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2013年4月10日水曜日

東洋経済「第8回CSR調査」業種別集計結果: BOPビジネスへの姿勢

CSR東洋経済ブログに、日本企業のBOPビジネスへの取り組みとその位置づけに関するアンケート結果が公表されている。詳細データはこちら。 それによると、

1)BOPビジネスへの取り組み

行っている:6.5%  行っていない:84.1%  検討中:8.2%  その他:1.2%


2)BOPビジネスの位置づけ

現状でビジネスになっている:4.5%  将来のビジネスチャンス:36.4%   
社会貢献の側面が強い:48.9%    その他:10.3%


3)NPO/NGOとの連携(BOPビジネスとは独立した別の質問)

あり:56.6%  なし:41.6%  今後予定:1.2%  その他:0.6%


基本的傾向は能率協会の調査と同様だが、興味深い。この解釈についてはのちにアップ予定。




2013年4月8日月曜日

対アフリカ投資でマレーシアが台頭

アフリカビジネスニュース3月29日
「勢い増すマレーシア、アフリカ向け海外直接投資、中国抜き世界第3位に浮上」
http://www.africa-news.jp/news_NGcmlBSPR.html

これによると、UNCTADが2011年の対アフリカ直接投資トップ20カ国を発表した。
http://unctad.org/en/PublicationsLibrary/webdiaeia2013d6_en.pdf
この報告書の7ページにそのリストがある。

2011年中のフローでは、上から順に:
仏、米、マレーシア、中、印、独、スイス、キプロス、日本、デンマーク、スウェーデン、オーストリア、タイ、、、

2011年末のストックでは、上から順に:
仏、米、英、マレーシア、南ア、中国、印、ノルウェー、日本、ベルギー、スウェーデン、デンマーク、タイ、、、。

2012年11月26日月曜日

ソニーが北・東アフリカで二ケタ成長(週刊アフリカビジネスより)

サムスンやアップルとの競争が激しい中、ソニーは北・東アフリカで二ケタ成長をしている。モロッコ、アルジェリア、ケニアの成長が著しいという。手持ちビデオカメラ市場では、ソニーはサウジアラビアで72%、UAEで40.6%のシェアを占めている。

週間アフリカビジネスへのリンク(無料バージョンもできたようだ)

記事へのリンク
http://www.thenational.ae/thenationalconversation/industry-insights/technology/mena-market-in-focus-for-sony


感想:中近東・北アフリカ市場と、サブサハラ市場は別ものだが、上記の記事でやはり目を引くのはケニア市場の成長ぶりである。今年8月にガーナのスピーカーボックスメーカー(Mr. John Lemaire, the CEO,  AudioCraft)を訪ねたとき、ナイジェリアもケニアも音楽や音響機器の一大市場だと興奮気味に語っていたのが印象的だった。日本の音響機器メーカーとの提携・協働を望んでいたが、興味のあるメーカーはないだろうか(次のエントリーで同社を紹介)。


2012年8月20日月曜日

「グローバル人材」なるもの

 日本では今、「グローバル人材育成」が花盛りだ。企業戦略の視点で今の現象を眺めていると、日本の伝統的大企業に求められているのは、単に個人のレベルで英語や中国語、特定国の事情に通暁している人材を育成することだけではなかろう、と感じる。

 企業戦略の視点からは、「地球規模市場の視点に立って、いかにすれば自社固有の資源をベースに経済的価値を最大化できるのか、新たな事業機会は何なのかを洞察する能力・時代感覚・識見・感覚」が肝要だろう。これが現時点での、企業戦略の観点から求められる「グローバル人材」の真価と思われる。「現状打破のリスクを恐れない、地球規模の戦略感覚を持ったリーダー」が求められている。

