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2012年7月9日月曜日

IBMはタンザニアで、サムスンはナイジェリアで


週刊アフリカビジネス第93号(有料レポート)によると、

●IBM: タンザニアの通信科学技術省と業務提携し、同国における技術活用の促進による経済発展に関し提携を結んだ。IBMのプレスリリースはこちら。

●サムスン電子:ナイジェリアにおけるソフト開発の中心的存在であるCo-Creation Hub (Cchub) に対し、様々な支援を行う旨のMOUを締結。


ちなみに上記Cchubの支援企業(パートナー)は下記の通りで、米国、北欧、アフリカ等多国籍の非営利財団やIT企業が名を連ねる。そこに今回サムスンが加わった。日本のIT企業は?












詳細は週間アフリカビジネス第93号(有料)参照。

2012年5月23日水曜日

ネスレのアフリカ戦略


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(Nestle南アのウェブサイトから)

「徒歩で、自転車で、タクシーで:ネスレはアフリカで事業拡大(By Foot, by Bike, by Taxi, Nestle Expands in Africa)」と題するこの記事(2011年12月1日)は、先進国や新興国中間層以上向けでは当たり前のモダンチャネル(卸しと量販店からなる流通インフラ)が存在しない領域(すなわち包括的市場もしくは低所得層層市場)での同社の取り組みを紹介している。以下、記事の要点。

■アフリカのチャネル:
アフリカでは都市から離れて暮らす人口も多く、道路自体もあったりなかったりする。一般の多国籍大企業が想定するような供給チャネルは存在しないし、物理的・経済的に構築できない。

■ネスレの「どぶ板営業」部隊:
南アのネスレ販売代理店であるデズモンド・マグワンバン氏は、手持ち金はタクシー代のみ、携帯2台、それに注文票の束を持って営業活動をしている。ヨハネスブルグでも最も治安の悪い地区である。「ここは私の金鉱だ」と同氏。他の通常の営業マンは首都の巨大スーパーの棚をネスレ製品で埋めるべく活動しているが、マグワンバン氏以下80人の営業スタッフは、南ア全土の極小店舗をターゲットにしている。それらの店舗では多くの場合小分けしたネスレ製品(ベビーフード、クリームパウダーなど)が売られている。こうした営業活動により、低所得層でのネスレ製品の認知度と人気は確実に高まっている。

■アフリカ市場の成長性:
ネスレがここまでの努力をするのにはわけがある。市場の成長性である。アフリカ開発銀行によれば、現在のアフリカ大陸人口の61%はいまだ一日当たり2ドル以下で生活する「貧困」状態にあるが、2060年までに、アフリカの中間層(一日当たり所得が4-20ドル、年間1000-5000ドル)は11億人に達し、アフリカ大陸人口の42%を占めると推定される。またIMFの推定によればサブサハラ地域の経済成長は2011年が5.25%、2012年には5.75%と予測され、これは地球全体の年平均成長率4%を上回る。

■他有力企業もアフリカにコミット:
ネスレだけではない。有力食品メーカーは一斉にアフリカ強化に向け動きを速めている。クラフトフーズは、バン部隊を仕立てて、南アの各地方の町の路上小店舗に直接供給するネットワークを構築中である。サムソン電子は太陽光発電で充電される電話を電力供給のままならないケニアやナイジェリアの地域に導入済みだ。コカコーラは小規模店舗への供給のため、アフリカ15か国3200の流通拠点を活用しているという。

■ネスレのアフリカ事業規模:
ネスレは新興国市場(含む包括的市場)からの売上比率が現在の30%から、2020年までには45%に達すると予測している。同社のアフリカでの売上高は、2010年に6.4%増大して33億スイスフラン(約36億ドル、約2,880億円)に達した。一方同期間に同社の世界市場全体の売上成長率は2%だった。世界総売上高(930億CHF)に占めるアフリカの割合は3.5%。

■ネスレのアフリカ投資:
過去5年間$850Mを投資し、現地製造、流通網の拡張、現地顧客の好みに合った味の開発を進めてきた。ヨハネスブルグの「どぶ板営業」部隊では、小規模店舗への売上が2011年6月から8月までの2ヶ月で20%増えた。また2011年の1-8月で、南アの小規模店舗でネスレ製品を売る店舗数は2倍に増え、ほぼ4500店に達した。ネスレの南ア販売責任者は現状をして「今の我々は計画の半分に達したところ」と言っている。

