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2013年4月19日金曜日

論文: 営利組織と非営利組織間の戦略的提携を分析単位とする

 本ブログの関心を実務的関心と学術的関心とに分別すれば、後者の主要なものは「既存戦略理論が包括的ビジネスという現象をどの程度説明し得るのか。そしてより妥当な理論は何なのか。」というものである。

 すなわち、本ブログの背景には、「営利企業が社会的価値の創出を意図する際に、それをどのように理論的に説明するか」という、企業理論(theory of the firm)に関わる重要な研究上の問いが存在している。

 今回の論文(リンク下記)の問題意識は以下の通りである。これまでの戦略研究において、「戦略的提携」といえばそれは複数の営利企業間のものであることが暗黙の前提であり、その下で理論構築、理論的説明がなされてきた。無論クロスセクターアライアンス(セクター横断的提携)に関する若干の文献は存在する(下記論文参照)のだが、分析単位(unit of analysis)が必ずしも個別営利企業(戦略理論のそれ)ではない。


岡田正大(2013)「開発途上国低所得市場(BOP層市場)への参入における戦略的提携の形成について」慶應経営論集30(1): 1-39. (2013年3月31日発行)     
PDFファイルはこちら。 Abstract in English: here

 この論文のリサーチクエッションは、包括的ビジネスでは常態化している営利組織-非営利組織間の「戦略的提携」が既存戦略理論によってどの程度説明可能であり、説明不能の部分があればそれは何であって、それを説明するためにはどのような理論的修正が必要かを明らかにするものである。網羅的理論サーベイと理論構築、および事例に基づくその検証を行っている。事例はタンザニアを二度訪問して取材したディーライトデザイン・タンザニア(営利企業)と英国のソーラーエイド(NPO)の間の提携協力行動である。

 結論として、営利企業が非営利組織と提携・協力する際には、営利企業に「社会経済的収束能力(socio-economic convergence capacity)」(詳細説明は論文に譲る)がどの程度具備されているかが、パフォーマンスの良し悪しに対して重要な影響を与える、という示唆が得られた。


2012年7月9日月曜日

IBMはタンザニアで、サムスンはナイジェリアで


週刊アフリカビジネス第93号(有料レポート)によると、

●IBM: タンザニアの通信科学技術省と業務提携し、同国における技術活用の促進による経済発展に関し提携を結んだ。IBMのプレスリリースはこちら。

●サムスン電子:ナイジェリアにおけるソフト開発の中心的存在であるCo-Creation Hub (Cchub) に対し、様々な支援を行う旨のMOUを締結。


ちなみに上記Cchubの支援企業(パートナー)は下記の通りで、米国、北欧、アフリカ等多国籍の非営利財団やIT企業が名を連ねる。そこに今回サムスンが加わった。日本のIT企業は?












詳細は週間アフリカビジネス第93号(有料)参照。

DHBRオンライン新連載第1回 「包括的(BOP)ビジネスとは何か特別なもの?」

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー・オンライン

【新連載】第1回:包括的(BOP)ビジネスとは何か特別なもの?

がスタートしました。戦略理論の視点から、企業が包括的ビジネスに参画するか否かの判断基準を多元的に議論するコラムです。

http://diamond.jp/articles/-/21237

2012年5月23日水曜日

ネスレのアフリカ戦略


Image
(Nestle南アのウェブサイトから)

「徒歩で、自転車で、タクシーで:ネスレはアフリカで事業拡大(By Foot, by Bike, by Taxi, Nestle Expands in Africa)」と題するこの記事(2011年12月1日)は、先進国や新興国中間層以上向けでは当たり前のモダンチャネル(卸しと量販店からなる流通インフラ)が存在しない領域(すなわち包括的市場もしくは低所得層層市場)での同社の取り組みを紹介している。以下、記事の要点。

■アフリカのチャネル:
アフリカでは都市から離れて暮らす人口も多く、道路自体もあったりなかったりする。一般の多国籍大企業が想定するような供給チャネルは存在しないし、物理的・経済的に構築できない。

