2009年8月1日土曜日

「ネスレ 不況に強い『底辺』戦略」

日軽ビジネス 2009年5月18日号

戦略分析の記事として秀逸。詳細はオリジナルを読んでいただくとして、記事はネスレのインドにおけるPPP(popular position product、低所得者層向け小分け商品)戦略の中味だ。「モガ・ミルク地区」と呼ばれる地域で、50年かけて重要原材料としての牛乳の現地調達を農家と共生を図りながら続け、信頼関係を構築してきた経緯が詳細に描かれている。その中で、印象に残ったフレーズを以下引用する。

■現地のミルク回収責任者「50年近くも村にキャッシュフローを生み続けたことが、農家とネスレの間に強固な関係を作り上げている。」「ミルクを届ければ、必ずカネに換えてくれる」という信頼の絆
■「(牛乳の)生産性と品質を高めるために、ネスレは村の女性への教育にも力を入れる。この土地では家畜に餌を与える仕事は女性が担うのが一般的で、女性を対象に牛の健康管理などについて定期的に勉強会を開催しているのだ。」
■ネスレ・インディアのローランド会長「モガの活動はチャリティーではない。そのすべてが農家との信頼関係を強め、ネスレが利益を上げ続ける基盤となっている」「農家、その妻、そして子供たちが、何世代にもわたってネスレとの絆を強めていく。」「社会階層ピラミッドの底辺にいる人たちも、日々、上へ上へと動いている。だから、今から低所得者層にブランドを浸透させておく必要がある。」
■「モガと同様の取り組みは中国や南米、アフリカなど、29カ国で展開されている。」
■「ネスレは10年先、20年先の巨大市場を見据え、その準備をしたたかに始めている。」

最後に記事は、ネスレの資本政策に言及している。当初はスイス在住者に株式保有を限定していたが、事業のグローバル化に伴い、ロンドン、パリ、東京などに上場、しかしニューヨークへは株主の短期志向を考慮してADRのみにした。だが2005年には再び上場市場をスイスに限定し、他市場からはすべて撤退を決定する。

ここまでの長期的視野で、全社的に明確な方向性(戦略、およびそれに連動する資本政策)をもって持続的にBOP市場の開拓に取り組んでいる日本企業はあるのかどうか。その事例を探している。


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