■ネスレ製品の販売営業の実態:
どぶ板営業で価格交渉は日常的である。商店主のバルア氏によれば、「ネスレの製品は品質も良いが値段も高い。チコリの根の飲料Ricoffyなどは、値段を下げるとあっという間に売れる」という。他のナイジェリア人の商店主は、ネスレ製品専用の棚を設けている。マグワンバン氏との交渉を通じ、この商店主は$450の注文に対して$30の値引きを獲得した。マグワンバン氏は売上の1%をコミッションとしてネスレから受け取るが、こうした値引きによって「より大きな金額の注文が定期的に取れるよう期待している」と語った。

■製品配送の実態:
こうした小口販売の配送は、そのほとんどが自転車によってなされ、これはネスレのアフリカ全土の配送の30-40%を占めるという。

■アフリカ・インドにおけるネスレの逆境:
ネスレの新興国事業も平坦ではない。ジンバブエのミルク事業では、事業の最低51%を自国の黒人が所有することを求める法律と取り組まねばならず、インドではボトル入り飲料水で競争に敗北し、撤退を余儀なくされた。そして70年代80年代、同社は有名な途上国市場での粉ミルク問題で不買運動を喫する。この経験から、同社は1981年、WHO(世界保健機関)による母乳代替製品の販売に関する規則を世界で初めて採択した企業となった。

■現地店舗の成長:
4年前、ヨハネスブルグのンジョマネ・ドリンクは掘立小屋だった。消費の伸びとともに、同店はマグワンバン氏からベビーフードを月$400仕入れるようになった。その店舗はいまや二部屋のコンクリート製ビルディングになった。

<解釈>
この記事を読むと、なぜ味の素が経営者のトップダウンでアフリカ市場に対してコミットしているかがわかる。サブサハラ・アフリカも、すでに世界企業の主戦場になってきており、そこに早期にコミットしないと、今後の世界市場における競争で不利になるとわかっているからだ。

2012年3月5日月曜日

アフリカビジネスに関する情報ソース

アフリカビジネス専門のコンサルティング会社(事業)が、それぞれ情報発信している。

1)㈱アフリカリサーチ(2010年2月設立)
「アフリカに関するビジネスニュースサイト AFRICA BUSINESS NEWS」はほぼ毎日配信のビジネスニュースが充実している。主席コンサルタントの大津志朗氏は長年のアフリカエキスパート。会社ホームページのギャラリーやインタビューに日付が入っていると、情報価値がもっと高まるのですが。

2)アフリカビジネスパートナーズ(2011年1月設立)
こちらは代表の佐藤重臣氏が個人で営む事業。すでに同氏のメルマガは紹介したが、現在は直接発行の月極め形式に体裁が変更されている。バックナンバーも入手可能。


2012年1月2日月曜日

小型風力発電のゼファー㈱、ベトナムで事業展開

国際協力の求人・就職・転職・キャリアサポートを行うdevexの日本支社ホームページの「開発ニュース」に、日本の小型風力発電機メーカーゼファー㈱がルビナソフトウエアおよび協同組合企業情報センターとの共同事業として、ベトナムに進出する計画が紹介されている。
■典型的なBOP2.0型包括的ビジネス
記事によると、ベトナム中部のホンラオ島に小型風力発電と太陽光発電を組み合わせた自立型電源を設置(将来は小型水力の組み入れも検討)し、自然に恵まれた同地で漁師が捕獲した海産物を冷凍保管する設備を運営する。これまでは非電化地域であるため冷凍・冷蔵保管ができず、余剰の海産物は廃棄されていた。本事業を通じ、内地はもとより輸出を視野に展開、今後はより高付加価値の海産物加工事業にも乗り出す計画だという。JICAの2011年度FS事業に認定されている(上限 5000万円)
この事業計画では、地元の漁師がバリューチェーンの重要なプレーヤー(供給)として組み込まれており、販売事業での新規雇用も想定される。さらに加工業まで発展した場合にも新たな雇用(生産)が現地で創出される。典型的なBOP2.0に該当する包括的ビジネスといえるだろう。