■ネスレの「どぶ板営業」部隊:
南アのネスレ販売代理店であるデズモンド・マグワンバン氏は、手持ち金はタクシー代のみ、携帯2台、それに注文票の束を持って営業活動をしている。ヨハネスブルグでも最も治安の悪い地区である。「ここは私の金鉱だ」と同氏。他の通常の営業マンは首都の巨大スーパーの棚をネスレ製品で埋めるべく活動しているが、マグワンバン氏以下80人の営業スタッフは、南ア全土の極小店舗をターゲットにしている。それらの店舗では多くの場合小分けしたネスレ製品(ベビーフード、クリームパウダーなど)が売られている。こうした営業活動により、低所得層でのネスレ製品の認知度と人気は確実に高まっている。

■アフリカ市場の成長性:
ネスレがここまでの努力をするのにはわけがある。市場の成長性である。アフリカ開発銀行によれば、現在のアフリカ大陸人口の61%はいまだ一日当たり2ドル以下で生活する「貧困」状態にあるが、2060年までに、アフリカの中間層(一日当たり所得が4-20ドル、年間1000-5000ドル)は11億人に達し、アフリカ大陸人口の42%を占めると推定される。またIMFの推定によればサブサハラ地域の経済成長は2011年が5.25%、2012年には5.75%と予測され、これは地球全体の年平均成長率4%を上回る。

■他有力企業もアフリカにコミット:
ネスレだけではない。有力食品メーカーは一斉にアフリカ強化に向け動きを速めている。クラフトフーズは、バン部隊を仕立てて、南アの各地方の町の路上小店舗に直接供給するネットワークを構築中である。サムソン電子は太陽光発電で充電される電話を電力供給のままならないケニアやナイジェリアの地域に導入済みだ。コカコーラは小規模店舗への供給のため、アフリカ15か国3200の流通拠点を活用しているという。

■ネスレのアフリカ事業規模:
ネスレは新興国市場(含む包括的市場)からの売上比率が現在の30%から、2020年までには45%に達すると予測している。同社のアフリカでの売上高は、2010年に6.4%増大して33億スイスフラン(約36億ドル、約2,880億円)に達した。一方同期間に同社の世界市場全体の売上成長率は2%だった。世界総売上高(930億CHF)に占めるアフリカの割合は3.5%。

■ネスレのアフリカ投資:
過去5年間$850Mを投資し、現地製造、流通網の拡張、現地顧客の好みに合った味の開発を進めてきた。ヨハネスブルグの「どぶ板営業」部隊では、小規模店舗への売上が2011年6月から8月までの2ヶ月で20%増えた。また2011年の1-8月で、南アの小規模店舗でネスレ製品を売る店舗数は2倍に増え、ほぼ4500店に達した。ネスレの南ア販売責任者は現状をして「今の我々は計画の半分に達したところ」と言っている。

■ネスレ製品の販売営業の実態:
どぶ板営業で価格交渉は日常的である。商店主のバルア氏によれば、「ネスレの製品は品質も良いが値段も高い。チコリの根の飲料Ricoffyなどは、値段を下げるとあっという間に売れる」という。他のナイジェリア人の商店主は、ネスレ製品専用の棚を設けている。マグワンバン氏との交渉を通じ、この商店主は$450の注文に対して$30の値引きを獲得した。マグワンバン氏は売上の1%をコミッションとしてネスレから受け取るが、こうした値引きによって「より大きな金額の注文が定期的に取れるよう期待している」と語った。

■製品配送の実態:
こうした小口販売の配送は、そのほとんどが自転車によってなされ、これはネスレのアフリカ全土の配送の30-40%を占めるという。

■アフリカ・インドにおけるネスレの逆境:
ネスレの新興国事業も平坦ではない。ジンバブエのミルク事業では、事業の最低51%を自国の黒人が所有することを求める法律と取り組まねばならず、インドではボトル入り飲料水で競争に敗北し、撤退を余儀なくされた。そして70年代80年代、同社は有名な途上国市場での粉ミルク問題で不買運動を喫する。この経験から、同社は1981年、WHO(世界保健機関)による母乳代替製品の販売に関する規則を世界で初めて採択した企業となった。

