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2010年10月19日火曜日

雪国まいたけとユニクロ

先にグラミンユニクロへの感想は述べたが、同じくグラミンとの提携でも、今回はその狙いが異なっている点が興味深い。

資本金は同じ10万ドルだが、グラミンユニクロの場合はバングラデシュでの縫製事業本体での投資額(800万ドル)と比して非常に小さく、現地での企業市民としての資格を取得するという意味合いがより強いと思われるが、雪国まいたけの場合は、緑豆の生産量確保が主たる(全てではない)狙いで、当初から大規模農場(500-1000ヘクタール)で栽培し、約900名の雇用を生むという。また、グラミンの出資は25%で、ユニクロとのケース(1%)よりもはるかに多い。その背景は知る由もないが、外から眺める限りにおいて、グラミンはこの事業により実質的意義を感じており、関与度も高いことが示唆される。

もちろん、本件もグラミン流「ソーシャルビジネス」であるから、当該事業からは一切株主に配当されず、利益はすべて事業に再投資されるのがルールだ。

私は、グラミン流のソーシャルビジネスは配当が投資家になされない点で、新たな資金を吸引しづらく、スケールアップに限界があるのでは、(配当を行う場合と比べて)、と考えてきた。そしてこの点に関する考えはおそらく変わらない。だが一方で、この「ソーシャルビジネス」を金銭的リターンを直接得る源泉と捉えずに、安定的に原材料を調達する機能と考えれば、なるほどこの形式にも活用余地があると感じられる。マジョリティ出資者である雪国まいたけには、配当こそ皆無だが、安定的で相対的に安価な原材料確保という便益や貴重な学習機会、そして「ソーシャルビジネス」であることの対価としてグラミンとの関係性(国内販売での認知度と企業イメージ)が確保される。

配当は行わなくとも、利益の再投資や増資によって、生産機能としての「ソーシャルビジネス」をスケールアップしていく、という活用法である。ただし、生産物の買い取り(移転価格)がフェアートレードの精神で行われなければならないのはCSRとして当然のことである。

2010年7月29日木曜日

SKS Microfinace の株式公開

 既報の通り、インド最大手のMFIであるSKSが株式公開。CEOは有名なVikram Akula氏。募集開始は7月28日、機関投資家向けの締め切りは7月30日、個人投資家向けの締め切りは8月2日である。発行株式数は1,680万株。同社は発行価格帯を 850 to 985 rupees ($18.20 to $21.10) と設定している。よって調達資金規模は1株20ドルとして約336M(約300億円)となる。なお、借り手、主に農村の女性が所有する株式の割合は上場後11%に(上場前は40%)。

 このインドで最初(世界では3番目。第1号は2007年メキシコのBanco Compartamos SA)のMFI上場に対しては、賛成の立場と反対の立場があるようだ。

 賛否それぞれの基本的立場は本Blog4月10日で既報の通りだが、今回はグラミン銀行のユヌス総裁が明確に反対の立場で発言しているので、今一度まとめると、

<賛成>
1.CEO Akula氏(1998年、当時有数のMFIが資金調達難に苦しんでいるのを見て、政府資金、補助金、慈善寄付に依存しないMFIを目指してSKSを創業):貧困層への無担保少額融資サービスを持続的に拡大するには、資本市場からの資金調達が必要である。
 新世代のMFIとして、わが社は商業型アプローチによって、従前の方法に比較し、はるかに大きな資金をはるかに多くの貧困層に届けることができるようになった。その意味において、社会性と経済性の間にコンフリクトはないと考える。

2.Xavier Reille氏(世銀が支援するマイクロファイナンス関連のシンクタンクCGAPの専門家トップ):さらに多くの貧困層に資金を提供するために上場することは、不当な利益をむさぼることを抑止するに十分なガバナンスが機能しているのであれば、望ましいことだろう。2-3年以内に借り手の代表がボードメンバーになるかどうかを注視したい。

<反対>
1.Dr. Muhammad Yunus、グラミン銀行総裁:上場は、マイクロファイナンスの理念に反している。上場することにより、貧困層からお金を儲けられるエキサイティングな機会があるという、メッセージを送ることになる。私にとっては不愉快(repulsive)な話だ。MFとはお金のない人々がその自身のお金を自分たちの元に留めておくためのもので、それを金持ちの方へ向けさせるためのものではない。
 マイクロクレジットは、お金儲けの機会として示されてはならない。それは貧しい人々の生活にインパクトを与える機会なのである。