 その上で、各地域別・機能別の分業体制が敷かれ、それに応じた特殊能力の育成が必要になるのは言うまでもない。

 当研究室がアフリカへの調査を複数回行う(今後も)のは、何もアフリカが有望市場だからという単純な理由だけではない。より上位の文脈として、地球規模で戦略を発想する際に必要不可欠な情報量が、圧倒的に不足しているのがアフリカ諸国だ、という自覚があるからだ。多くの経営幹部との対話を通じ、地球規模で事業機会を発掘し、意思決定の俎上に載せようという際に、同地域に関する知見がいまだ十分に集積されていないケース(研究者としての私自身を含む)が非常に多いと感ずるからだ。(もちろん先進的例外は日本にも少なからずあるが。)

 であるから、ある企業がアフリカへの知見を深めたとしても、経営意思決定の結果としては、その企業にとってはアフリカの特定の国々は戦略上の優先順位が低いと判断され、「現時点では関与せず」という結論も当然あり得る。しかしそれが全地球的に複数の事業機会を十分に精査した結果の合理的判断であれば、それで全く問題はない。

 問題なのは、情報不足故か個人的好み故か、特定の地域(例えばアフリカのサブサハラ諸国)を無意識に最初からオミットしてしまい、自社の「潜在的」活動領域を自ら狭め、事業展開の可否判断の俎上にすら乗せないことである。


2012年6月2日土曜日

ZTEが国際特許出願でパナソニックを抜いて世界一位に

WIPOによると、先に紹介したZTE(中興通訊)が2011年度の国際特許登録の出願件数で、企業としては前年一位のパナソニックを抜いて一位に躍り出たとのこと。ちなみに2011年11月、ZTEジャパンのCTO兼副社長に、日本IBMやシスコシステムズでCTOを歴任した大和敏彦氏が就任している。

こうした世界有数の中国通信機器メーカーが、すでに総売上の2割をアフリカであげている事実にどのような戦略的含意があるのかを、日本の製造
企業は考察する必要がある。



2012年5月22日火曜日

NHK視点・論点「アフリカとBOPビジネス」と追加情報

5月21日放送。JICAアフリカ部次長 松下篤氏。
詳細にメモを取って視聴したので、以下、追加情報(矢印以下)を付加しつつ要点をまとめておく。

■BOPビジネスとは

1)現地の状況やニーズに合わせた商品を購買力に見合った低価格で提供することにより、消費者としてのBOP層の生活の質向上に貢献するもの⇒BOP1.0 (消費市場としてのBOP)
2)BOP層が生産・流通等に関わる事業者としてビジネスに関わることにより、雇用や所得が創造され、人々の社会的な機会と力(エンパワーメント)を生み出す⇒BOP2.0(事業パートナーとしてのBOP)
3)企業にとっての技術革新や事業拡大の機会。⇒リバース・エンジニアリング、市場創造
4)上記1)~3)の性質を複合的に有するBOPビジネスは、従来の社会貢献活動とは異なる。

■アフリカのBOP層:5億人


■アフリカの経済成長とその要因

実質5%超の年平均経済成長率を記録。この背景には、
1)内発的環境変化(政治経済の適切な運営に向けたアフリカ諸国・人々の行動変化):紛争解決や経済運営に関する政府機能(ガバナンス)の改善、および経済の周縁から中央への参画を希求する人々の意識変化(これにより初等・高等教育での就学率も向上)
2)外発的環境変化:天然資源や輸出農作物の価格上昇、中国・ブラジル等新興国によるFDIの増加(市場としての潜在性・魅力に誘引され)、および情報通信サービスの急速な発展(⇒人々の情報アクセス力の向上⇒内発的意識変化へリンク)

■従来のアフリカにおけるビジネス

 多国籍企業による資本投下で成立し、アフリカ発の製品が先進国の中間・富裕層向けに出荷されるか、アフリカのごく少数の富裕層向けに販売されるパターン。BOP層は市場の外部の存在。ビジネスには参画できなかった。

■アフリカにおけるBOPビジネス

 大企業のみならず、中小企業が主体となって、BOP層を取り込んだビジネススキームが登場。

■日本企業の事例:ウガンダのブッシ(Bussi)島ジャリ(Jali)村
ドライフルーツビジネス。村民300名の年間所得は$110(ウガンダ全体の平均年間所得$500)。子供の多くは栄養失調で、平均寿命は40歳強。現地のオーガニックドライフルーツプロジェクトと日本の中小企業のコラボレーション