■現地店舗の成長:
4年前、ヨハネスブルグのンジョマネ・ドリンクは掘立小屋だった。消費の伸びとともに、同店はマグワンバン氏からベビーフードを月$400仕入れるようになった。その店舗はいまや二部屋のコンクリート製ビルディングになった。

<解釈>
この記事を読むと、なぜ味の素が経営者のトップダウンでアフリカ市場に対してコミットしているかがわかる。サブサハラ・アフリカも、すでに世界企業の主戦場になってきており、そこに早期にコミットしないと、今後の世界市場における競争で不利になるとわかっているからだ。

2012年5月22日火曜日

NHK視点・論点「アフリカとBOPビジネス」と追加情報

5月21日放送。JICAアフリカ部次長 松下篤氏。
詳細にメモを取って視聴したので、以下、追加情報(矢印以下)を付加しつつ要点をまとめておく。

■BOPビジネスとは

1)現地の状況やニーズに合わせた商品を購買力に見合った低価格で提供することにより、消費者としてのBOP層の生活の質向上に貢献するもの⇒BOP1.0 (消費市場としてのBOP)
2)BOP層が生産・流通等に関わる事業者としてビジネスに関わることにより、雇用や所得が創造され、人々の社会的な機会と力(エンパワーメント)を生み出す⇒BOP2.0(事業パートナーとしてのBOP)
3)企業にとっての技術革新や事業拡大の機会。⇒リバース・エンジニアリング、市場創造
4)上記1)~3)の性質を複合的に有するBOPビジネスは、従来の社会貢献活動とは異なる。

■アフリカのBOP層:5億人


■アフリカの経済成長とその要因

実質5%超の年平均経済成長率を記録。この背景には、
1)内発的環境変化(政治経済の適切な運営に向けたアフリカ諸国・人々の行動変化):紛争解決や経済運営に関する政府機能(ガバナンス)の改善、および経済の周縁から中央への参画を希求する人々の意識変化(これにより初等・高等教育での就学率も向上)
2)外発的環境変化:天然資源や輸出農作物の価格上昇、中国・ブラジル等新興国によるFDIの増加(市場としての潜在性・魅力に誘引され)、および情報通信サービスの急速な発展(⇒人々の情報アクセス力の向上⇒内発的意識変化へリンク)

■従来のアフリカにおけるビジネス

 多国籍企業による資本投下で成立し、アフリカ発の製品が先進国の中間・富裕層向けに出荷されるか、アフリカのごく少数の富裕層向けに販売されるパターン。BOP層は市場の外部の存在。ビジネスには参画できなかった。

■アフリカにおけるBOPビジネス

 大企業のみならず、中小企業が主体となって、BOP層を取り込んだビジネススキームが登場。

■日本企業の事例:ウガンダのブッシ(Bussi)島ジャリ(Jali)村
ドライフルーツビジネス。村民300名の年間所得は$110(ウガンダ全体の平均年間所得$500)。子供の多くは栄養失調で、平均寿命は40歳強。現地のオーガニックドライフルーツプロジェクトと日本の中小企業のコラボレーション

⇒Jali Organic Associationと日本の㈱FAR EAST。Jali Organicは、ジャリ村のフルーツ資源を活用して経済発展を目指した同島出身のMuwanga兄弟が1995年に設立。これまで仲介業者に買いたたかれていた現地のフルーツを5-7倍の値段で買い取り、ドライフルーツへの加工を開始。FAR EAST社長佐々木敏行氏が見本市でBE ORGANIC社を仲介に商品を発見し、日本市場への導入を開始。経緯はジェトロのウェブサイト・同報告書
に詳しい。フェアトレードの一種。JETROの開発輸入企画の一つ。JETROによる開発輸入企画への支援は1件500万円。
⇒このJali Organicが、ジャリ村の生活向上を超えて、どこまで拡張性がある事業なのか、その意図も含めて一度調べてみる必要があるだろう。