■当該国人材との人間関係の重要性
一つ重要な意味で興味深いのは、今回の共同事業者であるルビナソフトウエアの代表者(ブイ・トラン・ルオン氏)がベトナムからの留学生として東工大博士課程出身という点だ。実は今回の案件は、ホンラオ市長からルオン氏に直接持ち込まれたということだ。
なぜこの情報が重要かというと、途上国への事業進出の場合、現地情報は先進国に比べて圧倒的に不足しがちであるため、当該国出身者と協力関係にあることが極めて有効に作用するからだ。
例えば、これは純粋な企業事例ではないが、九州大へのグラミンクリエイティブラボ設置や、共同研究プロジェクト「開発途上国の社会情報基盤構築」の実現に役割を果たしたのは、同大のアシル・アハメッド特別准教授(バングラデシュ出身)である。
また、筆者が近畿経済産業局のBOPセミナーで講演した際、講演者のお一人だった㈱サニコン(浄化槽事業)の假谷社長(当時)が同様のことをおっしゃっていた。同社は、1997年に国際環境技術協力を目的にベトナムより研修生を受け入れ、ホーチミン工科大学の日本工業技術研究所設立に出資するなどした。それがベトナムとの人脈形成に決定的な役割を果たし、2008年のサニコンベトナム設立につながったという。
国費の研修生や留学生は一流の人材であることが多く、政府や各機関とのつながりも強い。そうした人材をまずは日本で受け入れてみることが、思わぬ大きな機会へつながることもある。何事もリアルオプション的発想で。

2010年11月3日水曜日

ゴドレジ財閥がチョットクールの配送網に郵便局を活用

先のエントリーで紹介した、インドのゴドレジ社製BOP向け冷蔵庫「チョットクール」だが、日経新聞2010年11月1日夕刊によれば、この6400円の冷蔵庫の配送網として、同国でユニバーサルサービスを実現している郵便局の配達網が活用されることになったそうだ。インド西部のマハラシュトラ州(Maharashtra)の郵便局と正式に提携。局員(約63,000名)が注文を受け、配達し、集金を請け負う(集配人8,600名)という。受注1件ごとの手数料として郵便局側は275ルピー(約500円)を受け取るとのこと。

2010年10月25日月曜日

2010 Ashden Awards: D. Light Design

ソーラーランタンのD.Light Design社は2010年の受賞企業でもある。

Ashden Award 2010にアップされている同社の事例紹介ビデオ(下記ページにリンクあり):

2010年9月28日火曜日

バングラデシュと中国の企業が合弁で低価格太陽光パネルを生産販売

Bangladeshi Auto Power Private Limited と Chinese Zhejiang Jinxi Solar Energy Equipment Company Limited が合弁でパネル生産に乗り出す。工場はバングラデシュの Gazipurに設置済み。生産するのは、50-1500Wで、価格は15,000-400,000 Taka(約18,200--486,000円)。300Wパネルは30,000 Taka(約36,400円)とのこと。

ちなみに300Wパネルの容量では、天井ファン2台と節電仕様の照明ランプ2ケを使用可能だという。




2010年7月24日土曜日

アフリカ研究調査概況2: D. Light Design社 (ダルエスサラーム・タンザニア)

 最新モデルKiran ($12)。パッケージに印刷されている公称の性能は、日中8時間の充電で、明るさLowで8時間、明るさHighで4時間の点灯が可能。現地で購入した製品により、実用上どの程度使えるのか現在試用中である。同社の最安モデル。他に、より光量が大きく、携帯充電ジャック付属のものなど、4モデルある。携帯の充電に特化した製品も発売直前。同社ホームページ:
http://www.dlightdesign.com/home_global.php

 同社は、二人のスタンフォードMBAが非電化地域の実態を目の当たりにして起業を決意した、社会的ミッションを掲げる営利企業である。そのミッションとは、「非電化地域の人々に電化地域と同等のQOLを実現することであり、その第一歩として、すべてのケロシンランプ(燃料油のランタン)を有毒ガスを出さない、安全で、明るい光に置換すること」にある。
 具体的目標として、同社のソーラーランタンによる照明の下で暮らす人を2015年までに累計5000万人に、2020年までに1億人にすることである。
 当研究室によるタンザニアでのインタビューでは、現地におけるチャネル開拓の3ステージ戦略について詳しく話を伺った。(今秋にはケース教材として慶應ビジネススクールより発行し、新科目"Strategic Management with Social Impact"で使用予定)

