AAPBS*の半期会合でBOPでの事業戦略に関し、研究と教育の両面からいかにアプローチすべきか、という論題で発表する機会があった(フィリピン・マニラ)。発表のタイトルは“Strategic Management at the Base of the Economic Pyramid:The Pursuit of Sustainable Competitive Advantage Through Integrating Social Impacts Into the Equation”
内容としては
1.学術研究の視点から、既存の戦略・国際経営領域の理論の応用可能性の確認
2.企業にとってBOPに取り組む意味・動機は何か
3.成功のための要素
4.教育プログラム(KBSでの新科目)事例
など。
その後の質疑では質問が沢山出たが、印象に残ったものは、あるメンバー国からの「なぜ、まず自国の中で貧困解消のための事業に取り組まないのですか?」というもの。少々返答に窮した。「たしかに日本にも『貧困』は存在します。しかし、相対的貧困と絶対的貧困は区別して考える必要があり、例えばBOPでの年収と日本の生活保護世帯の受給額(先のエントリーおよび下記注**参照)を比べれば、1研究者としての関心はより経済力・生活力へのニーズの高いBOPにあります」、と答えるしかなかった。
質問の背景には、自らの国の問題は自ら解決したい(すべき?)という思いがあるのかもしれない。また、自国経済発展のためには、現在成長中の産業セクターへの傾斜投資が生じて当然であり、国レベルの資源配分という視点からは、BOPにおける事業と経済力の発展は優先順位があまり高くないのかもしれない。自国の貧困問題が他国の者によって議論されることへの複雑な心境もあるのかもしれない。微妙だが重要な感覚の違いを感じた会合だった。日々学習するばかりである。
パキスタンのビジネススクールから派遣されてきた教員お二人(financeとlawの研究者)と知り合ったのは収穫だった。ちなみにAAPBSの年次総会は、今年10月慶應義塾大学(ビジネススクール)主催で開催される。
**例えばBOPの中央値であるBOP1500ゾーンの人々の暮らしぶりは、購買力平価で換算すると、2005年の日本の物価水準の下で、1人当たり年間21万円、月17,600円、1日当たり579円、4人家族では年間84万円、月7万円で生活する感覚である。ちなみに日本の生活保護支給額は東京都在住31才独身世帯で月13万7,400円、4人家族で月34万4,990円(2005年実績)。
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