資本金は同じ10万ドルだが、グラミンユニクロの場合はバングラデシュでの縫製事業本体での投資額(800万ドル)と比して非常に小さく、現地での企業市民としての資格を取得するという意味合いがより強いと思われるが、雪国まいたけの場合は、緑豆の生産量確保が主たる(全てではない)狙いで、当初から大規模農場(500-1000ヘクタール)で栽培し、約900名の雇用を生むという。また、グラミンの出資は25%で、ユニクロとのケース(1%)よりもはるかに多い。その背景は知る由もないが、外から眺める限りにおいて、グラミンはこの事業により実質的意義を感じており、関与度も高いことが示唆される。
もちろん、本件もグラミン流「ソーシャルビジネス」であるから、当該事業からは一切株主に配当されず、利益はすべて事業に再投資されるのがルールだ。
私は、グラミン流のソーシャルビジネスは配当が投資家になされない点で、新たな資金を吸引しづらく、スケールアップに限界があるのでは、(配当を行う場合と比べて)、と考えてきた。そしてこの点に関する考えはおそらく変わらない。だが一方で、この「ソーシャルビジネス」を金銭的リターンを直接得る源泉と捉えずに、安定的に原材料を調達する機能と考えれば、なるほどこの形式にも活用余地があると感じられる。マジョリティ出資者である雪国まいたけには、配当こそ皆無だが、安定的で相対的に安価な原材料確保という便益や貴重な学習機会、そして「ソーシャルビジネス」であることの対価としてグラミンとの関係性(国内販売での認知度と企業イメージ)が確保される。
配当は行わなくとも、利益の再投資や増資によって、生産機能としての「ソーシャルビジネス」をスケールアップしていく、という活用法である。ただし、生産物の買い取り(移転価格)がフェアートレードの精神で行われなければならないのはCSRとして当然のことである。
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