「日立総研では、特にBOP 層(Base of Pyramid)における事業戦略のあり方について、さまざまな国における事例を基に研究を行っている。」
日本の大企業自身がBOPの事業潜在性を真剣に研究し始めている。これまで紹介される日本企業の事例は、ここ1-2年「BOPビジネス」に日本での注目が集まるはるか以前から取り組んできた事例が多かった。そうした中、改めて「BOP」に着目した新たな取り組みが生まれ始めた、ということだろうか。
そもそも日立製作所の企業理念には「地球社会の基本的課題の解決のために、社会やお客さまの期待に対して積極的に応え、イノベーションを生み出していくこと。」という文言があり、これはまさにBOPにおける貧困等の諸問題解決にも適合すると思われる。
既報の通り、この9月に発表された経産省によるフィージビリティスタディ支援事業において、日立製作所(日立ハイテク)は「太陽光発電装置による社会課題解決型事業(インドネシア無電化集落での電気供給)」が採択されており、取り組みが今後本格化する方向が感じられる。
同社CSR報告書によれば、上記の他に日立建機によるカンボジアでの地雷除去機(アタッチメントを変えることで通常の建機としても利用可能)を日立OBによるNPO「豊かな大地」を通じて運用している件が報告されている。この地雷除去のプロジェクトは非常に社会的意義が高く、かつ本業との関連度が高い。これをどのように本業の収益につなげるのか、工夫が期待される。
<感想>
日本の伝統的大企業には、BOPへ挑戦する経営資源が蓄積されている。特に技術力と資金力である。これまで先進国市場向けに蓄積された高度な技術は、そのままでは高スペックすぎるとしても、その開発途上で培った技術要素の一部は経済的社会的制約条件が非常に厳しいBOPにも活用可能かもしれない。まさに持続的イノベーターの立場から、いかに破壊的イノベーションへ挑戦するか、という格好の課題をBOPは突きつけている。すべての企業が成功できるわけはない。先行者のリスクを取れる日本企業は、欧米中韓印企業の後塵を拝することなく、積極果敢にリアルオプション的小規模投資を始めるべきだろう。
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