2009年8月20日木曜日

マイクロファイナンスと生産性向上の関係:過剰な傾斜は生産性向上を妨げる?

Karnani(2007)には、Banerjee and Duflo(2007)を参考文献として引用しつつ、マイクロファイナンスを受ける「個人起業家」について興味深い記述(p.104)がある。

「マイクロクレジットで資金を借り入れる個人顧客の圧倒的多数は、競争優位などという概念とは程遠い、生きるためのぎりぎりの活動に追われている。
小事業のオーナーとしてのそれら貧困層の人々は、たいていの場合専門技能もなく、複数の事業を掛け持ちしているのが常である。それらの仕事の多くはあまりに小規模であり、平均的に見て雇用する従業員を持たないビジネスである。保有する資産も極めて小さい。
低スキル、小資本、そして規模の経済の不在から、これら個人事業は参入容易で競争の激しい領域の商売である。さらに、生産性の低さゆえに得られる利益もごくわずかであり、事業主を貧困から引き上げることはできない。
こうした貧困層が『快活で創造性に富む起業家』である、というプラハラッドの主張を支持する証拠はあまりに少ない。」

「たいていのマイクロクレジット利用者は、自らの意思によって『小規模個人起業家』になる道を選択したわけではなく、それなりの給与が得られる工場労働があれば喜んでそれに従事するだろう。我々は貧困層の人々を『快活で創造性に富む起業家』である、と夢想するべきではない。」

このあとKarnaniは、マイクロクレジットへの過剰な傾斜は、規模の経済性や生産性向上の観点からむしろ事態を悪化させる可能性すらあると指摘し、「(貧困の解消には)単に雇用を創出するだけでは不十分であり、人々を貧困から引き上げるに十分な賃金を実現させる生産性を実現させなければならない。」と述べる。

上記の生産性が達成されない限り、working poor (就業しているにも関わらず、一日2ドル以下での生活を余儀なくされている人々)は減少しない、として下記のテーブルを示す。


(Karnani 2007, p.106)







「インドは、この点において(中国と比べて)凡庸な成果しか出せておらず、アフリカに至っては惨憺たる状況である。このインドにおける生産性向上の低さの一つの原因は、同国企業の規模の経済性が不十分な点にある。インド企業の平均規模は、他の発展途上国企業の10分の1に満たない。」




0 件のコメント:

コメントを投稿