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2010年10月12日火曜日

企業に事業活動の社会的側面を重視させる、資本市場からの制度的圧力

先にMonitor InstituteによるImpact Investing(資本市場サイドからのアプローチ)についてご紹介した。
本エントリーではそれと共鳴する、そしておそらくはより大きな「ESG投資」というトレンドについて。

貧困削減に資する事業を直接金銭的に(いわばP/Lサイドから)支援するのではなく、企業の利害関係者(その中でも特に機関投資家、つまりB/Sサイド)による仕組み構築、ならびに代表的企業の連署による宣言など、企業に社会問題解決に資する投資や資源配分を行わしめる制度的(institutional)圧力が先進諸国の資本市場で増大しつつある。ESG:環境(E)、社会(S)、企業統治(G)に関する総合的観点から企業を評価する機運である。倫理や価値観に基づくSRIから、長期リターンに連動したESG投資へと、「インパクト」を伴う投資の意味づけ、方向性が微妙に変化し始めている。

資本市場が企業を評価する際のデフォルトの尺度は、株主資本価値の多寡およびその成長性であり、基本的にこれは変わらないだろう。だが、その企業評価項目に、機関投資家自身がEとSを加えることを要求し始めている、という点が重要なトレンドの発生を感じさせる。特に最大の機関投資家である欧州・米国の年金基金群がESGの観点を重要視していることが下記レポートからも伺われる↓

<企業に社会的側面を重視させる「制度的」圧力の最近の代表事例(網羅的ではない)>
1999年   国連 Global Compact (130カ国7,700社が署名)
2006年  国連がPRI(責任投資原則 10か条)発表 (ESG概念の提唱)
2010年  国連ミレニアム開発目標サミット(MDGs goal 8は企業や資本市場との連携に期待) 

投資と環境保護の観点からCERESを運営するMindy Lubberによれば、上記Bloomberg によるESGデータのインテグレーションが、徐々にメインストリームとなっていくのではないか、と述べている。(Havard Business Review Blog 2009)

GIINによるIRISとESG投資の関連については現在調査中。

2010年7月29日木曜日

SKS Microfinace の株式公開

 既報の通り、インド最大手のMFIであるSKSが株式公開。CEOは有名なVikram Akula氏。募集開始は7月28日、機関投資家向けの締め切りは7月30日、個人投資家向けの締め切りは8月2日である。発行株式数は1,680万株。同社は発行価格帯を 850 to 985 rupees ($18.20 to $21.10) と設定している。よって調達資金規模は1株20ドルとして約336M(約300億円)となる。なお、借り手、主に農村の女性が所有する株式の割合は上場後11%に(上場前は40%)。

 このインドで最初(世界では3番目。第1号は2007年メキシコのBanco Compartamos SA)のMFI上場に対しては、賛成の立場と反対の立場があるようだ。

 賛否それぞれの基本的立場は本Blog4月10日で既報の通りだが、今回はグラミン銀行のユヌス総裁が明確に反対の立場で発言しているので、今一度まとめると、

<賛成>
1.CEO Akula氏(1998年、当時有数のMFIが資金調達難に苦しんでいるのを見て、政府資金、補助金、慈善寄付に依存しないMFIを目指してSKSを創業):貧困層への無担保少額融資サービスを持続的に拡大するには、資本市場からの資金調達が必要である。
 新世代のMFIとして、わが社は商業型アプローチによって、従前の方法に比較し、はるかに大きな資金をはるかに多くの貧困層に届けることができるようになった。その意味において、社会性と経済性の間にコンフリクトはないと考える。

2.Xavier Reille氏(世銀が支援するマイクロファイナンス関連のシンクタンクCGAPの専門家トップ):さらに多くの貧困層に資金を提供するために上場することは、不当な利益をむさぼることを抑止するに十分なガバナンスが機能しているのであれば、望ましいことだろう。2-3年以内に借り手の代表がボードメンバーになるかどうかを注視したい。

<反対>
1.Dr. Muhammad Yunus、グラミン銀行総裁:上場は、マイクロファイナンスの理念に反している。上場することにより、貧困層からお金を儲けられるエキサイティングな機会があるという、メッセージを送ることになる。私にとっては不愉快(repulsive)な話だ。MFとはお金のない人々がその自身のお金を自分たちの元に留めておくためのもので、それを金持ちの方へ向けさせるためのものではない。
 マイクロクレジットは、お金儲けの機会として示されてはならない。それは貧しい人々の生活にインパクトを与える機会なのである。