神戸大三品教授のメッセージ

5月16日の日経朝刊32面(広告企画「選択の時代」)に、神戸大三品教授(専門:経営戦略)のメッセージが出ている。共感を覚えるので部分的に要約・加筆しておく。(⇒部分は岡田記)


■経営者個人の力量がものを言う時代
「社員に委員会を作らせて、事業展開の方向を考えさせる経営者がいるが、そういう経営者は降りたほうがいい。自分自身の責任でこれで勝負するのだという決断ができる経営者でないと務まらない。」
「情報を収集すること自体は重要ではない。情報収集主義からは脱却すべき。時代の節目では、過去の時代の節目に何が起きたのか、繁栄と衰退の分かれ目が何だったのかという大局的な時の流れを理解する目が重要である。」


■新興国におけるポジショニング
「こうした時代に必要なのは、既存事業へのこだわりを捨てるということ。中国などの新興国でも作れるもの、先方に賃金水準などから比較優位があるものにはこだわらないこと。」
「伸び盛りの新興国企業にも不得手なところが残っている。そこにポジションを見つけてすみ分ける必要がある。」
「新興国で出現しつつある中流階級向けの製品、ボリュームゾーンの製品については、日本の優位性はなくなっている。事業分野を絞り込み、その代わり、この分野では世界を制するというような戦略的意図が重要である。」
⇒新興国ボリュームゾーンは製品分野によってはすでにレッドオーシャン化している

■自社独自の経営資源・ドミナントロジックの重要性
「重要なのは『捨てる』という選択。現在一般には環境・エネルギー、医療・福祉が有望と言われているから、その分野に進出しよう、という意思決定の発想は誤り。これらの分野はどの国のどの企業も有望と考えている。」
⇒rent seeking behavior

「マクロの次元で事業選択するのではなく、自分たちのフィールドで、世界に伍してやっていける技術・市場は何なのかを考えること。」
⇒外部環境でなくコアコンピタンス、ドミナントロジックで。「世界」は「地球規模の市場」と捉えたい。

⇒仕事柄多くの経営幹部と包括的市場に関して議論する機会が増えたが、特にがっかりするのは一般的印象で「BOP市場はまだ早い」などと評論し、事業対象としての検討をはなから退けてしまう人がいることだ。包括的ビジネスへコミットするか否かはあくまで自社の経営理念や経営資源、ドミナントロジックとの兼ね合いで決まるものであり、個別企業の選択の問題である。包括的市場への関与が喫緊の課題ではない企業もあるだろうし、今こそ最大のエネルギーを割くべき企業もあるだろう。新興国市場と同時並行で進め、時間差アプローチを画策するべき企業もあるだろう。


2012年2月13日月曜日

三菱レイヨンが5大陸へ拡販

MSN/産経ニュース

同社のクリンスイ販売地域は、これまで日本・中国等のアジア圏15カ国に限られていたが、今後アフリカを含む5大陸すべてにわたる50カ国にまで本格的に拡大するという。もちろん、例えばアフリカでの展開がBOP2.0のように、バリューチェーン全域で現地コミュニティを包括するかどうかはビジネスモデル次第である。またそもそも包括的市場での販売を意図しているかどうかも詳細は不明だ。だが少なくとも、記事の文面からは、同社が地球人口70億人市場を想起した上で戦略構築しようとしていることが感じ取られ、その意味で重要な事例の一つと思われる。

クリンスイ(↓)



2012年1月2日月曜日

心地よい領域から踏み出して70億人市場へ:日経ビジネスオンライン

日経ビジネスオンライン記者の中野目氏に取材を受け、「地球上70億人を対象にビジネスを開拓する戦略的意図」の重要性を述べたインタビュー記事です。

日本企業が「包括的市場を含む地球全体的視野」に立って、本当に戦略を構築できているのか、というメッセージを投げかけています。

インタビュー記事ですので、反映できていない部分もありますが、補足するならば、70億人市場へ取り組む際に、戦略論上最も重要なのは、「自社独自の経営資源」「自社が最も得意なドミナントロジック」に着目することです。