 今回の上場に先立って、創業者のAkula氏は所有する株式の一部を売却して$10Mを手にした。同氏は、その件を聞かれて記者への返答の際、同社職員へのストックオプションにも言及し、世界レベルの報酬を自社の社員にも、と強調した。だが、貧困層を対象とした事業を通じ、創業者や上場前に投資したPEが莫大な経済的リターンを享受することへの批判は強いようだ。
 富裕層投資家のお金が資本調達の形で貧困層向けの無担保融資へ流入し、そこで生み出されたリターンがどのように分配されるべきか(配当の問題)、またキャピタルゲインの源泉をどうとらえるか、という点に議論は集約できるだろう。
 ユヌス氏はまた、MFの利息を一般にもっと低くすべきだと主張しており、それへのAkula氏の反論(バングラデシュの地理的密集性からくる運営コストの違いと、インドでは許されていない、MFIが貸与した資金をそのまま預金させ、新たな貸し出しの原資とすることがバングラデシュでは可能なこと)もある(WSJ紙)。

<コメント>
 はたしてMFIの上場による資金調達は「正しい」のか、「正しくない」のか。さらにその調達資本へリターンを返すことは「正しい」のか「正しくない」のか。こうした問い自体が私にはむなしいものに思える。
 個々の社会的・経済的行為に込められた個々人の真意はそれぞれに異なるものだ。つまり、社会性実現のために利益創出モデルを活用しているのか、利益を追求するために社会性の高い事業を利用しているのか、個々の経営者の動機に占めるそれらの割合はどうかなど、外からは判断が困難である。そしてその動機の割合に応じて「正悪」が判断されるというのもうなづけない。利益の一端がリスクを取った株主へ還元されること自体を社会性追求の見地から忌避すべきか否かについても、見解は分かれるだろう。
 こうした主観的価値判断の是非を問うよりも、事象の全体構造がもたらす社会的・経済的効果をできるだけ客観的に評価する方向で考察すべきではないか。
 私の感覚は上記世銀系コンサルタントに近い。上場したとしても、資本市場での四半期ベースの業績向上圧力を配慮するがあまり、マイクロファイナンスの精神を踏み外して、不当なレベルの高利貸しや、見境のない安易な貸し出しとデフォルトの山に陥ることになれば、そもそも事業の健全な持続的成長は損なわれ、一挙に資本市場の信頼を失うだろう(コーポレートガバナンスの重要性)。
 確かに上場を機に創業以来の一部株主は巨額のリターンを手にすることになるが、それは元本保証のない大きな経済的リスクを取ったことへの経済的報いであり、正当なものである。また、社会性(マイクロファイナンス自体が現実に貧困解消に役立つか否かの議論は別)の高い事業の規模拡張に必要な資金を外部資本市場から調達することを選択するならば、その対価として相応のリターン(継続的利益創出によるキャピタルゲインと配当)を払う(もしくは目指す)こともまた必然・当然であろう。
 貧困を解消するという活動を、「倫理的道徳的に崇高な価値を希求するものであり、商業主義の“汚れ”からは決別しているべきだ」という価値観は一般的にいまだ根強いと思われる。人間には思想の自由があり、それを全く否定はしない。一方私の感覚では、企業家の利益追求と良心に従い、卑近な商業活動によって社会問題を解決していくことが目指されて「も」、違和感を感じない(これがすべての解決法と言っているのではない)。社会問題(換言すれば社会ニーズ)の多くは、ビジネスに関わる者が、企業の社会責任(藤井氏の定義)を果たすことを前提に、当然のように解決を視野に入れて活動して「も」何も珍しくなく、逆にその解決のための行動が特別で神聖不可侵なものであってはならないように思う。もちろん、企業がより積極的に貧困解消等、社会問題の解決を目指さなくても何らの法的・倫理的責めを負わないことは、キャロルの文献紹介で指摘した通り。「多元的アプローチの妥当性」と「利益」の意味・意義については過去のエントリー参照。

2009年9月27日日曜日

ユヌス博士が米ライス大でcommencement speechをする

有名人の卒業式スピーチといえば、スティーブジョブズのスタンフォード大でのものが有名だが、ユヌス氏はどのような話をするのだろうか。ところで、このジョブズのスピーチは、ビジネスに関わる人間にとって、すべての若者にとって、大いなる勇気を湧きあがらせるものです。

2009年9月16日水曜日

「ムハマド・ユヌス不評の理由」

こうした話は常に賛否両サイドの話を公平に聞くことが必要であるが、このような認識が少なくとも何名かのバングラデシュ人に存在することは事実なので、それは知っておいてよいと思う。

「貧しい農村女性の自立支援のためのマイクロクレジットに見えるが、実態は、「グラミンの光と影」で書いたような、女性心理を巧みに利用した高利貸しであり、法人税も無税でありながら、利益を社会還元しないユヌスに対しては、ベンガル人の大半は厳しい見方をしているようだ。」