 今回の上場に先立って、創業者のAkula氏は所有する株式の一部を売却して$10Mを手にした。同氏は、その件を聞かれて記者への返答の際、同社職員へのストックオプションにも言及し、世界レベルの報酬を自社の社員にも、と強調した。だが、貧困層を対象とした事業を通じ、創業者や上場前に投資したPEが莫大な経済的リターンを享受することへの批判は強いようだ。
 富裕層投資家のお金が資本調達の形で貧困層向けの無担保融資へ流入し、そこで生み出されたリターンがどのように分配されるべきか(配当の問題)、またキャピタルゲインの源泉をどうとらえるか、という点に議論は集約できるだろう。
 ユヌス氏はまた、MFの利息を一般にもっと低くすべきだと主張しており、それへのAkula氏の反論(バングラデシュの地理的密集性からくる運営コストの違いと、インドでは許されていない、MFIが貸与した資金をそのまま預金させ、新たな貸し出しの原資とすることがバングラデシュでは可能なこと)もある(WSJ紙)。

<コメント>
 はたしてMFIの上場による資金調達は「正しい」のか、「正しくない」のか。さらにその調達資本へリターンを返すことは「正しい」のか「正しくない」のか。こうした問い自体が私にはむなしいものに思える。
 個々の社会的・経済的行為に込められた個々人の真意はそれぞれに異なるものだ。つまり、社会性実現のために利益創出モデルを活用しているのか、利益を追求するために社会性の高い事業を利用しているのか、個々の経営者の動機に占めるそれらの割合はどうかなど、外からは判断が困難である。そしてその動機の割合に応じて「正悪」が判断されるというのもうなづけない。利益の一端がリスクを取った株主へ還元されること自体を社会性追求の見地から忌避すべきか否かについても、見解は分かれるだろう。
 こうした主観的価値判断の是非を問うよりも、事象の全体構造がもたらす社会的・経済的効果をできるだけ客観的に評価する方向で考察すべきではないか。
 私の感覚は上記世銀系コンサルタントに近い。上場したとしても、資本市場での四半期ベースの業績向上圧力を配慮するがあまり、マイクロファイナンスの精神を踏み外して、不当なレベルの高利貸しや、見境のない安易な貸し出しとデフォルトの山に陥ることになれば、そもそも事業の健全な持続的成長は損なわれ、一挙に資本市場の信頼を失うだろう(コーポレートガバナンスの重要性)。
 確かに上場を機に創業以来の一部株主は巨額のリターンを手にすることになるが、それは元本保証のない大きな経済的リスクを取ったことへの経済的報いであり、正当なものである。また、社会性(マイクロファイナンス自体が現実に貧困解消に役立つか否かの議論は別)の高い事業の規模拡張に必要な資金を外部資本市場から調達することを選択するならば、その対価として相応のリターン(継続的利益創出によるキャピタルゲインと配当)を払う(もしくは目指す)こともまた必然・当然であろう。
 貧困を解消するという活動を、「倫理的道徳的に崇高な価値を希求するものであり、商業主義の“汚れ”からは決別しているべきだ」という価値観は一般的にいまだ根強いと思われる。人間には思想の自由があり、それを全く否定はしない。一方私の感覚では、企業家の利益追求と良心に従い、卑近な商業活動によって社会問題を解決していくことが目指されて「も」、違和感を感じない(これがすべての解決法と言っているのではない)。社会問題(換言すれば社会ニーズ)の多くは、ビジネスに関わる者が、企業の社会責任(藤井氏の定義)を果たすことを前提に、当然のように解決を視野に入れて活動して「も」何も珍しくなく、逆にその解決のための行動が特別で神聖不可侵なものであってはならないように思う。もちろん、企業がより積極的に貧困解消等、社会問題の解決を目指さなくても何らの法的・倫理的責めを負わないことは、キャロルの文献紹介で指摘した通り。「多元的アプローチの妥当性」と「利益」の意味・意義については過去のエントリー参照。