⇒Jali Organic Associationと日本の㈱FAR EAST。Jali Organicは、ジャリ村のフルーツ資源を活用して経済発展を目指した同島出身のMuwanga兄弟が1995年に設立。これまで仲介業者に買いたたかれていた現地のフルーツを5-7倍の値段で買い取り、ドライフルーツへの加工を開始。FAR EAST社長佐々木敏行氏が見本市でBE ORGANIC社を仲介に商品を発見し、日本市場への導入を開始。経緯はジェトロのウェブサイト・同報告書
に詳しい。フェアトレードの一種。JETROの開発輸入企画の一つ。JETROによる開発輸入企画への支援は1件500万円。
⇒このJali Organicが、ジャリ村の生活向上を超えて、どこまで拡張性がある事業なのか、その意図も含めて一度調べてみる必要があるだろう。



味の素㈱伊藤社長のアフリカ戦略

すでに本ブログでは、サムスン電子(韓国)とZTE(中国)のアフリカ市場戦略に言及しているが、味の素(日本)の伊藤社長が本日(2012年5月22日)の日経朝刊で同社のアフリカ戦略について述べている。

■全社の経営目標
売上高営業利益率(11年度6%)とROE(11年度7%)を来期(13年度。14年3月期)にはそれぞれ1%高める目標に向け、構造改革を進める。

■東南アジア・南米
すでに欧米勢に近い利益率を上げている。販売は順調で、今後東南アジアと南米を合わせた利益は日本を超えるだろう。なお、年内にミャンマー工場を再稼働させ、事業を復活させる。

■アフリカ
 5-10年先を見据えた「仕込み」も着実に進める。焦点はアフリカ。従来の西アフリカ(ナイジェリア等)に続き、大陸の北部・東部にも進出する。
1991年に進出したナイジェリアでは2011年度に売上高が100億円を突破した。すでに現地の生活必需品に近付いている。同国での「味の素」の年間販売個数は20億個になった計算。
3年以上先になるが、アフリカでの「味の素」は現地生産に切り替えたい。

<補足>
味の素の連結売上高は1兆1973億円(2012年3月期)、海外売上高は3824億円(対売上高比率31.94%)。ナイジェリア一国での売上高100億円は、海外売上高の2.62%、連結総売上高の0.84%にあたる。
伊藤社長は、アフリカ市場が同社の中長期戦略にとって重要な柱であることを言明している。昨今はようやくアジア新興市場(ボリュームゾーン)へ本腰を入れようという企業事例が続くが、日本にもその先を行く企業がいることに注目したい。
味の素にとっては、CSV(共有価値の創造)を全社的に掲げるネスレが地球規模市場における仮想敵となる。ネスレの連結売上高(2011年度)は83642(百万スイスフラン、約7兆259億円)。内「アフリカを含む」新興市場全体が総売り上げに占める割合は現在30%で、同社は2020年までにそれが45%に上ると予想している。(近々ネスレのアフリカ戦略をWSJの記事からアップ予定)

日本能率協会 BOP懇談会報告書がダウンロード可能に

当サイト発起人の岡田が執筆を担当した報告書:

日本能率協会「BOPビジネスに関する懇談会」研究報告書

『開発途上国低所得層(BOP)におけるビジネスの実現と成功条件について』
(2011年3月24日)

が下記のURLでダウンロード可能となりました。
http://www.jma.or.jp/activity/pdf/bopreport.pdf

神戸大三品教授のメッセージ

5月16日の日経朝刊32面(広告企画「選択の時代」)に、神戸大三品教授(専門:経営戦略)のメッセージが出ている。共感を覚えるので部分的に要約・加筆しておく。(⇒部分は岡田記)


■経営者個人の力量がものを言う時代
「社員に委員会を作らせて、事業展開の方向を考えさせる経営者がいるが、そういう経営者は降りたほうがいい。自分自身の責任でこれで勝負するのだという決断ができる経営者でないと務まらない。」
「情報を収集すること自体は重要ではない。情報収集主義からは脱却すべき。時代の節目では、過去の時代の節目に何が起きたのか、繁栄と衰退の分かれ目が何だったのかという大局的な時の流れを理解する目が重要である。」


