処の1つだと考えるので、この部分での貢献に期待したい。)
雇用の創出や教育訓練は企業活動、国際機関、NPO、NGOによる活動、現地政府や先進国政府関連諸機関の活動に共通の課題と言える。企業が戦略上パートナーと組む場合にはこのような共通の課題を多く(強く)持つ事で利害関係がより一致し高いパフォーマンスにつながると考えられる。従って、共通課題、目的が一致しない課題それぞれを整理する事も今後の調査項目として考慮しておきたい。