第1は「事業戦略」である。すなわち、いかに当該BOPビジネスそのものを着想し、成功確率を高める資源配分を実現できるか、
第2は「全社戦略(コーポレート戦略)」である。すなわち、当該BOPビジネスが全社事業ポートフォリオの中で果たす役割、すなわち他事業との関連性や全社レベルの無形資産(コア・コンピタンス、評判やイメージ)の活用・蓄積にどう関わっているのか、
である。
ややもすると、BOPビジネスに関する議論は事業戦略に傾斜しがちか、もしくは事業と全社のレベルを渾然一体として議論する傾向がある。だが、製品事業レベルで多角化している企業の場合、全社戦略をそれとして議論することの重要性は改めて指摘するまでもない。
全社戦略レベルの議論を伴わない場合、せっかく個別事業としては成功しつつある(もしくはその見込みの高い)ビジネスが、全社レベルでは高い評価を得られなかったり、少しの財務的許容度しか与えられなかったり、ということに陥り、本来は企業価値に結実する事業をみすみす見逃してしまう(機会損失の)恐れがある。
野村総研の「ロングタームイノベーション戦略(下)」のp.59-60には、この全社レベルでの位置づけの重要性が指摘されている。該当する部分を引用すると、「構想の初期段階において、全社戦略やグローバル戦略における事業の位置づけ、事業ポートフォリオ上の事業の位置づけを明確にすることが重要である。」「より具体的には」「経営的目的としては、単体で利益を上げる事業とするのか、あるいは他事業にもたらす副次的効果の重要性を重んじるのか、それとも、単体での高い収益性は求めないが、一方で関連事業の将来市場を創造し、ブランド価値を高めるなど、全社戦略におけるシナジー(相乗効果)や間接効果を追求する事業なのか――こうした位置づけを経営の意思として明確にすることが求められる。」
BOPビジネスの全社的位置づけを決するための評価・検討プロセスに関しては、さらに詳細な議論を行う必要があるだろう。
㈱イースクエアのオピニオンペーパー「BOPビジネス(途上国市場)ネットワーク構築」(公開)には、「何の為のBOPビジネスか?」という文脈の下で「BOPが生みだす企業価値」というチャートが登場する。(下図。同ペーパー2ページより引用) このチャートは、個別事業レベルと全社レベル(表中コーポレート)の意義、そしてそれらを時間軸と合わせて、BOPビジネスがどのような経路をたどって企業の経済的価値に資するか、その整理を試みている点に価値がある。また、すべての項目が企業の経済的価値(企業価値)へつながるという(企業としては当然の)前提で書かれている点も戦略策定の観点から適切である。ただし、この表は、これら複数の効果(経路)から「どれを重点的に選択するか」ということではなく、そのすべてに関して検討対象にすべきものと解する。
ただし、本フォーラムでは「CSR(企業の社会的責任)」を「本業の事業プロセスにおいて社会・環境に対して負のインパクトをもたらさないこと」、と藤井俊彦氏の定義で理解しており、明らかにイースクエア社よりも限定的にとらえている(と思う)。
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