本エントリーをご覧になって、この批判とは逆のお考えの方、もしくはこうした批判が出る背景についてご存知の方はぜひコメントしていただければと思います。

2009年8月22日土曜日

2009年7月21日火曜日

インド前大統領がグラミン式のマイクロファイナンス導入を希望

第11代インド大統領だったカラーム博士がバングラデシュを訪問、ユヌス博士との会談の中で、農村部におけるグラミン型のマイクロクレジットプログラム導入の希望を表明。

Kalam wants India to adopt Bangladesh's Grameen Bank model

Dhaka (IANS):

http://www.hindu.com/thehindu/holnus/002200907201040.htm

2009年7月1日水曜日

バングラデシュ研究調査

 本フォーラムメンバーは、6月下旬から7月初旬にかけ、バングラデシュで研究調査を行なっています。企業の視点から、BOP市場におけるITを活用した成功モデルを探索するためには、まず現地NGOと企業が連携している事業活動や、IT産業の実態を知ることが先決と考えました。今回は世界最大のNGOであるBRAC、同組織の出資するbracNet、現地IT企業(ハード機器輸入企業とSIer)、Grameen Bank、Grameen Phone社、Grameen Telecom社、Grameen Danone社にてインタビュー調査と実態見学を行なっています。
 本研究調査から得られた知見については逐次本フォーラムにて公開していきます。

2009年6月12日金曜日

未来への提言 グラミン銀行総裁 ムハマド・ユヌス 〜世界を救うソーシャル・ビジネス〜

NHK「未来への提言」と言う番組の中の一話。
2006年のノーベル平和賞受賞者、グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌスの特集。

 内容は本ブログでも紹介している「貧困のない世界を創る」とほとんど変わらないが、実際のバングラデシュの農村の状況やグラミンダノンのヨーグルト工場などが映像で紹介されており、活字で読むよりも臨場感がある。やはりTVの表現力はすごい。

 サブプライムローンに端を発する世界同時不況、金融危機を行き過ぎた利潤追求の結果だと非難し、社会的価値を追求する「ソーシャルビジネス」による新しい資本主義の形があるのではないかと、ユヌス氏は語る。
 経済学で定義される人間、企業は自分のことしか考えない、利益だけを追い求める存在だが、実際はそうではない。我々は人のためになることをしたいと思 い、人助けをすることに喜びを感じる。今までの資本主義は我々の半分しか反映をしておらず、ソーシャルビジネスが残りの半分である。

 グラミン銀行を中心として、グラミンダノン、眼科病院、グラミンシャクティなどの紹介がされている。いずれも社会問題の解決を目指すソーシャルビジネスであり、グラミンダノンは子供の栄養失調、眼科病院は白内障の治療、グラミンシャクティはソーラーパネルによる電気の普及をその事業目的としている。
  ソーシャルビジネスとは利益最大化を目的とするのではなく社会問題の解決を目的としており、出資金は利益が出れば回収出来るが配当はされない仕組み。グラ ミンダノンはソーシャルビジネスとして運営されており、CEOが株主に報告するのは売上や利益ではなく、ヨーグルトの販売によって救うことが出来た栄養失 調の子供の数だと言う。

 大企業との協業の話題が多いグラミングループだが、VolksWargen、addidasとも協業を模索しているとのこと。大企業と組むメリットは彼らの技術・ノウハウを活用して少ない投資で大きな効果を上げるため。

 さらに道路を造ったり、橋を造ったりすることも計画しているらしくその活動範囲は政府と重複する。その点については次の様に述べている。政府は民意に支えられた存在であり何かを実行するには合意形成が必要で、そのために動きが遅くなっている。よって個人の決断ですぐに実行に移れる我々が事業としてやっている。双方にとって有意義な競争であり、政府がやるべき範囲だから我々は手をこまねいているというわけにはいかないとのこと。
 ちなみに橋のビジネスモデルは企業や団体からは交通料を徴収し、貧しい住民は無料で通れる様にするという計画のようだ。上記の眼科病院も裕福な人は手術費が1回25ドル、貧しい人は無料というテーブルになっている。日本では政府でやっているような公助、互助の仕組みをグラミンが代わってやるというイメージだ。

 所感としては多国籍企業の立場からグラミンとソーシャルビジネスをする目的がいま一つ分からなかった。利益を上げつつ、社会問題も解決するというのであれば良いが、利益が上がらない。出資したお金は5年〜10年で戻って来ると言うが、利息がつかずに戻ってきたのではそのお金の価値は目減りしてしまっている。
 良いことをしているのだから良い、と言うのであれば、寄付やCSRと変わらない。ダノンは自社の評判を良くするためにグラミンと組んだのか?自社の社員のモチベーションアップのためなのか?(⇒「ダノンの狙いは戦略的学習」参照)

 もしそうだとするならば、それはsustainableではないし(ダノンの本業の業績があやしくなればコスト削減の対象となり撤退)、scalableでもない(拡大すればするほど損が増える)。
 あやしい金融商品を買うよりもソーシャルビジネスに投資をした方が投資家にとってもリターンを期待できるという形にまで持っていくことができれば、社会問題の解決はより促進されるのではないだろうか。そのような仕組みを作ることは出来ないのだろうか。