下記:今回の研究調査とは無関係の外部公開記事↓

記事1:共同創業者・CEO Sam Goldmanのインタビュー(リンク先Social Innovation Conversationsに音声ファイルあり。聞き手はStanford Center for Social Innovation。内容は、彼のケロシンランタンの下での原体験から起業に至る経緯、同社の基本理念など。)

利益と社会・環境的インパクトの両立について。収益性とインパクトはリンクしている。インパクトのスケールをあげるには、より大きなファンドへのアクセスが可能になるモデルを追求するべきだ、というポジションは印象的。本サイトの視点に非常に近い。「シリコンバレー発のソーシャルベンチャーとして」という自覚。

"Q: How do you balance the tradeoff between profitability and impact?

A: Impact and profitability are linked. The harder thing to get hold of actually is profitability versus time. Even the giant companies when they start up new divisions or go into new markets are usually not profitable for a while. Clearly we have to be profitable and clearly we have to come up with models that do not require us to sacrifice profitability in the name of impact; otherwise we are not going to do our job. The whole notion of creating a for-profit, venture-funded organization rather than an NGO (non-governmental organization) or more social-sector group was that the scale of the problem is measured in billions. If we want to grow to that scale, we have to do it backed by massive amounts of capital that can fund the inventory, fund the growth, and fund the new offices. I do not really see it as too much of a tradeoff, to be honest. We can affect a lot of lives as an NGO, but if we want to affect a billion people’s lives, it has to be done with a different set of models.”


" We hope one day to be the first social enterprise ever to go public." (いつの日か、株式公開を果たす最初の社会企業になれることを望んでいるのです。)というフレーズが強く印象に残る。資本市場へも正対する社会企業の姿。

2010年7月23日金曜日

アフリカ研究調査概況1:パナソニック エナジー タンザニア


 同国最大の都市ダルエスサラームにある。6月最終週から始まった今回の調査で最初に訪問した企業。従業員数は正規110名、臨時50名の計160名。パナソニックは2010年になってナイジェリアに駐在員事務所を再開設したが、このタンザニア事業は設立が1967年であり、40年余りの歴史を持つ。68年から同社は電池製造を開始、72年にはラジオ製造も始めた。その後電気蓄音機(フォノグラフ。レコードプレーヤーとラジオが合体したもの)、扇風機、ラジカセと生産品目は拡大し、1975年からはラジカセの部品内製も開始する。しかし、1978年のタンザニア・ウガンダ戦争を機に同国の外貨が底をつき、同社の生産は電池とラジオのみに縮小される。その間、企業の国有化の波に飲み込まれることもなく、現在まで操業が続いている。
 現在の主力製品は単一(一本450タンザニアシリング。20-30円。主に家庭用大型ラジオ用。シェア35%)と単三のマンガン乾電池(一本250タンザニアシリング。主にポケットラジオとテレビリモコン用。シェア90%)である。
 単三電池の成功は、写真にもあるように、一本づつのばら売りを可能にした小分け包装にある。これまでは、4本まとめてシュリンクラップし、箱に入れて小売店のカウンターの下に置かれていた。これをばら売り包装にしたことで利点が二つあったという。
1)バラで買った後に包装が破れていると、その電池が新品かどうか見分けがつかなくなり、消費者が警戒して買わなくなる、という問題があった。これを解消。常に新品の保証ができるようになった。
2)これまではカウンターの下に隠されていた箱売りが、店の棚の前面に常時吊り下げられるようになり、視覚に入りやすくなった。
 今後この事業には、ソーラーランタン用二次電池の需要も発生してくると考えられ、これまでに営々と築いてきた販売チャネルを含め、対BOP市場への布石として活きる時が来ようとしているのではないか。