2011年5月17日火曜日

「急拡大する『BOP』ビジネスへの参入に異議あり:日本企業は強みを生かせる『MOP』を目指せ」

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110506/219791/?P=1(無料会員登録で全編通読可能)

元花王会長の常盤さんのエッセーである。このエッセーをそのまま読むと、これはBOPとMOPを分断された市場ととらえ、MOP予備軍としてのBOPへも同時攻略が必要だという考え方が欠落しているようにも受け取れる。一見すると、日本企業のかつての成功モデルへの回帰を肯定しているように読める。
ところが、読み進むと、日本企業への認識がきわめて現実的で、なかば自虐的とすら言え、むしろ逆説的に日本企業の戦略不全に対する痛烈な批判になっているとも解釈できた。不思議なエッセーだ。

以下、同記事の要点。

日本企業の強みは歴史的に「高性能・高品質なのにリーズナブルな価格」という点にあり、これはBOPで要求される低品質低価格には整合しない。むやみにBOPを攻めては果てしない価格・コスト競争に巻き込まれて疲弊するだけである。

韓国中国企業は意思決定スピードや経営資源の組み換えが早く、変化の早い新興国市場への適応能力が高い。また、市場ニーズを把握するための「市場感性」にも長けている。一方、日本企業は「とにかくスピードが遅」く、「現地への権限委譲が不十分なためか、本社で時間をかけて議論することになったり、的外れな決定が下されたりしがち」なため、「結果として、韓国勢などに先を越されてしま」う。 (筆者注:これではMOPでも全く勝てないと思われるが。)

その結果、「日本企業は確かに技術では優れていても、この市場感性とスピード感では韓国などに見劣りします。」「残念ながら、技術で勝っていても、市場で、ビジネスで負けてしまう」。

よって、日本企業はBOPに攻め入るべきではなく、新興国中間層および先進国市場に的を絞り、「日本らしさ」を追求すべきである。

以上が氏の主張。

サムスン電子のアフリカ戦略

http://www.nation.co.ke/business/news/Samsung+seeks+new+market+in+Africa/-/1006/1160442/-/ywacv3/-/index.html
(Daily Nation, May 17, 2011)

(CIO East Africa May 17, 2011)

同社がナイロビで独自開催したサムスンアフリカ地域フォーラム(Samsung Africa Regional Forum)で、サムスン電子のアフリカ事業のリーダー、Park氏が述べている。

1)アフリカでの急速な業容拡大

2010年、サムスン電子はアフリカ事業で$1.23Bの売上を達成、これは前年比31%増である。アフリカは、同社の世界売上全体($135.8B)の0.9%にあたる。アフリカにおける版図拡大は、2009年と2010年の比較において、製品販売国数は15から42へ、流通業者数は32から80へ、サービスセンター数は18から36へ倍増している。

Park氏によれば、同社の目標は2015年までにアフリカ市場での売り上げを$10B(約1兆円)レベルに引き上げ、中国に匹敵する市場に成長させる計画だという。そのためには、2011年の成長率を前年比倍の63%、雇用者数も5000名に引き上げる方針だという。


2)組立工場とR&Dセンターの増設

現在同社はスーダン、南ア、ナイジェリア、エチオピア、セネガルにKD工場を保有するが、KD工場をさらに増設するとともに、新たにナイロビにR&Dセンターを設立する。R&Dセンターは、アフリカにおける「ひんぱんな停電を始めとする厳しい環境」を前提とした製品開発を担う。同社はこれまで22のローカルR&Dセンターを全世界に設立してきているが、アフリカでは初めて。

3)現地人材の育成プログラム

同社はまた最近になってSamsung Electronics Engineering Academy (SEEA)という、アフリカの将来を担うエンジニア養成プログラムを設立しており、現地の4校が参加する(すでに南アでたちあがり、ケニアへ拡大中)。これにより2015年までに10,000名のエレクトロニクス分野のエンジニアをアフリカで養成する方針。