■新興国におけるポジショニング
「こうした時代に必要なのは、既存事業へのこだわりを捨てるということ。中国などの新興国でも作れるもの、先方に賃金水準などから比較優位があるものにはこだわらないこと。」
「伸び盛りの新興国企業にも不得手なところが残っている。そこにポジションを見つけてすみ分ける必要がある。」
「新興国で出現しつつある中流階級向けの製品、ボリュームゾーンの製品については、日本の優位性はなくなっている。事業分野を絞り込み、その代わり、この分野では世界を制するというような戦略的意図が重要である。」
⇒新興国ボリュームゾーンは製品分野によってはすでにレッドオーシャン化している

■自社独自の経営資源・ドミナントロジックの重要性
「重要なのは『捨てる』という選択。現在一般には環境・エネルギー、医療・福祉が有望と言われているから、その分野に進出しよう、という意思決定の発想は誤り。これらの分野はどの国のどの企業も有望と考えている。」
⇒rent seeking behavior

「マクロの次元で事業選択するのではなく、自分たちのフィールドで、世界に伍してやっていける技術・市場は何なのかを考えること。」
⇒外部環境でなくコアコンピタンス、ドミナントロジックで。「世界」は「地球規模の市場」と捉えたい。

⇒仕事柄多くの経営幹部と包括的市場に関して議論する機会が増えたが、特にがっかりするのは一般的印象で「BOP市場はまだ早い」などと評論し、事業対象としての検討をはなから退けてしまう人がいることだ。包括的ビジネスへコミットするか否かはあくまで自社の経営理念や経営資源、ドミナントロジックとの兼ね合いで決まるものであり、個別企業の選択の問題である。包括的市場への関与が喫緊の課題ではない企業もあるだろうし、今こそ最大のエネルギーを割くべき企業もあるだろう。新興国市場と同時並行で進め、時間差アプローチを画策するべき企業もあるだろう。


2012年3月5日月曜日

アフリカビジネスに関する情報ソース

アフリカビジネス専門のコンサルティング会社(事業)が、それぞれ情報発信している。

1)㈱アフリカリサーチ(2010年2月設立)
「アフリカに関するビジネスニュースサイト AFRICA BUSINESS NEWS」はほぼ毎日配信のビジネスニュースが充実している。主席コンサルタントの大津志朗氏は長年のアフリカエキスパート。会社ホームページのギャラリーやインタビューに日付が入っていると、情報価値がもっと高まるのですが。

2)アフリカビジネスパートナーズ(2011年1月設立)
こちらは代表の佐藤重臣氏が個人で営む事業。すでに同氏のメルマガは紹介したが、現在は直接発行の月極め形式に体裁が変更されている。バックナンバーも入手可能。


2012年2月13日月曜日

三菱レイヨンが5大陸へ拡販

MSN/産経ニュース

同社のクリンスイ販売地域は、これまで日本・中国等のアジア圏15カ国に限られていたが、今後アフリカを含む5大陸すべてにわたる50カ国にまで本格的に拡大するという。もちろん、例えばアフリカでの展開がBOP2.0のように、バリューチェーン全域で現地コミュニティを包括するかどうかはビジネスモデル次第である。またそもそも包括的市場での販売を意図しているかどうかも詳細は不明だ。だが少なくとも、記事の文面からは、同社が地球人口70億人市場を想起した上で戦略構築しようとしていることが感じ取られ、その意味で重要な事例の一つと思われる。

クリンスイ(↓)



2012年1月2日月曜日

心地よい領域から踏み出して70億人市場へ:日経ビジネスオンライン

日経ビジネスオンライン記者の中野目氏に取材を受け、「地球上70億人を対象にビジネスを開拓する戦略的意図」の重要性を述べたインタビュー記事です。

日本企業が「包括的市場を含む地球全体的視野」に立って、本当に戦略を構築できているのか、というメッセージを投げかけています。

インタビュー記事ですので、反映できていない部分もありますが、補足するならば、70億人市場へ取り組む際に、戦略論上最も重要なのは、「自社独自の経営資源」「自社が最も得意なドミナントロジック」に着目することです。

