2009年11月24日火曜日

Net Impact 2009 その1: マイクロファイナンスの現状と未来

next billion 11月17日付エントリーから。

「マイクロファイナンスを超えて-開発への新たなナレッジとモデル"Beyond Microfinance: New Knowledge and Models for Development"」と題するパネル討論で、商業化(commercialization)が急速に進み、拡大を続けるマイクロファイナンス機関(MFI)に関し、すでに成長は過度なのかいまだ不十分なのか、という視点から4者が意見を交えた(以下、要約)。

1)David Maxson, Accion's Frontier Investments Group (マイクロファイナンス事業の新たなモデルへ投資する投資ファンド会社)
「MFは、1.0から2.0へ移行する産みの苦しみを味わっている。MFIへの投資事業領域では、単に流動性(資金)を提供するだけのモデルを超える、新たな事業スキームが続々と生まれてきている。」

2)Gil Crawford, CEO of MicroVest Capital Management (米国で最も古いプライベートセクターのMF投資会社)
「対MF投資の資金量増加とMFI商業化の傾向は急激であり、行き過ぎの感がある。昨今のMFの焦げ付き表面化は氷山の一角に過ぎず、熱狂に浮かされた資金流入による安易な貸付が行われている。MFIの破たんは近い将来起こり得る。また、MFIの収益事業化(商業化)は、不十分な企業統治と癒着を生みだすだろう。」「コンシューマーグッズ(一般消費財)の販売や、消費者や中小企業向けローンにマイクロファイナンスを使うのは危険だ。それらは本来のMFの得意領域ではない。」

3)Alex Counts, President & CEO of the Grameen Foundation USA
「そんなことはない。あまり心配し過ぎる必要はない。革新と失敗が繰り返されることは自然なことであり、MFには多くの自律的な軌道修正の力が働いている。昨今話題になる複数のMFIから貸し付けを受ける問題はうわさの域を出ない。とはいえ、そうした事例が報告されたインドのある州では、89%のMF利用者は単独のMFIを利用、残り11%の大半は二つのMFIから貸し付けを受けていたというのも事実。MFが成長し商業化が進むにつれ、個々のMFIは自らの目的が貧困の解消(poverty alleviation)にあるのか、利益の創出(profit generation)にあるのかを明確に宣言しなければならない。」「各MFIが取り組むとよいのは、非財務的な商品やサービスを提供しようとする組織を併設し、それとMFとの相乗効果・連携を積極的に引き出すことだ。」

4)Henry Gonzalez, Vice President at Morgan Stanley’s Emerging Markets Debt Group and former founding member of its Microfinance Institutions Group (毎年2500から5000憶円といわれるMFIからの資金需要を受けとめるため、MFIへの投資を証券化)
「おおむね現状を肯定的に受け止めている。MFには現在二つのトレンドがある。一つは営利事業としてMFを営むMFIの数が増加していること、二つ目は、健康と教育が経済開発に強く結び付いていることを理解する専門領域特化型投資ファンドが増えている、ということだ。先のパネラーが指摘する通り、各MFIが自らの目的を明らかにすることと、より確固たるガバナンスの必要性には大いに同意する。」「まずは各MFIが提供するサービスの種類を多岐に広げることが先決。」

MFの世界では、新たな投資家やMFへの投資モデルおよびMF事業モデルが続々と生じる一方で、それらの活動が厳正な評価の目にさらされるという局面がしばらく続きそうである。


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