2010年7月14日水曜日

「グラミンユニクロ」 2010年10月に設立

7月14日 産経新聞

1.設立:2010年10月(予定) 資本金10万ドル(約885万円)(9月をめどに資本金5400万円でソーシャルビジネスを立ち上げる現地子会社を設立し、そこから投資する。)
2.資本構成:グラミン銀行1%($1000)、ファーストリテイリング99%($99,000)
3.事業内容:現地の貧困層向けの安価な衣料品を製造・販売する。女性用の下着や学校の制服などを製造、グラミン銀行のMFを利用する農村部の女性を販売員として活用する。売価は平均1ドルとのこと。
4.雇用規模:初年度250名、3年後に1500~2000名を目指すという。大半は販売にあたる農村部の女性という。


<コメント>
 ファストリといえば、企業価値増大へ向けたアグレッシブな成長志向が大変強い、上場企業のお手本のような存在だけに、「株主配当を一切行わない」というグラミン流「ソーシャルビジネス」を行うと聞いた際、率直な感想として多少の唐突感を禁じ得なかった。だが本件の投資規模から考えて、本業を活かした純粋な社会貢献活動(なおかつ副次的経済効果は大変大きい)ととらえれば、その意味をすんなりと理解できた。

 そもそもこのグラミンユニクロは、「株主に配当しない」ソーシャルビジネスという時点で、本フォーラムの対象から厳密には外れるが、今回の事象は1)低労賃を活用した世界的生産拠点としての事業(先に発表された$80M規模の香港企業との合弁)と、2)BOP2.0型の派生事業(本件。配当は行わない)を同じ国の同じ業界で同時進行させている点で、興味深い考察対象になる。

 報道によれば、この事業自体から得た収益は「雇用拡大」に再投資されるという(「ソーシャルビジネス」なので必然)。そもそも売値1ドルであれば、本体への直接的利益貢献はたとえあったとしても微々たるものであり、それが狙いであるはずがない。すでにいわゆる「チャイナプラスワン」として、バングラデシュを第二の世界市場向け生産拠点と定めたファストリにとって、この小規模社会貢献事業には以下のような役割もしくは波及効果があると思われる。

1)社会価値創出の肯定的企業イメージ(対資本市場・世界製品市場):
 数年後に雇用創出数が2000名の規模ともなれば、住友化学の合弁事業(タンザニア)による4000名に匹敵しうる。貧困層が「寒さをしのげる」(ユヌス氏)という製品そのものによる貢献と、事業プロセスを通じた雇用(所得)の創出は、BOPにおける本業を通じた問題解決の望ましい姿に近づく。もっとも、この事業自体は、利益をたとえ生んでも配当をしない「ソーシャルビジネス」であるがゆえに、本フォーラムで標榜する営利と社会性の追求という範疇には入らない。とはいえ、「本業を通じた貧困解消」がいかなる規模にせよ達成される点において、同社の企業イメージを向上させるだろう。

2)同国における企業市民としての資格(対バングラデシュ国内世論):
 本事業は、ファストリ全社の投資規模(342億7300万円、2009年度投資活動によるキャッシュフロー実績)や、バングラデシュに設立済みの縫製事業への投資額(7億6千万円)からすれば、極めて少額の資本金(885万円)である。賃金紛争が発生しがちな同国内で大規模生産拠点(本件とは別)を運営する上での、リスク軽減費用として理解できる。

3)低所得地域における地産地消モデルの実験・学習機会:
 BOP層市場の莫大な潜在市場規模と成長性を考えれば、超低コスト生産と販売チャネル構築の学習機会(および他国の低所得セグメントへの応用、たとえばインド農村部)

4)今後急成長が見込まれる同国農村市場への先行的ブランド浸透(および他のアジア市場への波及、たとえばインド市場)

 ちなみにグラミンダノンモデルを参考にすれば、農村部と首都ダッカで差別価格(農村では安く、首都では高めに)を実施し、早期に採算に乗せることも試行対象になるかもしれない。