2010年5月3日月曜日

プレゼンスを増す営利のソーラーランタン事業

1. D.light
「社会的ミッションを強く持った営利企業 a for-profit business with a strong social mission」と自らを称する同社は、「社会的企業初の上場」を目指す。
今年3月に新製品Kiranを発表。価格は$10で、世界で最も安く性能のよい(コストパフォーマンス)ソーラーランタンを目指したという。同社は2006年のStanford design competitionに端を発し、スタンフォード大学のMBA2名で創業。2010年に売り上げ累計台数が「数10万台」に達し、実質100万人の生活に明かりを提供したと発表。2009 SVN Innovation Awardを受賞。
kiran girls.jpg
2008年6月の報道(企業概要、創業以来の経緯)
2008年11月の報道(VCから$5.5MシリーズA調達)
2009年10月の記事($10のKiran発表に際して創業者のコメント)
2010年4月の記事(なぜ営利企業体として社会的価値をめざすのか)
同社への寄付金の受け皿になっているBeyond Solarのホームページ

<コメント>
「投資家(VC)の顔が見える営利事業」という厳格な経済合理性の下で、社会的ミッションの達成を目指すハイブリッド型の営利企業である。本フォーラムの目指す社会価値・経済価値の両立を地で行く企業だ。利益創出の目的を「持続性のみならず、拡張性を確保するため」との説明も理解しやすい。ここでの「拡張性」はむろん事業利益の再投資による有機的事業成長を意味するものだと思うが、拡張性は外部資本の導入力にも左右される。事業(利益)が成長していればこそ、外部投資家にとって魅力が増し、「増資」によるさらなる拡張性の追求も可能になる。「BOP」における事業の成功には、やはり「資金調達スキーム」のデザインが必要不可欠であり、そこで社会的ファンドと純粋なリスクマネーのバランスがどのように決するかは本フォーラムの重要な検討課題の1つである。

「世界の無電化地域16億人に”あかり”を贈る」
営利事業と慈善事業の組み合わせ事例

インド・米国の合弁企業。製品名MIGHTYLIGHT。一つ5役の多機能。スタンフォード大学が母体。

4. Selco India (設立1995年)
ソーラーランタンのみならず、より大型の、事業・個人用ソーラーシステムも製造販売。創設以来10万基を超えるシステムを販売。

2009年10月に既報の通り。

2010年4月13日火曜日

S&Pに続きMoody'sもバングラデシュに初の格付けを付与

S&Pから1週間遅れで、Moody'sは4月12日、国家としてのバングラデッシュに対してBa3(フィリピン、ベトナムと同等。investment gradeから3ランク下の"Non Investment grades speculative")の格付けを付与した。同国財務省によれば国際債券市場で国債を販売する予定はないというが、今回の格付けによって、今後「投資家のレーダー」の監視範囲に同国の債券が入ってくることは間違いないだろう。

「バングラデシュは、その堅実な経済政策、財政政策によって対外的財務バランスも価格も安定しており、その状況は同様の発展段階の他国よりもすぐれている。直近数回の金融危機も、政治的危機も乗り越え、貿易の自由化推進によって過去十年にわたり平均6%の経済成長を持続させている。一方で、輸出が縫製済み衣料品に過多に依存している点は不安定要素。」(Moody'sのアナリスト)

1971年の独立以来、少なくとも5回の軍事クーデターを乗り越え、2年間の戒厳令下の軍政を2008年12月に終了した同国は、Awami LeagueのHasina首相をトップとする連立政権を成立させている。

2010年4月10日土曜日

インドのMFI上場でまき起こる論争:「貧困から利益を得る」ことの是非

SKS Microfinanceがインドのマイクロファイナンス機関として初の上場を果たす。$250-350Mの調達が予定されている。出資者に名を連ねるのは、創業者Vikram Akula氏(6%)、Sequoia Capital India(24%弱)、Sandstone Capital Llc(12%)、Kismet Capital Advisors Llc (17%)、SKS Trust for the Benefit of Women Entrepreneurs(15%)である。SKSは1998年創立で、2005年に営利のノンバンク金融会社(for-profit non-banking financial company-NBFC)として登録された.