小型風力発電のゼファー㈱、ベトナムで事業展開

国際協力の求人・就職・転職・キャリアサポートを行うdevexの日本支社ホームページの「開発ニュース」に、日本の小型風力発電機メーカーゼファー㈱がルビナソフトウエアおよび協同組合企業情報センターとの共同事業として、ベトナムに進出する計画が紹介されている。
■典型的なBOP2.0型包括的ビジネス
記事によると、ベトナム中部のホンラオ島に小型風力発電と太陽光発電を組み合わせた自立型電源を設置(将来は小型水力の組み入れも検討)し、自然に恵まれた同地で漁師が捕獲した海産物を冷凍保管する設備を運営する。これまでは非電化地域であるため冷凍・冷蔵保管ができず、余剰の海産物は廃棄されていた。本事業を通じ、内地はもとより輸出を視野に展開、今後はより高付加価値の海産物加工事業にも乗り出す計画だという。JICAの2011年度FS事業に認定されている(上限 5000万円)
この事業計画では、地元の漁師がバリューチェーンの重要なプレーヤー(供給)として組み込まれており、販売事業での新規雇用も想定される。さらに加工業まで発展した場合にも新たな雇用(生産)が現地で創出される。典型的なBOP2.0に該当する包括的ビジネスといえるだろう。

■当該国人材との人間関係の重要性
一つ重要な意味で興味深いのは、今回の共同事業者であるルビナソフトウエアの代表者(ブイ・トラン・ルオン氏)がベトナムからの留学生として東工大博士課程出身という点だ。実は今回の案件は、ホンラオ市長からルオン氏に直接持ち込まれたということだ。
なぜこの情報が重要かというと、途上国への事業進出の場合、現地情報は先進国に比べて圧倒的に不足しがちであるため、当該国出身者と協力関係にあることが極めて有効に作用するからだ。
例えば、これは純粋な企業事例ではないが、九州大へのグラミンクリエイティブラボ設置や、共同研究プロジェクト「開発途上国の社会情報基盤構築」の実現に役割を果たしたのは、同大のアシル・アハメッド特別准教授(バングラデシュ出身)である。
また、筆者が近畿経済産業局のBOPセミナーで講演した際、講演者のお一人だった㈱サニコン(浄化槽事業)の假谷社長(当時)が同様のことをおっしゃっていた。同社は、1997年に国際環境技術協力を目的にベトナムより研修生を受け入れ、ホーチミン工科大学の日本工業技術研究所設立に出資するなどした。それがベトナムとの人脈形成に決定的な役割を果たし、2008年のサニコンベトナム設立につながったという。
国費の研修生や留学生は一流の人材であることが多く、政府や各機関とのつながりも強い。そうした人材をまずは日本で受け入れてみることが、思わぬ大きな機会へつながることもある。何事もリアルオプション的発想で。

2011年5月17日火曜日

「急拡大する『BOP』ビジネスへの参入に異議あり:日本企業は強みを生かせる『MOP』を目指せ」

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110506/219791/?P=1(無料会員登録で全編通読可能)

元花王会長の常盤さんのエッセーである。このエッセーをそのまま読むと、これはBOPとMOPを分断された市場ととらえ、MOP予備軍としてのBOPへも同時攻略が必要だという考え方が欠落しているようにも受け取れる。一見すると、日本企業のかつての成功モデルへの回帰を肯定しているように読める。
ところが、読み進むと、日本企業への認識がきわめて現実的で、なかば自虐的とすら言え、むしろ逆説的に日本企業の戦略不全に対する痛烈な批判になっているとも解釈できた。不思議なエッセーだ。

以下、同記事の要点。

日本企業の強みは歴史的に「高性能・高品質なのにリーズナブルな価格」という点にあり、これはBOPで要求される低品質低価格には整合しない。むやみにBOPを攻めては果てしない価格・コスト競争に巻き込まれて疲弊するだけである。