 先のエントリーで、マイクロファイナンスを活用した貧困解消に関し、単にMFによって資金融通をつけるだけでなく、資金活用の対象となる「しごと」をセットで導入し「資本蓄積」を進めることが重要と書いた。そしてその方法論の一つとして「農村部への大量生産工場設置とそこから生まれる製品の販売チャネル構築をワンセットで行うことだ。この場合、工場設置という大規模投資は多国籍企業や地元企業が行い、企業側に不足している販売チャネルはMFによって小口仕入れをする販売員を募って育成する。雇用は工場勤務と販売員双方で生まれる。グラミンダノンはこれに近い。」と述べた。ユニクロの今回の事業もこのモデルに極めて近い。ダノンとの違いは、同国内でユニクロが大規模営利事業を他に営んでいることだ。

 総じて、この事業をファストリのバングラデシュにおける非営利の社会貢献事業(日本語で言うところの「CSR」)と考えれば、グラミン流「ソーシャルビジネス」の形式を選択することは、企業広報的観点からは、かえってこれ以上ない効果的な打ち手と思われる。

 なお、これまでに設立された(もしくは設立が決まった)グラミン銀行と外資多国籍企業の合弁事業の出資比率は、以下の通り。

1)グラミンフォン(Telenor 当初62%、上場後55.8%、グラミンテレコム 当初38%、上場後34.2%)
2)グラミンダノン(Danone 50%、グラミン銀行 50%)
3)グラミン ヴェオリア ウォーター (Veolia Water AMI 50%, グラミンヘルスケア50%)
4)グラミンユニクロ(ファーストリテイリング現地子会社 99%、グラミン銀行関連企業1%)

 本件においてグラミン銀行の出資比率が突出して低いことの意味については、今後の本事業の展開を学びながら別途考察する必要があるだろう。他のケースと比較して、両者の交渉力のバランスに何らかの特徴があったのかもしれない。

2010年6月16日水曜日

中国の清華大ビジネススクールにおける「BOP」研究(その2):南京九康の事例

南京九康生物科技发展有限责任公司(Nanjing Jiu Kang Biological Scienceand Technology Development Co., Ltd)

南京州政府保有のVCが70%、蘇州九康30%出資。いわゆるGOCO(government-owned, company-operated)形式の事業。ニームの木の果実から、バイオ殺虫剤、バイオディーゼル、有機肥料の製造販売を行っている。同社は農家にニームの種子と土地選定力、栽培技術を提供し、農家がニームの木を栽培、同社が新しい化学合成の技術で天然素材の殺虫剤を製造・販売する。40-100名の農家の老人・女性が新たに雇用され、トータルで約1000万円程度の年収増をもたらしているという。

2010年6月12日土曜日

BCGレポート

すでに1年以上前ですが、昨年のダボス会議でボストンコンサルティングの手による、「BOP」での事業機会に関するレポートが出ているので、紹介しておきます。

2010年6月4日金曜日

「BOP」向け冷蔵庫「チョットクール」(インド、冷蔵庫版『ナノ』?)

【写真】

インドのゴドレジ・ボイス社(Godrej & Boyce Mfg. Co. Ltd)が開発。チョットはヒンズー語で「少し」の意味。約6,400円(3,490~3,790ルピー)。容量43リットルの半導体ベースの小型冷蔵庫で、コンプレッサーも冷媒も利用していない。12ボルトの直流電圧で機能し、バッテリーでもインバーターでも、太陽エネルギーでも機能する。庫内を5-15℃に保つ。大ぶりのクーラーボックスといった体裁。販売には農村部の女性たちを活用し、販売手数料収入をもたらすモデル。(その後郵便局と提携)

JICAが支援している。JICAの記事の中で、ゴドレジ社副社長が破壊的イノベーションの概念などを織り交ぜながら、本ビジネスを通じて生まれた「BOP層への3Lビジョン」と、包括的(inclusive)成長に向けた現地密着の「システム・ダイナミクス・モデル」(事業開発プロセス)を披露している。

【画像】

2010年10月からの正式販売を報じるニュース(リンクダウンしてます):
NHKのBizスポでも6月2日に放映された。
「チョットクール:ゴドレジ社の『ナノ』」

Fighting Poverty in Africa: Doing Business in Ghana

ガーナ:ビジネスによる貧困解消

Youtubeへのダイレクトリンク

Africa: Open For Business

このドキュメンタリーシリーズはBOPに限定されたものでは全くないが、アフリカにおけるビジネスドキュメンタリー。National Black Programming Consortium製作。セネガル、ナイジェリア、ウガンダ、ガーナ、レソト、ザンビア、コンゴ、ソマリアのエピソードがある。アフリカにおけるBBC視聴者による世界ドキュメンタリー投票で2006年第4位になった作品。ちなみに現在NHKスペシャルでは、アフリカドリーム全3回シリーズが放映中。