今回の上場は、バングラデシュ、メキシコ、南米などの主たるMFI、そしてMFIに投資しているPEsから大いに注目されている。昨今、MFIに積極出資しているのは、シンガポール政府系投資会社Temasek、香港の投資銀行のオルタナティブ投資部門であるCLSA Capital Partners、世銀グループの国際金融公社(International Financial Corp)、プライベートイクイティのSandstone Capital(インド半島の投資機会。在米国)、シリコンバレーベースの世界的VCのインド支社Sequoia Capital India、MFIを支援する世界的NGOであるUnitus、英国のPEであるMatrixなどである。

●肯定的論点

1.MF市場の急速な成長と、既存資金源(寄付や銀行融資)の枯渇から、MFIが資本市場へ向かうのは自然の成り行きである。「年成長率が75%という中で、適正な自己資本比率15%を保つには既存の資金源だけでは困難だ。」「従って、MFIsはPE、資本(株式)市場、その他の融資機関へと移行しなければならなかった。今回のIPOは祝福されるべきものだ。」(Vijay Mahajan氏, MFI業界のロビー団体であるMFI NetworkのPresident)

2.今回のIPOは、MFIsの名声・評判を向上させる。「今回のIPOでMFIへの注目度は劇的に高まり、MFIの生態系全体に対する信頼も高まるだろう。」(Sequoia Capital Indiaのmanaging director、Sumir Chadha氏)

3.インドの財務相は、2010年初旬、NBFCsに銀行業免許を与えることも可能、と表明。同国におけるMFIの役割がますます重要になることを示唆した。


●否定的論点

1.他のMFIやNGOの中には、資本市場にアクセスしたり、プライベートイクイティからの出資を受け企業価値が押し上げられることを好ましく思っていないものもある。
2.「マイクロファイナンスの役割は貧困の解消にある。しかるに、このIPOから恩恵を受けるのは一体誰なのか?」「MF事業拡張や情報システム投資の資金を得るためにIPOするのは分かる。 だが、MFのユーザーがいまだ貧困を脱していない一方で、株主の間に億万長者を生じさせるのは果たして正しいことなのか」(インドとネパールでマイクロファイナンスを手掛ける英国のNPO、Shivia Microfinanceのexecutive director、Olivia Donnelly氏)
3.「PEの流入により、MFIの企業価値は簿価の5.9倍にまで膨れており、これは世界平均の3倍に達する。」「メキシコのCompartamosなど、すでに上場しているMFIsは既存銀行株をしのぐリターンを上げている。だが、それらMFIの企業価値は不安定に高く、現在の成長率や現在から将来に至る収益期待によっては正当化できないレベル」(要はバブル)と指摘されている。(JPMorgan および世銀のConsultative Group to Assist the Poor (CGAP) による報告書)

<コメント>
「BOP」において事業の経済性と社会性の両立をいかに図るかという論点からは、今回のIPOに関する議論を避けて通ることはできない。十分に考察する必要がある事象だ。

2010年4月7日水曜日

Bangladesh国債に初の格付け by S&P

4月6日発表されたS&Pの格付けによると、同国の長期国債はBB-、短期国債はBとされた。これは南アジアではインド国債(BBB-)に次ぐ高さの格付けとなる。Muhith財務相は、「これによってわが国の対外的イメージは大幅に改善され、より多くの投資を海外から呼び込む助けとなるだろう」と述べた。
http://in.reuters.com/article/southAsiaNews/idINIndia-47480820100406

<付言>
ちなみに日本の長期国債の格付けはAAで、格付け見通しは「安定的」でなく「ネガティブ」。米国債はAAA。

<Standard&Poor's格付け一覧>

AAA —Extremely strong capacity to meet financial commitments. Highest Rating.
AA —Very strong capacity to meet financial commitments.
A —Strong capacity to meet financial commitments, but somewhat susceptible to adverse economic conditions and changes in circumstances.
BBB —Adequate capacity to meet financial commitments, but more subject to adverse economic conditions.
BBB- —Considered lowest investment grade by market participants.
BB+ —Considered highest speculative grade by market participants.
BB —Less vulnerable in the near-term but faces major ongoing uncertainties to adverse business, financial and economic conditions.
B —More vulnerable to adverse business, financial and economic conditions but currently has the capacity to meet financial commitments.
CCC —Currently vulnerable and dependent on favorable business, financial and economic conditions to meet financial commitments.
CC —Currently highly vulnerable.
C —Currently highly vulnerable obligations and other defined circumstances.
D —Payment default on financial commitments.

