2012年5月22日火曜日

味の素㈱伊藤社長のアフリカ戦略

すでに本ブログでは、サムスン電子(韓国)とZTE(中国)のアフリカ市場戦略に言及しているが、味の素(日本)の伊藤社長が本日(2012年5月22日)の日経朝刊で同社のアフリカ戦略について述べている。

■全社の経営目標
売上高営業利益率(11年度6%)とROE(11年度7%)を来期(13年度。14年3月期)にはそれぞれ1%高める目標に向け、構造改革を進める。

■東南アジア・南米
すでに欧米勢に近い利益率を上げている。販売は順調で、今後東南アジアと南米を合わせた利益は日本を超えるだろう。なお、年内にミャンマー工場を再稼働させ、事業を復活させる。

■アフリカ
 5-10年先を見据えた「仕込み」も着実に進める。焦点はアフリカ。従来の西アフリカ(ナイジェリア等)に続き、大陸の北部・東部にも進出する。
1991年に進出したナイジェリアでは2011年度に売上高が100億円を突破した。すでに現地の生活必需品に近付いている。同国での「味の素」の年間販売個数は20億個になった計算。
3年以上先になるが、アフリカでの「味の素」は現地生産に切り替えたい。

<補足>
味の素の連結売上高は1兆1973億円(2012年3月期)、海外売上高は3824億円(対売上高比率31.94%)。ナイジェリア一国での売上高100億円は、海外売上高の2.62%、連結総売上高の0.84%にあたる。
伊藤社長は、アフリカ市場が同社の中長期戦略にとって重要な柱であることを言明している。昨今はようやくアジア新興市場(ボリュームゾーン)へ本腰を入れようという企業事例が続くが、日本にもその先を行く企業がいることに注目したい。
味の素にとっては、CSV(共有価値の創造)を全社的に掲げるネスレが地球規模市場における仮想敵となる。ネスレの連結売上高(2011年度)は83642(百万スイスフラン、約7兆259億円)。内「アフリカを含む」新興市場全体が総売り上げに占める割合は現在30%で、同社は2020年までにそれが45%に上ると予想している。(近々ネスレのアフリカ戦略をWSJの記事からアップ予定)

日本能率協会 BOP懇談会報告書がダウンロード可能に

当サイト発起人の岡田が執筆を担当した報告書:

日本能率協会「BOPビジネスに関する懇談会」研究報告書

『開発途上国低所得層(BOP)におけるビジネスの実現と成功条件について』
(2011年3月24日)

下記のURLでダウンロード可能となりました。
http://www.jma.or.jp/activity/pdf/bopreport.pdf

神戸大三品教授のメッセージ

5月16日の日経朝刊32面(広告企画「選択の時代」)に、神戸大三品教授(専門:経営戦略)のメッセージが出ている。共感を覚えるので部分的に要約・加筆しておく。(⇒部分は岡田記)


■経営者個人の力量がものを言う時代
「社員に委員会を作らせて、事業展開の方向を考えさせる経営者がいるが、そういう経営者は降りたほうがいい。自分自身の責任でこれで勝負するのだという決断ができる経営者でないと務まらない。」
「情報を収集すること自体は重要ではない。情報収集主義からは脱却すべき。時代の節目では、過去の時代の節目に何が起きたのか、繁栄と衰退の分かれ目が何だったのかという大局的な時の流れを理解する目が重要である。」


■新興国におけるポジショニング
「こうした時代に必要なのは、既存事業へのこだわりを捨てるということ。中国などの新興国でも作れるもの、先方に賃金水準などから比較優位があるものにはこだわらないこと。」
「伸び盛りの新興国企業にも不得手なところが残っている。そこにポジションを見つけてすみ分ける必要がある。」
「新興国で出現しつつある中流階級向けの製品、ボリュームゾーンの製品については、日本の優位性はなくなっている。事業分野を絞り込み、その代わり、この分野では世界を制するというような戦略的意図が重要である。」
⇒新興国ボリュームゾーンは製品分野によってはすでにレッドオーシャン化している

■自社独自の経営資源・ドミナントロジックの重要性
「重要なのは『捨てる』という選択。現在一般には環境・エネルギー、医療・福祉が有望と言われているから、その分野に進出しよう、という意思決定の発想は誤り。これらの分野はどの国のどの企業も有望と考えている。」
⇒rent seeking behavior

「マクロの次元で事業選択するのではなく、自分たちのフィールドで、世界に伍してやっていける技術・市場は何なのかを考えること。」
⇒外部環境でなくコアコンピタンス、ドミナントロジックで。「世界」は「地球規模の市場」と捉えたい。

