2009年8月20日木曜日

マザーハウス

 すでに「社会起業家」として広く知られた山口絵理子氏の経営するバッグ製造販売会社。現在HISと提携し、バングラデッシュでのバッグづくりツアーが企画されている。
 創業の経緯や苦難は同社ホームページ氏の著作に詳しい。
 同社のビジネスモデルは、バングラデシュ現地での原材料調達と鞄製造、そして日本における販売、である。現地での雇用創出およびフェアトレード、社会性の高い企業理念という観点から、評価・注目されている。
 「営利の企業活動と貧困解消」の関係を議論する本フォーラムの趣旨からしても、同社の活動は注目に値する。
 そこで実はかねがね気になっているのが、「BOPビジネス」の定義である。通常は、いわゆるBOP層を対象に、そこで雇用と消費の両方を促進するビジネスを実質的に意味していることが多い。ビジネスモデルとしては、HLLのProject Shakti、グラミンダノン(これは非営利だが)、グラミンフォンのビレッジフォンプロジェクトなどが典型である。そこではマイクロファイナンスを有効に活用しながら、資金調達力のない農村部の女性を個人事業家として自立させるとともに、彼女らによって販路も同じ農村部で拡大していく、というモデルである。
 しかしながら、製造者・原材料購買者としてのみBOP地域に関与し、必ずしも販売はしないが、雇用(すなわち収入)を生み出す活動もまた、「営利の企業活動を通じた貧困解消」そのものである。企業は極めて低水準の労働コストによる製造で原価を抑えるとともに、主に先進国市場を販路とすることで高価格での販売が可能になる。こうなると、いわゆるBOP戦略でバリアの一つとされるAffordabilityの壁は乗り越える必要がなくなる。
 こうなると、次のコラムで詳述するKarmani(2007) "The Mirage of Marketing to the Bottom of the Pyramid: How the Private Sector Can Help Alleviate Poverty"の論がより説得力を持ってくると思うのだが。
 


0 件のコメント:

コメントを投稿