2010年4月6日火曜日

バングラデシュへの海外直接投資(FDI)が約66%減少


中央銀行(BB)の発表によると、同国への海外直接投資(正味流入)は以下の通り:

現財務年度の最初の7カ月(2009年7月-2010年1月):$228M(対前年同期比65.56%減)
現財務年度の上半期(2009年7月-12月):$197M(対前年同期比67.33%減)

BBによれば、その原因は世界的なリセッションによるものと、同国特有のエネルギー事情の両方が考えられるという。現在も同国では、1日当たり849万立方メートルのガスと、1500メガワットの電力が不足している。


<解釈>
2009年7-12月期といえば、リーマンショックから1年後である。


上記のNYSEの値動きからもわかるように、2009年後半は明らかに企業業績の回復見通しが立っていた。この時期に、外国企業がバングラデシュへの投資規模を3分の1に減少させている。その理由として、BBの言うエネルギー問題とともに、より短期でキャッシュ(quick cash) の見込める事業へ投資先がシフトした可能性も考えられる。だとすれば、この現象(FDI急減)は同国への投資がより長期的スパンでリターンを考えねばならないことを示しているとも考えられる。

2010年3月24日水曜日

ダッカ商工会議所、金利削減を中央銀行に提案

ダッカ商工会議所会頭のAbul Kasem Khan氏は、バングラデッシュ銀行(BB)との会合で、現在の貸出金利(13%)をひとケタに下げるよう促すとともに、貸出と預入のスプレッド(現行5%)を3%程度に縮めることも提案。これによって国内の起業家が投資活動を行いやすくする必要がある、と指摘。BBの統計によれば、指定銀行(scheduled banks)の2009年12月末時点での金利平均は、
貸出が年11.49%、預入が年6.35%となっている。

2010年3月8日月曜日

BRAC創設者のAbed氏、sustainable bankingを目指したGABV会議で貧困との闘いを強調

GABV(the Global Alliance for Banking on Values)とは、Abed氏が創設した世界11行からなる団体。通常の商業銀行からは融資を受けられない人々への融資("social finance"注1)、もしくは地球環境の保護・改善を目的とする事業への融資を目的として持つ銀行が加盟している。総じて"sustainable banking"という志を共有する銀行の集まりである。

3月6日にダッカで開催された会議では、Abed氏が「予見可能な未来において、銀行セクターの第一優先順位は貧困の削減にある。」「気候変動もまた、銀行セクターがコミットしなくてはならないもうひとつの地球的脅威だ」と述べた。同会議では、$250Mの新規資金調達を目指している。オランダのTriodos Bank総裁Blom氏は、「この資金調達により、$2Bの新規融資が可能になる」、と呼びかけた。


注1:social finance:ソーシャルファイナンスというと、ソーシャルネットワークやソーシャルメディアでいう「ソーシャル(P2Pコミュニケーション)」の流れで、「個人対個人(P2P)のファイナンシング、もしくはそれをマッチメークするプラットフォーム型事業」のことをさす場合がある。本項でいうsocial financeとは、社会的価値の増進を主目的の一つとする融資活動のことである。本稿でいうソーシャル・ファイナンスについては、ニッセイ基礎研Report 2005.7に詳しい。

2010年3月2日火曜日

ダッカ証券市場はバブルか

本記事の分析によればDSEはバブルの状態にあり、あと2-3ヶ月で破裂し、いつ1996年の再現になってもおかしくはない、という。

2009年3月以来、DSE指数は1年間で2.2倍に。

PERも17セクター中11セクターで上昇(対2009年3月)。

アジア諸国の指数と比べても突出して上昇(対2009年3月)。



2010年2月17日水曜日

気候変動対策資金の供与に世銀が介在することをめぐりコンフリクトが発生

英国政府がバングラデシュへ供与する予定の£60 million(約85億円)を、英国国際開発局(DfID: Department for International Development)は世銀を通じて流すことを主張している。一方バングラデシュ側は、世銀を経由すると、好ましくない紐が付いたり制約条件が課される可能性があり、好ましくない。資金は国連を経由して受け取りたいと主張している。それに加え、バングラデシュ政府は、今回の£60 millionが真水の額でなく、すでにDfIDが提供してくれている他のプロジェクトへの資金が流出するのではないかと危惧している。

2010年1月21日木曜日

マイクロファイナンスの成否:バブルか産みの苦しみか

少々遅ればせながら、2009年後半に起こったマイクロファイナンスに関する論争をレビューしておく。

<主な論文・記事>

2009年6月 Roodman & Morduch "The Impact of Microcredit on the Poor in Bangladesh: Revisiting the Evidence" が発表される。「マイクロクレジットは、不況期の支払いを支え、家計からの支払いキャッシュを平準化させる効果はあるが、貧困から脱出できるという効果は認められない」