⇒仕事柄多くの経営幹部と包括的市場に関して議論する機会が増えたが、特にがっかりするのは一般的印象で「BOP市場はまだ早い」などと評論し、事業対象としての検討をはなから退けてしまう人がいることだ。包括的ビジネスへコミットするか否かはあくまで自社の経営理念や経営資源、ドミナントロジックとの兼ね合いで決まるものであり、個別企業の選択の問題である。包括的市場への関与が喫緊の課題ではない企業もあるだろうし、今こそ最大のエネルギーを割くべき企業もあるだろう。新興国市場と同時並行で進め、時間差アプローチを画策するべき企業もあるだろう。


2012年4月10日火曜日

研究分野としての「包括的ビジネス」

「包括的ビジネス」の研究とは一体何なのか。それを経営学分野の研究対象としてとらえる場合、1)複数の既存分野の組み合わせで分析可能なのか、2)それとも独自の従属変数を想定する独立した領域を成立させるのか。こうした問題意識に応えたのが下記の論文。

岡田正大(2012) 「『包括的ビジネス・BOPビジネス』研究の潮流とその経営戦略研究における独自性について」『経営戦略研究』, 第12号 (2012年7月 forthcoming)


概略を述べると、包括的ビジネスの研究には少なくとも次のような学問領域での考察が必要となる。


 上記の論文では、特に戦略分野に関係の深い1)企業戦略理論、2)企業の社会的責任と経済的パフォーマンスに関する研究、3)包括的ビジネスそのものの帰納的研究、4)新興国市場研究、以上4分野を取り上げている。これらの領域で網羅的に文献調査を行うことにより、包括的ビジネスが独自の学術分野(discipline)として成立するか否かを論じている。

結論として、包括的ビジネスは「領域学」としては成立可能であるものの、独自の因果関係を想定する「独立したdiscipline」としては成立しえず、企業活動の経済性と社会性を巡る新たな因果関係を模索する、上位の学術領域に属するサブカテゴリーであると考えられる。

 この「企業活動の経済性と社会性を巡る新たな因果関係を模索する、より上位の学術領域」は、既存の戦略理論の根幹にある因果関係に修正を迫る可能性があり、さらに研究を継続する必要がある。

発刊前のため、上記論文に関連する参考文献のみダウンロード可能。

戦略理論の体系と「共有価値」

Porter & Kramer (2006, 2011)の主張する「共有価値」の概念は、包括的ビジネスの理解にとって重要なキーコンセプトの一つであると指摘した。

この共有価値という概念は、既存の戦略理論の体系の中でどのように位置づけられるのだろうか。下記の論文は巨視的に戦略理論を体系化する中で、共有価値概念の意義を論じたもの。既存理論の体系化に続き、「共有価値」を第4世代の戦略理論ととらえ、既存理論との関係や、その主要な因果関係について述べている。

岡田正大(2012)「戦略理論の体系と『共有価値』概念がもたらす理論的影響について」『慶應経営論集』, 29(1): 121-139. (PDFでダウンロード可能)




2012年3月5日月曜日

アフリカビジネスに関する情報ソース

アフリカビジネス専門のコンサルティング会社(事業)が、それぞれ情報発信している。

1)㈱アフリカリサーチ(2010年2月設立)
「アフリカに関するビジネスニュースサイト AFRICA BUSINESS NEWS」はほぼ毎日配信のビジネスニュースが充実している。主席コンサルタントの大津志朗氏は長年のアフリカエキスパート。会社ホームページのギャラリーやインタビューに日付が入っていると、情報価値がもっと高まるのですが。

2)アフリカビジネスパートナーズ(2011年1月設立)
こちらは代表の佐藤重臣氏が個人で営む事業。すでに同氏のメルマガは紹介したが、現在は直接発行の月極め形式に体裁が変更されている。バックナンバーも入手可能


2012年2月13日月曜日

三菱レイヨンが5大陸へ拡販

MSN/産経ニュース

同社のクリンスイ販売地域は、これまで日本・中国等のアジア圏15カ国に限られていたが、今後アフリカを含む5大陸すべてにわたる50カ国にまで本格的に拡大するという。もちろん、例えばアフリカでの展開がBOP2.0のように、バリューチェーン全域で現地コミュニティを包括するかどうかはビジネスモデル次第である。またそもそも包括的市場での販売を意図しているかどうかも詳細は不明だ。だが少なくとも、記事の文面からは、同社が地球人口70億人市場を想起した上で戦略構築しようとしていることが感じ取られ、その意味で重要な事例の一つと思われる。

クリンスイ(↓)