Karnani(2007)はPrahalad (2004)をまず下記のように総括する。
<KarnaniのまとめによるPrahalad(2004)の要点>
1)BOP市場には、多くの手つかずの購買力が存在する。民間企業はそれら貧困層市場に販売することにより、著しい利益を上げることができる。
2)貧困層市場に販売することにより、民間企業は繁栄を貧困層市場にもたらすことができ、その帰結として貧困根絶への助けとなることができる。
3)大規模な多国籍企業(MNCs)は、この貧困層市場への販売において、主導的な役割を果たすべきである。
続いてKarnaniは、Prahalad(2004)はBOPの販売先市場としての有望さと大規模MNCsの役割を誇張しているという根拠を数々指摘する。
最終的にKarnaniは、BOPという概念を「生産者としてのBOP」と「消費市場としてのBOP」という二つの概念に分けて考えたほうが議論がしやすくなるという。そのうえで、民間セクターが貧困解消に寄与できる代替アプローチとして、BOPを主に消費者市場として認識するのではなく、生産者(producer)として注目し、さらに彼らが生産したものを購入することの重要性を強調する。そしてそれこそが最も重要なこと、すなわち「貧困層の収入の現実的増大」につながると主張する。
先のエントリーで触れたマザーハウスは、まさにこのKarnaniのパターンに合致するし、実はこのモデルは発展途上国に対して低コスト労働を求めて生産を移転してきたこれまでの多くの多国籍企業の行動と、少なくとも表面上は変わらないように見える。これらの生産・購買活動を、搾取か、もしくは共生による貧困解消かに二分するのは、まさにそこで得られた潜在的利潤の配分比率にある。
ところで、この「生産拠点としてのBOPとそこからの購入・調達」が結果的に貧困解消に役立つというモデルは、考えてみれば多くの先行する発展途上国が先進国の生産拠点として低コスト労働力を提供し、輸出によって経済を発展させ、先進国へと脱皮してきたモデルそのもののようにも思える(日本、韓国、シンガポール、中国、マレーシア、タイ等々、、、)。
結局Karnaniの論文の重要性は、企業が営利の本業を通じて貧困を解消するというゴールに対し、伝統的にBOPビジネスの事例として指摘されるモデルA(後述)以外に、モデルBを提示しているところにある。
モデルA:多国籍企業が自社リソースを使ってBOP市場向けの製品・サービスを開発し、自力開発した現地販売チャネルか、現地NGOとタイアップしながらマイクロクレジットで資金を得た小規模個人事業家をチャネル化して販売する。(HLL、グラミンフォン)
モデルB:多国籍企業が技術と相当規模の資本をBOP市場へ投入し、BOP層の人々を生産従事者として雇用し(もしくは農産品等を調達し)、それを富裕・中間層を含む同国市場で販売するか、輸出する。(Amul、e-Choupal、マザーハウス)
次のエントリーに続く。
Karnani, Aneel (2007) "The Mirage of Marketing to the Bottom of the Pyramid: How the Private Sector Can Help Alleviate Poverty" California Management Review, v49. n4. p. 90-111.
Prahalad, C. K. (2004) "Fortune at the Base of the Pyramid: Eradicating Poverty through Profits" Wharton School Publishing: Upper Saddle River, NJ.
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