2009年8月13日 Wall Street Journalの報道 "A Global Surge in Tiny Loans Spurs Credit Bubble in a Slum"
「インドの地方都市RAMANAGARAMでは深刻な多重債務問題が生じている。世界のマイクロクレジット業界は社会的問題解決から利益創出に目的がシフトし、大量のプライベートイクイティが流入してバブル状況。貸し倒れリスクが高まっている。」

2009年8月14日 インドのMFI Ujjivanが自社ホームページに反論を掲載
「WSJが指摘する問題事例はプライベートイクイティにもMFIの利益創出動機にも無関係の個人的背景による事例で、この事例をしてMFI全体が構造的な問題を抱えているとはいえない。」

2009年8月18日 グラミンを超える規模に成長したMFI SKSの創業者Vikram Akulaがブログで反論
「たった一つの町のたった一つの事例でMFが世界的にバブルだという一般化はあまりに馬鹿げている。SKSの返済率は99%で安全性の格付けで最高レベルである。」

「たしかにインド南部の一部では過重債務のケースが発生しているが、記事はそうした問題がどのように対処され、解決されていっているか(国や州レベルで債務解消のベストプラクティスを共有したり、MFIsを一元的規制の下に置くことなど)が全く触れられていない。今、MFは産みの苦しみを味わっているのかもしれない。貧困解消指数の積極的活用で、MFIのミッションが果たされていることを証明する支援を今後も続ける。」

上記すべて記事の大意。詳細は原典に当たっていただきたい。

2010年1月16日土曜日

JICA、BOP向けビジネスの支援に1社最大5000万円を支給

BOP市場向け事業を積極的に支援する姿勢が鮮明なJICA。本年3月から立ち上がるとのこと。
最高1社あたり5000万円が「支給」されるということだが、これは返済義務のない補助金ということであろうか。案件の属性ごとに補助金、融資、投資を組み合わせる柔軟なスキームがあると適切と思われる。いずれにせよ日本も、(支援体制に関しては)ぐっと前進してきた。JICAのセミナーに200名出席されたということも聞き及んでおり、ますます企業側の関心を引く契機となるだろう。

しかし、最終的に意志決定して動くのはあくまで投資決定者としての企業である。そこに自社事業としてBOP市場でのビジネスがどのような複数の経路をたどって自社の企業価値につながるのか、という個々の企業独自の包括的認識が必要になる。

http://www.jica.go.jp/announce/research_bop/pdf/20100806_01.pdf

2010年1月14日木曜日

BhartiによるWarid買収(続報)

他のメディアによれば、実際の投資額は$300Mに加えてさらに$700M、合計$1000Mに上るという。うち$300Mはインフラ整備の設備投資に充てられ、$700MはWaridの負債返済に充当されるという。
さらにこの記事では、バングラデシュにおける通信規制の頻繁な変更や、進行する通信料金の値下げ競争が事業の障害になることが懸念されると指摘。

2009年12月14日月曜日

リスクマネーとソーシャルマネーを組み合わせる投資スキームの重要性

もしも、BOPにおける事業戦略が経済的価値と社会・環境的価値の両立を目指すことをゴールと設定し、元来戦略理論におけるデフォルトのゴールであった「経済的価値の持続的増大」から一歩踏み出すのであれば、それに呼応して、いかなる資金がそうした事業には用いられるべきか、を考え直さねばならない、と常々思っていた。そこでヒントになったのがモニターインスティチュートによる「インパクトインベスティング」という発想である。

先にMonitor InstituteのImpact Investingに関する報告書をご紹介した。この報告書はCreative Commonsベースの著作権設定になっていて、オリジナルの出典を明らかにする限り、自由に派生的資料を作成すること(これら派生資料もCreative Commonsの取り扱いをする限り)が許されている。そこで、この報告書の理解を深めるために、Executive Summary p.5の表をいくつかの段階に分けて複数のチャートを作ってみた。その一端を紹介する。

Impact Investing 概念図その1:


