2010年6月9日水曜日

企業と社会的価値の関係(その2):持続的競争優位の源泉と裁量的責任

ひとつ前のエントリーで、企業が社会的価値を追求する場合、それは一段上の文脈の中で捉えてはどうか、と書いた。だが、ここで誤解されないように指摘したいのは、そうしたBusiness Call to Actionに署名する企業には限りがあるだろうし、たとえ署名しても宣言の趣旨に沿った実効性ある事業活動を行う、もしくは行えるとは限らない、という点だ。これは本フォーラムの2009年10月21日の第3項「『BOP』市場における利益と持続性の確保」は、すべての企業が取り組むべき、もしくは取り組める、性質のものではないで指摘しているように、貧困削減を伴う営利事業は、おしなべてすべての企業に対し、制度化された社会規範として取り組みを奨励できるたぐいのものではない。

この種の事業への取り組みは、Carroll(1979)による企業の社会的責任分類に基づけば、第4分類の「裁量的責任(discretionary responsibility)」を包含するもので、あくまで個別企業の選択の問題となる。分類の定義によれば、たとえこの事業に取り組まなかったからといって、「非倫理的である」と非難されることにはならない。

私の専門分野である戦略理論の視点から述べれば、企業が貧困解消を伴う収益事業に取り組むべき場合は、それがその企業の持続的競争優位の源泉となりうるときのみ、ということになる。この点については、Porter and Kramer (2006)*等をベースに厳密な議論を必要とするので、改めて論文等で世に問うことにする。

*Porter ME, Kramer MR. 2006. Strategy & society: the link between competitive advantage and corporate social responsibility. Harvard Business Review December 2006: 1-13.

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