2009年10月29日木曜日

BOPにおける事業成功の条件とは(WSJ)

コーネル大学が主導するBOPプロトコルの研究員による寄稿。P&Gによる浄水剤事業(製品名「PUR」)が商業ベースでは失敗し、結果的に慈善事業として無償配布する形になった事例を挙げ、それがなぜビジネスとしては失敗したかを解説しながら、BOPにおける事業成功の条件を説いている。

条件1:教育的キャンペーンを通じて、人々の価値観と行動を変える

 P&Gは、浄水剤を小袋に入れて一袋10セントで販売しようとしていた。新市場開拓時に必要と思われる現地ニーズの確認も周到に行った。だが、アンケートやインタビューではその種のものがあればお金を払ってでも買いたい、と回答していた人々は、いざ購入の場面に遭遇すると、様々な現実(10セント分の楽しみを捨てることへの抵抗)の前に購入をためらった。やはり利益の上がる市場はそこにはなかったのである。

条件2:事業をゼロから発想してから実施するまでの事業開発のプロセスすべてに、現地の人々を参画させる

 当事者意識を持ってもらうことが重要という話。大豆たんぱく製品のThe Solae Companyのインドでの成功は、極力現地の人々(現地の主婦層)を事業開発段階に巻き込むことによって普及が図られた。

条件3:製品バリエーションを可能な限り多く提供する

 市場ニーズに不確実性が大きいBOPでは、事前に正確にニーズをくみ取ることは難しい。ある意図をもった製品でも、当初の意図とは全く違う用途に用いられることもしばしばである。そうした潜在ニーズを逃さないためにも、コスト構造が悪化しないように考えながら可能な限り多くのバリエーションを提供し、その中からヒットが生まれることを目指したり、様々な用途を示すことが大切である。
 NPOながら、アフリカで多様なバリエーションの足踏みポンプを示し、拡販に成功したKickStartの例がある。また、先に営利事業としては失敗したP&GのPURも、その用途が困難や不衛生を軽減するというマイナスを埋める価値ではなく、その製品を使うと人々が集って料理する楽しみが増えたり、料理がずっとおいしくなったり、もっと味の良いジュースが飲めたりという、生活がもっと楽しくなるというプラスの価値を訴求すべきだった

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