4)アフリカ向け製品の拡大
本フォーラムで、サムスン電子はすでに開発済みのアフリカ向け製品のプロトタイプを発表した。フルHDの3Dテレビで双方向通信可能なサムスンスマートTV,ギャラクシーTab 10.1と8.9などである。

他にアフリカで活発な動きを見せる企業にはNokia, Google, Bharti Airtel などがある。日本メーカーのアフリカ戦略はいかがか。MOP同様再び後塵を拝することになるのか。


2010年10月22日金曜日

「BOP」ビジネスにおける事業戦略と全社戦略 その2

先のエントリーを受けて、事業戦略・全社戦略の文脈で「BOP」ビジネスが企業価値に反映される経路をまとめると以下のようになる(試案。適宜検討し加筆修正していく)。


詳細は下記の通りだが、これらの経路は当初から選択的に重点を決めてしまうよりも、企業価値につながるすべての経路・可能性を網羅的に十分検討することが肝要だと思われる。そこにリアルオプションとしての意味も出てくる。その上で、個々の経路の潜在的貢献度に応じ、資源配分に優先順位をつけていくことになるだろう。

<「BOP」ビジネスが企業価値(全社・連結対象レベル)に結実する経路>

A. 個別事業レベル

A-1:直接的な効果:
●当該事業が生み出すキャッシュ(営利の場合)⇒企業価値へ直結(短中長期)
●当該事業が果たす生産機能(「ソーシャルビジネス」の場合)⇒川下工程への半完成品供給(コスト低減もしくは供給安定性)(短中長期)

A-2:長期・間接的な現地効果:
●現地でのブランド認知・信用(財務的信用含む)⇒当該事業の将来利益への寄与および自社他事業(相対的高価格商品)の将来顧客を醸成 例:ソーラーランタンから将来は家電製品へというマーケティング効果
●現地でのノウハウ蓄積⇒当該事業の将来利益に寄与
●社会問題解決による現地での評判・企業市民としての資格⇒現地での将来売上に寄与

B. 全社(コーポレート)レベル

B-1:直接的な全社効果:
●既存技術をBOPへ有効活用することで範囲の経済性⇒ROIの向上(短・中・長期)
●PPMにおける「問題児」事業の創出(成長構造の1要素として)⇒将来の「花形事業」候補の生成(中長期)
●新たなコアコンピタンスの獲得(既存他事業で共有可能なノウハウや技術、顧客基盤等)⇒範囲の経済性向上(中長期)

B-2. 間接的な全社効果:
●企業理念の体現によるインテグリティ(一貫性)の確保(組織マネジメント)⇒社員のアイデンティティ強化、動機づけ向上、全社レベルの対外的評判・イメージ向上(短中長期)
●社会的評判・企業イメージに基づくコーポレートブランド・他事業ブランド認知へのハロー効果・信頼感向上⇒将来の売上増大へ(中長期)

2010年10月19日火曜日

「BOP」ビジネスにおける事業戦略と全社戦略 その1

株式会社が「BOP」ビジネスに関する戦略(企業価値の持続的増大につながる資源配分)を検討する際に、少なくとも2つの戦略的観点がある。

第1は「事業戦略」である。すなわち、いかに当該BOPビジネスそのものを着想し、成功確率を高める資源配分を実現できるか、

第2は「全社戦略(コーポレート戦略)」である。すなわち、当該BOPビジネスが全社事業ポートフォリオの中で果たす役割、すなわち他事業との関連性や全社レベルの無形資産(コア・コンピタンス、評判やイメージ)の活用・蓄積にどう関わっているのか、

である。

ややもすると、BOPビジネスに関する議論は事業戦略に傾斜しがちか、もしくは事業と全社のレベルを渾然一体として議論する傾向がある。だが、製品事業レベルで多角化している企業の場合、全社戦略をそれとして議論することの重要性は改めて指摘するまでもない。

全社戦略レベルの議論を伴わない場合、せっかく個別事業としては成功しつつある(もしくはその見込みの高い)ビジネスが、全社レベルでは高い評価を得られなかったり、少しの財務的許容度しか与えられなかったり、ということに陥り、本来は企業価値に結実する事業をみすみす見逃してしまう(機会損失の)恐れがある。