Africa: Open For Businessはこちらで視聴可能。

2010年6月2日水曜日

インド ヤクルト・ダノン社の発展

ヤクルトとダノンの合弁会社がインドでヤクルト販売を開始して3年目に入り、販売は年倍増ペースで成長中という。

2010年5月9日日曜日

Access to Energy(日本語字幕版)

「エネルギーへのアクセスは、『BOP』での生活にとって単に電灯があるかないかという問題をはるかに超える重大性を持っている。企業は社会セクターと協働することにより、利益を上げながらこの問題の解決に重要な役割を果たせる」、というテーマで制作されたビデオ。すでに紹介済みだが、本フォーラムの主旨を体現するメッセージを含む内容なので、このたび翻訳と字幕処理を施した↓



YoutubeへのダイレクトURL:
http://www.youtube.com/watch?v=uKJD10RIB8s

2010年3月2日火曜日

1組5円の蚊取り線香:フマキラーの事例(インドネシア)

日本企業の事例。現地調達率を高め、利益の出るモデルを実現。現地で1200名の雇用も創出。HRマネジメントに小集団活動を導入して奏功。

http://diamond.jp/series/genki/10008/

2010年2月17日水曜日

BOPにおける事業開発の検討ステップと確認項目(社会価値と経済価値へのダブルコミットメントを前提として)

 BOPにおける市場需要調査やビジネス提案が活発に行われるようになっている。通常の事業開発との相違は、企業における投資意思決定(主にビジネスの視点)だけでなく、BOPにおける社会的価値増大(主に開発の視点)との両立をいかにデザインするか、という部分であろう。その場合、どのような項目を調査し、確認しながら事業モデルを構築すべきなのか。純粋に実務的観点からその調査ステップと確認項目の概要を述べてみたい。一つの試案としてここに記録し、今後Wikiのように都度ブラッシュアップしていく。

1.地理的市場の選定と当該域内におけるBOPの特定。
 BOPの特定はPPPベースの一人当たり収入が3000ドル以下であるかどうか。次に当該BOP層の総購買力(つまりほぼ市場規模)とその成長性の推定(BOP人口×単位期間あたり可処分所得per capita。こちらはPPPベースでなくてよい。以下同じ)。また非公式経済(自給自足)の内容把握と貨幣換算の規模も推定しておく。ここで、B2C事業も想定して、当該BOP層の1世帯あたりの平均可処分所得(PPPでなく名目ベースでよい)と消費内訳(光熱費、通信費、食費、医療費、交通費等、現地の特性に即した分類で)を算出・調査しておくことが重要(→製品・サービスの価格決定時の重要指標)。BOP2.0も視野に、現地での労働賃金水準も確認。基本的マクロ経済指標の変動率の推定、P・E・S・T分析は与件として当然行なっておく。

2.重点セクターの選定
 セクター間優先順位付けの基準は、どの主体が市場調査をするかによって異なるだろう。企業が主語であれば、自社の経営資源の賦存状況でセクター選定は大きく左右される。セクターが選定されたら、当該BOP市場における当該セクター市場規模(年間売上高ベース)とその成長性の推定(規模推定の根拠には、BOP人口の単位期間あたり消費内訳データが使える。)を行う。

3.現状調査
 当該セクターにおける製品・サービスの現状調査とunmet needsの把握。BOP顧客に対する市場ニーズ調査、現地NGOに対する社会性を帯びた市場ニーズの調査。販路としての活用可能性の確認。既存進出企業(現地企業含む)の製品・サービス調査(機能、品質、価格、売上高、コスト構造、販路、総じてビジネスモデル)。十分な期間の現地調査が必要。エンドユーザーニーズの把握とともに、その解消にいくらまでならお金を出すつもりがあるか、実際出せるのか、も確認調査する。