韓国中国企業は意思決定スピードや経営資源の組み換えが早く、変化の早い新興国市場への適応能力が高い。また、市場ニーズを把握するための「市場感性」にも長けている。一方、日本企業は「とにかくスピードが遅」く、「現地への権限委譲が不十分なためか、本社で時間をかけて議論することになったり、的外れな決定が下されたりしがち」なため、「結果として、韓国勢などに先を越されてしま」う。 (筆者注:これではMOPでも全く勝てないと思われるが。)

その結果、「日本企業は確かに技術では優れていても、この市場感性とスピード感では韓国などに見劣りします。」「残念ながら、技術で勝っていても、市場で、ビジネスで負けてしまう」。

よって、日本企業はBOPに攻め入るべきではなく、新興国中間層および先進国市場に的を絞り、「日本らしさ」を追求すべきである。

以上が氏の主張。

2011年5月9日月曜日

第16回日経アジア賞: フィリピンNGO ガワッド カリンガ

Gawad Kalingaは、貧困層向けに住宅建設を支援する。第16回日経アジア賞。
活動資源(資金や資材)の提供元は「米シティグループや富士ゼロックス、比最大財閥アヤラ・グループといった内外の有力企業」および「一定の成功を収めたフィリピン人の海外就労者」。企業には「住宅や道路に企業名を命名させたりする。」

すでに同国内2000地区で20万件の住宅建設実績。目標は「2024年までに、貧困層向けに500万戸の住宅を建設する」こと、だという。

(日経新聞朝刊5月5日10面に記事)

2010年10月20日水曜日

WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)

WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)(本部ジュネーブ)のメンバー企業は世界の各地域から約200社。日本からは24社が名を連ねる。COP10が現在名古屋で開催中だが、1992年の地球環境サミットでの提言を行うため、国連の要請に基づき33カ国のビジネスセクターが組織したもの。こうした設立の経緯から、同組織の主要な関心事項は地球環境にあった。だが、現在ではその関心領域を拡大し、「エネルギーと気候」「開発(発展途上国の経済発展)」「ビジネスの役割(Business Role)」「生態系(エコシステム)」の4つの重点分野で活動・提言を行っている。その一環として、WBCSDはSNVとの連携によってMDGs全域にかかわるInclusive Businessの推進に活動の場を広げている。
日本企業はその構成比率からいってもWBCSDのアジア代表として、リーダーシップをとれるポジションにあると思われる。「BOP」ビジネスを促進する環境づくりは、アジア地域圏レベルではほぼ真空状態の感がある。日本側の事務局は経団連にある。

2010年10月19日火曜日

雪国まいたけとユニクロ

先にグラミンユニクロへの感想は述べたが、同じくグラミンとの提携でも、今回はその狙いが異なっている点が興味深い。

資本金は同じ10万ドルだが、グラミンユニクロの場合はバングラデシュでの縫製事業本体での投資額(800万ドル)と比して非常に小さく、現地での企業市民としての資格を取得するという意味合いがより強いと思われるが、雪国まいたけの場合は、緑豆の生産量確保が主たる(全てではない)狙いで、当初から大規模農場(500-1000ヘクタール)で栽培し、約900名の雇用を生むという。また、グラミンの出資は25%で、ユニクロとのケース(1%)よりもはるかに多い。その背景は知る由もないが、外から眺める限りにおいて、グラミンはこの事業により実質的意義を感じており、関与度も高いことが示唆される。

もちろん、本件もグラミン流「ソーシャルビジネス」であるから、当該事業からは一切株主に配当されず、利益はすべて事業に再投資されるのがルールだ。

私は、グラミン流のソーシャルビジネスは配当が投資家になされない点で、新たな資金を吸引しづらく、スケールアップに限界があるのでは、(配当を行う場合と比べて)、と考えてきた。そしてこの点に関する考えはおそらく変わらない。だが一方で、この「ソーシャルビジネス」を金銭的リターンを直接得る源泉と捉えずに、安定的に原材料を調達する機能と考えれば、なるほどこの形式にも活用余地があると感じられる。マジョリティ出資者である雪国まいたけには、配当こそ皆無だが、安定的で相対的に安価な原材料確保という便益や貴重な学習機会、そして「ソーシャルビジネス」であることの対価としてグラミンとの関係性(国内販売での認知度と企業イメージ)が確保される。