1.縦軸に期待収益率(経済的パフォーマンス)、横軸に社会・環境上の期待効果を設定する。

2.左上の象限では、投資家が金融資産を運用・マネジメントし、いわゆるconventional assets(株式や債券など)への投資が行われている。投資家にとって許容できる最低限の期待利回りを下限とし、それを上回って投資リターンをさらに高めることがこの象限の投資の目的となる。すなわち、社会・環境上の期待効果は基本的に考慮の対象にない。もちろん投資対象の株式会社の事業がたまたま社会的価値を生み出しているかもしれないが、それは投資家の意図の範疇外の話である。
 もちろん、これらの投資家でも、営利企業が社会的・環境的に問題をはらんだ事業を遂行すると、事業の持続性が損なわれたり、かえって利益率が悪化したりする懸念を抱く場合もあり、その場合は(あくまで財務的リターンの向上に役立つ意味において)企業による社会的・環境的価値の実現を期待するだろう。また、リーマンショック以来、さらなる投資ポートフォリオの多角化に関心が高まっており、リターンは「きわめて高」くなくとも、最下限のリターンは確保しつつ持続性が高いBOPでの事業案件がもしあれば、それへの投資は十分な選択肢となるだろう。

3.右下象限の隅は慈善活動に投じられる資金を意味する。社会・環境上の期待効果水準は極めて高いが、財務的期待収益率はゼロ(もしくは、存在しないというべきか)である。左上の象限とは対極にある。また、こうした慈善活動に投じられる資金には、やはり最低限実現させたい社会・環境的効果の水準があり、それを下回る(左下の象限)ようであれば、投じられる資金は減じていくと考えられる。
 こうした慈善投資家・団体への寄付や国際機関からの援助金など、財務的リターンを求めない資金は、その流入量が不安定であり、左上の象限と比べると圧倒的に規模が小さい(かたや投資、一方は拠出金・貸付金なので直接比較できないが、いわゆる金融資産に投じられマネッジされている資金の世界合計が2008年末で約$90T=$90,000B=約7200兆円。一方、先進国のODA年間額(約$190B)、国連の開発関連諸機関の年間予算(約$10B)、米国のチャリティ合計($300B)を合わせても約$500B=約45兆円。)
 たとえば篤志家や政府からの寄付や給付が不況など何らかの理由で途絶してしまうと、支援活動も停止せざるを得ない。資金は常に枯渇状態に陥りやすく、お金がある限りは活動を続ける、というスタンスになる。また、活動に対し経済合理性に基づく厳格なガバナンスが働きにくい、ということも考えられる。
 (一方、利益を出すためには、より少ない入力で最大限の出力を得る努力が積極的になされ(経済合理性の追求)、その様は投資家によって厳しく監視されている。そして利益の上がる事業はより多くの資金を誘引するため、事業活動のスケーラビリティ(規模拡張性)がさらに高まっていく。逆に利益の見込めない事業には資金が集まらず、事業は持続できなくなる。)

4.報告書によれば、2の中に、"Type A: Financial first investors, who seek to optimize financial returns with a floor for social or environmental impact(最低限度の社会・環境的効果は確保しつつ財務的リターンを最大化しようとする投資家群)"が、そして3の中に"Type B: Impact first investors, who seek to optimize social or environmental impact with a floor for financial returns(最低限度の財務的リターンは確保しつつ社会・環境的効果を最大化しようとする投資家群)"が生まれてきている。

報告書が示す今後の課題(Executive Summary p.6)は、
1)パフォーマンス計測の共通尺度の策定や、集団的行動や情報共有を促進する投資家ネットワークの構築
2)インパクトインベンティングを専門とする投資の需給マッチングプラットフォームの構築
3)インパクトインべスティングの対象となり得るだけの潜在的パフォーマンス(経済&社会・環境)を持つディールフロー(事業案件)の生成・発掘


Type AとTypeBの資金を組み合わせる、マッチングさせるスキームは、BOPにおける大規模な社会問題を営利事業を通じて解消しようとする上で、大変重要な役割を果たすだろう。すでに米国ではロックフェラー財団の支援を受けてGlobal Impact Investing Networkが立ち上がっているが、日本ではまだ散発的小規模な試みしか見られない。

日本においても、こうした新たな性格の投資プラットフォーム(多種多数の資金の出し手、つまり投資ファンドや慈善家・団体が集う空間)の創生というスケールの大きな取り組みに期待したい。世界益を念頭に置きつつ、社会・環境価値のプロと財務・経営のプロが協働するアンブレラ組織が何か構想できないか、考えてみたい。

今回のイシューについては、他の機会にさらに詳細に論じることとしたい。