BOP領域での通信技術セクター(特に携帯端末とネットワークインフラ)の重要性は言うまでもないが、アフリカにおける中国通信機器メーカーのプレゼンスが一挙に高まっている。日本企業の影はほぼない。
<ZTE 海外売上高比率 地域別>
(ちなみにNEC、富士通の海外売上高比率はそれぞれ15.4%と31%。ZTEは60%。2010年度実績。NECの「日本以外の区分に属する主な国または地域」にアフリカは記載なし。富士通の場合、欧州・中近東・アフリカを総称してEMEAとし、これが17%。)
上表に見るように、ZTEはアフリカ大陸での売り上げが中国を除くアジア地域の売上とほぼ肩を並べている。同社ショールームの説明員(20代女性)は誇り高く堂々と企業紹介をしてくれたが、なんでも「アフリカ全土にZTE社員が10,000名いて、うち3,000名が中国人」とのこと。圧倒的コミットメントである。(ZTE社 従業員総数7万名 2011年現在)
彼らの戦略を記述した関連記事を下記に見つけた。
"Are Chinese vendors entrenching themselves in Africa?" Developing Telecoms Nov.9, 2011
ZTEの場合、中国の政策銀行であるThe Export-Import Bank of China (China Exim Bank、中國進出口銀行)およびThe China Development Bank (CDB、國家開發銀行)からそれぞれ$15B、$10Bの与信枠を与えられている。HuaweiもCDBから$10B(2005年)、$30B(2009年)の与信枠を得ている。こうした財務力を背景に、ZTEはアフリカ諸国で欧州の競合(EricssonやNokia Siemens Networks)よりも30-40%安い価格を提示し、Huaweiも5-15%安い価格を提示しているという。契約条項修正(例えば値引き)の意思決定を24時間以内に行うというスピード感も備えている。こうして欧州メーカーはサブサハラ市場での売上減少という事態に見舞われている。
ZTEの侯為貴会長は、2015年をめどに海外売上高比率を70%へ、現在10%程度の先進国市場を20-30%に引き上げたいと語っている。途上国市場で培った低コスト・低価格を武器に、リバースイノベーションで先進国市場の本格的攻略が始まるのか。
下記は欧中日の主な通信機器メーカーの株式リターン。どのように見えるだろうか。
表中の証券コード:
ZTE=HK:763, 富士通=JP:6702, NEC=JP:6701, Siemens=DE:SIE, Nokia=SE:NOKISEC, Ericsson=SE:ERICA
<通信機器セクター主要企業の株式リターン:
リーマンショック後のリカバリー>
注:上記グラフで、一番上の黒線がZTEの株式リターンである。2010年5月にリターンが急減しているのは、2:3で株式分割されたから(例えば200株持っていれば無償で300株に増える)。よって右端最終のリターン水準はほぼ+100%となっているが、実質的には+200%(3倍)。他社を圧倒している。