4.ビジネスモデルの策定
 新製品・サービスをベースにビジネスモデル(ファイナンシャルモデル、オペレーションモデル、戦略モデル)を組成する。 特に、ファイナンシャルモデルの構築には必要に応じてMFIsを、オペレーションモデルの構築には、必要に応じてチャネルとしての現地NGOsを組み込んでおく。同時にマーケティングミックス(4Ps)の構築。十分な原価推定と採算性分析を行う。推定はその後間違いなく狂うが、修正対象となるベースモデルを作る必要がある。
 この段階で、同時にBOP2.0の可能性(現地顧客層の生産者・販売者としての参画可能性)を追求する。もしも2.0がNGであれば、BOP1.0にとどまるため、「貧困市場からの搾取」という非難を回避するだけの社会性が製品・サービスそのものにあるか否かを確認。なければ廃案。

5.当該ビジネスモデル(及びそこで販売される製品・サービス含む)に対する4As (Awareness, Availability, Affordability, Acceptability)のチェック。Jamie Anderson/Costas Markidesが示した4Asの考え方(Strategic Innovation at the Base of the Pyramid, MIT Sloan Management Review)。

6.当該提案ビジネスモデルの社会的パフォーマンス(貧困の削減度やHDIを応用して推定)・経済的パフォーマンス(NPVベース)の推定・評価。さらに、Ted London (2009) Making Better Investments at the Base of the Pyramidのモデルをベースに、当該事業が売り手、買い手、地域コミュニティーに対し、経済・人的能力開発・社会的関係性の3側面で各々いかなる影響を与えるか、効果アセスメントを行う。

7.複数提案間での優先順位づけ(後述。社会的価値・経済的価値フロンティアにおける位置づけと意思決定主体の属性とのマッチング)

最低限、上記のようなステップと項目で進んでいく必要があるように思われる。もちろん、こうした推定に基づく事業モデル構築は、不確実性ゆえにほぼ間違いなく、進行に従って現実と乖離していく。しかしながら、事業開始段階における初期資本投資と経営資源配分を可能な限り合理的に決定するためには、こうした事前意図的計画が必須となる。それに加えて、不確実性に柔軟に対処する「創発戦略」が必要になることは、戦略理論群がかねてから複合的に示唆するとおりである。この検討ステップは、今後継続的に精緻化を試みていこう。

BOPにおける事業を題材としたケース教材

昨今、世界のビジネススクールではBOPにおける事業活動を題材にしたケース教材が作成され、MBAならびにエグゼクティブ教育に活用されている。(MBA教育では、伝統的に企業の具体的事業活動を記述した「ケース」を題材として討論する、「ケースメソッド」という学習法が主に採られている。慶應ビジネススクールもしかり。)

既に手元にあるBOP関連のケース教材をリストアップしておく(下記のケース1~8は、現在慶應ビジネススクールおよび日本ケースセンターで翻訳プロセスに入っている)。他に気がつけば随時挙げることにする。

1. "Deposita- Whether to dominate the value chain or not" Richard Ivey School of Business, The University of Western Ontario, Case#:908M72 (南アフリカ、フィナンシャル・サービス)

2. "Farmacias Similares: Private and public health care for the base of the pyramid in Mexico" Harvard Business School, Case#:9-307-092 (メキシコ、ヘルスケアサービス)

3. "Microsoft's Unlimited Potential (A)" Harvard Business School, Case#: 9-508-072 (世界、ITサービスその他)

4. "ApproTEC Kenya" Harvard Business School, Case#: 9-503-007 (ケニア、適正技術に基づく汲み上げポンプその他)

5. "Cementing the bottom of the pyramid: a new direction at CEMEX?" Darden Business Publishing, University of Virginia, Case #: UV0665 (メキシコ、セメント・住宅用建材)

6. "UNITUS(A): Microfinance 2.0 - Reinventing an industry" Stanford Business School, Case#: SI-87A (BOP、マイクロファイナンス)

7. "BRAC" Harvard Business School, Case #: 9-504-012 (バングラデシュ、NGO)

8. "The BRAC and Aarong Commercial Brands" Harvard Business School, Case#: 9-504-013 (バングラデシュ、NGOによる消費財製造販売)

9. 「グラミンダノンフーズ」 慶應義塾大学ビジネススクール, Case#: 901017343 (バングラデシュ、ヨーグルト製造販売) forthcoming