配当は行わなくとも、利益の再投資や増資によって、生産機能としての「ソーシャルビジネス」をスケールアップしていく、という活用法である。ただし、生産物の買い取り(移転価格)がフェアートレードの精神で行われなければならないのはCSRとして当然のことである。

2010年10月13日水曜日

経産省「BOPビジネス支援センター」設立される

BOPビジネス支援センター
経産省の「BOPビジネス支援センター」が本日立ち上がった。「企業、NGO/NPO、国際機関、支援機関、学術機関等を会員とし」、「BOPビジネスを総合的に支援する仕組み」である。

無料の会員登録をして中にアクセスすると、6つのサービスが現れる。「国別情報/報告書等」のコーナーでは、政府(経産省)及び関連機関(JETRO、 JICA)からの各種報告書や潜在ニーズ調査結果がもれなく総覧できる。

現時点はいわばベータ版でのカットオーバーといったところか。今後会員の声を吸収・反映する仕組み、「マッチング支援」機能や諸外国および国際機関の支援制度情報など、さらなる充実が期待される。会員は登録時に興味を持っている国や業界を登録できる。それにマッチした支援制度の更新情報をメール通知するようなサービスがあると、一層サービスに価値が出て会員数拡大につながると思われる。

実は本日が同センターの開設シンポジウムであった。JETRO本部5階の大会議室(200席)は満席。特に企業からの参加者比率がこれまでのイベントの中で最も高かったそうだ。

(注:本ブログ発起人の一人である岡田は現在、上記BOPビジネス支援センターの運営協議会委員。)

2010年9月7日火曜日

日立による「BOP」事業研究


日立総研の研究紹介:
「日立総研では、特にBOP 層(Base of Pyramid)における事業戦略のあり方について、さまざまな国における事例を基に研究を行っている。」

日本の大企業自身がBOPの事業潜在性を真剣に研究し始めている。これまで紹介される日本企業の事例は、ここ1-2年「BOPビジネス」に日本での注目が集まるはるか以前から取り組んできた事例が多かった。そうした中、改めて「BOP」に着目した新たな取り組みが生まれ始めた、ということだろうか。

そもそも日立製作所の企業理念には「地球社会の基本的課題の解決のために、社会やお客さまの期待に対して積極的に応え、イノベーションを生み出していくこと。」という文言があり、これはまさにBOPにおける貧困等の諸問題解決にも適合すると思われる。

既報の通り、この9月に発表された経産省によるフィージビリティスタディ支援事業において、日立製作所(日立ハイテク)は「太陽光発電装置による社会課題解決型事業(インドネシア無電化集落での電気供給)」が採択されており、取り組みが今後本格化する方向が感じられる。

同社CSR報告書によれば、上記の他に日立建機によるカンボジアでの地雷除去機(アタッチメントを変えることで通常の建機としても利用可能)を日立OBによるNPO「豊かな大地」を通じて運用している件が報告されている。この地雷除去のプロジェクトは非常に社会的意義が高く、かつ本業との関連度が高い。これをどのように本業の収益につなげるのか、工夫が期待される。

<感想>
日本の伝統的大企業には、BOPへ挑戦する経営資源が蓄積されている。特に技術力と資金力である。これまで先進国市場向けに蓄積された高度な技術は、そのままでは高スペックすぎるとしても、その開発途上で培った技術要素の一部は経済的社会的制約条件が非常に厳しいBOPにも活用可能かもしれない。まさに持続的イノベーターの立場から、いかに破壊的イノベーションへ挑戦するか、という格好の課題をBOPは突きつけている。すべての企業が成功できるわけはない。先行者のリスクを取れる日本企業は、欧米中韓印企業の後塵を拝することなく、積極果敢にリアルオプション的小規模投資を始めるべきだろう。