野村総研の「ロングタームイノベーション戦略(下)」のp.59-60には、この全社レベルでの位置づけの重要性が指摘されている。該当する部分を引用すると、「構想の初期段階において、全社戦略やグローバル戦略における事業の位置づけ、事業ポートフォリオ上の事業の位置づけを明確にすることが重要である。」「より具体的には」「経営的目的としては、単体で利益を上げる事業とするのか、あるいは他事業にもたらす副次的効果の重要性を重んじるのか、それとも、単体での高い収益性は求めないが、一方で関連事業の将来市場を創造し、ブランド価値を高めるなど、全社戦略におけるシナジー(相乗効果)や間接効果を追求する事業なのか――こうした位置づけを経営の意思として明確にすることが求められる。」 

BOPビジネスの全社的位置づけを決するための評価・検討プロセスに関しては、さらに詳細な議論を行う必要があるだろう。

㈱イースクエアのオピニオンペーパー「BOPビジネス(途上国市場)ネットワーク構築」(公開)には、「何の為のBOPビジネスか?」という文脈の下で「BOPが生みだす企業価値」というチャートが登場する。(下図。同ペーパー2ページより引用) このチャートは、個別事業レベルと全社レベル(表中コーポレート)の意義、そしてそれらを時間軸と合わせて、BOPビジネスがどのような経路をたどって企業の経済的価値に資するか、その整理を試みている点に価値がある。また、すべての項目が企業の経済的価値(企業価値)へつながるという(企業としては当然の)前提で書かれている点も戦略策定の観点から適切である。ただし、この表は、これら複数の効果(経路)から「どれを重点的に選択するか」ということではなく、そのすべてに関して検討対象にすべきものと解する。
ただし、本フォーラムでは「CSR(企業の社会的責任)」を「本業の事業プロセスにおいて社会・環境に対して負のインパクトをもたらさないこと」、と藤井俊彦氏の定義で理解しており、明らかにイースクエア社よりも限定的にとらえている(と思う)。

雪国まいたけとユニクロ

先にグラミンユニクロへの感想は述べたが、同じくグラミンとの提携でも、今回はその狙いが異なっている点が興味深い。

資本金は同じ10万ドルだが、グラミンユニクロの場合はバングラデシュでの縫製事業本体での投資額(800万ドル)と比して非常に小さく、現地での企業市民としての資格を取得するという意味合いがより強いと思われるが、雪国まいたけの場合は、緑豆の生産量確保が主たる(全てではない)狙いで、当初から大規模農場(500-1000ヘクタール)で栽培し、約900名の雇用を生むという。また、グラミンの出資は25%で、ユニクロとのケース(1%)よりもはるかに多い。その背景は知る由もないが、外から眺める限りにおいて、グラミンはこの事業により実質的意義を感じており、関与度も高いことが示唆される。

もちろん、本件もグラミン流「ソーシャルビジネス」であるから、当該事業からは一切株主に配当されず、利益はすべて事業に再投資されるのがルールだ。

私は、グラミン流のソーシャルビジネスは配当が投資家になされない点で、新たな資金を吸引しづらく、スケールアップに限界があるのでは、(配当を行う場合と比べて)、と考えてきた。そしてこの点に関する考えはおそらく変わらない。だが一方で、この「ソーシャルビジネス」を金銭的リターンを直接得る源泉と捉えずに、安定的に原材料を調達する機能と考えれば、なるほどこの形式にも活用余地があると感じられる。マジョリティ出資者である雪国まいたけには、配当こそ皆無だが、安定的で相対的に安価な原材料確保という便益や貴重な学習機会、そして「ソーシャルビジネス」であることの対価としてグラミンとの関係性(国内販売での認知度と企業イメージ)が確保される。

配当は行わなくとも、利益の再投資や増資によって、生産機能としての「ソーシャルビジネス」をスケールアップしていく、という活用法である。ただし、生産物の買い取り(移転価格)がフェアートレードの精神で行われなければならないのはCSRとして当然のことである。